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宇宙の裂け目の誓い

3隻の戦艦は、再びあの深い藍色の世界を進んでいた。


スタワードのジュラーダに残っていたデータにより、より正しくて安全な航路が導き出せたのである。スタワードの体調も順調に回復しているようで、メイルは時々安堵の表情を浮かべていた。


数時間たった。無音の世界に時々ソナーの音が響く世界がいまだに続く。そろそろ藍色の深みにも飽きた頃であった。

センカたち戦略班は最終チェックに余念がなかった。データが正しければ、もうすぐ鉄の星の領域である。いつ鉄の星の大艦隊と出くわすかもわからない。

メイルとスタワードの協力により、鉄の星ヒルタの通信機に合わせた電波を発し続け、自分たちが漂流民を載せていることと、地球人であること、そして危害を加えるつもりがないことをヒルタ語のメッセージで送り続けていた。それでも不安は尽きなかった。


「前方、宇宙の裂け目確認。これより鉄の星ヒルタに一番近い裂け目から通常宇宙に戻る。」

トウキのホログラム映像が連合艦隊に告げる。

「この先は鉄の星の宇宙セカイだ。」

ショウタは一瞬連合艦隊戦術長の顔になる。

「メイルの情報によれば、この先にはヒルタ軍や自衛システム、我々にとってはメカだが……が防衛任務に当たっているそうだ。警戒は怠るな。」

ショウタが続ける。

「ただし、彼らは敵ではない。全員の賢明な判断を信じている。」

センカはこぶしを握りしめた。




光に包まれたかと思うと、3隻の戦艦は星の宇宙セカイを進んでいた。

リンカがヒルタ語での通信を続けている。すぐにメカに似た戦闘機が周りを取り囲んだ。

チームゼロの8人は一瞬恐怖を思い出した。全身に震えが走る。恩師や仲間の顔が次々と蛍のように浮かんでは消えた。

乗組員のほとんどは直接メカを見ていない。それでも記録映像や訓練を思い出したのだろう。動揺が広がっていく。

「センカ、大丈夫。」

ホログラム映像のメイルに手を触られ、センカはハッとした。

「通信を変わって。」

メイルはそういって通信機をとった。






「こちらはヒルタ宇宙軍ゲート守備隊。何者か応答せよ。繰り返す。こちらヒルタ宇宙軍ゲート守備隊。繰り返す。何者だ?」

少し混乱した声に、メイルはまっすぐなヒルタ語で返した。


「こちらメイル・ノトメイア。ヒルタ科学高等専門学校の学生であり、ヒルタ宇宙軍士官学校在学中の士官候補生です。弟のスタワード・ノトメイアもいます。」

メイルはまっすぐな声でつづけた。

「宇宙を漂流していたところを、天の川銀河オリオン腕太陽系の方に助けてもらい、ヒルタに帰還しました。太陽系の方も含め、惑星ヒルタへの着陸許可を求めます。」

「メイル・ノトメイア士官候補生、了解した。つまり、同行しているのは……ヒルタ人ではないということだな?」

「はい、彼らは容姿や考え方はほぼ同じですし、平和的な友好関係を求めています。しかし彼らは赤い血を持っています。我々とはまた違う歴史を歩んできた人々です。」

「そうか……。」

しばらく混乱したような様子が通信機越しに聞こえてきた。

「ことは我々の手には大きすぎる。本星に連絡して指示を仰ぎたい。危害は加えないので、いったん艦を止めて、しばらく待機するように『彼ら』に伝えてほしい。」

「わかりました。」

通信はそこで終わった。






しばらくたつと、再び通信が入ってきた。今度はメイルが応答した後、センカに変わった。

「太陽系防衛軍連合艦隊、艦隊戦略長および、戦艦ベガ艦長のウエキセンカと申します。」

「こちら、ヒルタ宇宙軍ゲート守備隊隊長、クッブ・リトスタだ。はるばる来ていただき、感謝申し上げる。」

「こちらこそ、丁寧な対応ありがとうございます。」

「さっそくだが、本星からの連絡を伝える。その……異星の方がいきなり惑星ヒルタに降り立つと、大きな混乱になりかねないとのことであるし、3隻の宇宙戦艦をまとめて泊める場所も今整備中である。そこで小型機か何かで、そちらの代表数名とメイル・ノトメイア士官候補生およびスタワード・ノトメイアのみ先に惑星ヒルタに降り立ってほしいとのことだ。地球という惑星の話も聞きたいし、こちらもぜひ友好関係をということだそうだ。」

「ありがとうございます。」

センカは丁寧にお礼を述べた。

「しかし、1つだけ提案があります。スタワード・ノトメイアはまだ救助したばかりで、できればもう少し休ませてから惑星ヒルタに送り届けたいなと思っています。彼はこちらで預かったままでもよろしいでしょうか?」

センカがかすかに笑みを浮かべているのに、ショウタは気が付いて頭をかいた。思わず日本語で悪態をつく。

「あいつ、初対面の鉄の星ヒルタ相手に人質取る気かよ。」

「まぁ、私たちの身の安全を考えたら当然だと思うけれど。」

リンカがさらっと日本語で返す。その時また通信が入った。

「構わない。スタワード・ノトメイアはそちらにお願いしたい。」

「ありがとうございます。では人員を選び、準備ができ次第また連絡させていただきます。」

通信が切れ、安堵の表情を浮かべるセンカを、ホログラム映像のメイルが殴るしぐさをした。

「この策士!」

「なによ士官候補生さん!」

やっと笑い声が響いた。その中でセンカは艦長帽をかぶりなおした。

「いよいよ、私たちの出番よ!」



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