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姉と弟

惑星に近づいた。


念のため、惑星の調査をすることになり、センカとリンカ、それとメイルが調査隊である。


情報解析のプロであるリンカは無論のことであったが、惑星にヒルタ人、あるいは他の知的生命体がすでにいる場合の交渉人ネゴシエーターとしてのセンカも同行することになった。メイルが同行したのは、将来的な領土問題を視野に入れてのことであった。地球人とヒルタ人が同時に上陸・調査したとなれば、自分勝手な言い分で自分たちの領土にすることができなくなるからである。


センカとリンカは自分のゼロに、メイルは自分の戦闘機ジュラーダを地球で修理したものに乗り込んだ。ちなみに彼女のジュラーダの修理に使ったのは、調査のため鹵獲したり破片を回収したりしたメカの部品であった。


3機の戦闘機は、惑星の表面を行ったり来たりしていた。

「まるで、移民星アスのようね……。」

砂埃の舞う星を見て、思わずセンカが呟いた。旗艦アルタイルから、映像越しにかたずをのんで見守っていたショウタも、思わずその言葉に頷いた。あの日の砂埃が目に入ったようだった。

「あの日は……。」

ショウタが思わずつぶやきかけた時、リンカが小さな悲鳴を上げた。

「こちらシイナ機。メカ、あるいはジュラーダと思わしき戦闘機を発見。墜落している模様。」




通信を受けてセンカとメイルがたどり着いたのはほぼ同時だった。

「メイル、船体番号らしきものが見えるのだけれど……。」

「横に立っているのは……旗かしら?」

「あれは……。」

そうつぶやいた途端、メイルは珍しく荒く戦闘機を飛ばし、これまた荒っぽくジュラーダを着陸させようとした。

「メイル!?」

「危ないわよ!」

「スタワード!」

メイルの悲鳴のような叫び声が聞こえてきた。リンカとセンカの2人も後を追った。






2機のゼロが止まった時、ちょうど墜落した機体から1人の少年が身を乗り出していた。そしてその少年にメイルはすがりついた。通信機越しに、彼女の泣き声だけが響いてきた。

センカは砂埃の舞う世界を見渡す。ふと移民星アスの風景を思い出し、思わず呼吸が荒くなった。

メイルの泣き声はどこか嬉しそうだった。それだけが何よりもうれしかった。センカは砂埃の中、微かに笑った。




スタワード・ノトメイア。鉄の星ヒルタの少年であり、メイル・ノトメイアの弟でもある。彼を保護した日、のちに惑星ノトメイアと呼ばれるこの惑星には、砂嵐が舞っていて、世界は不思議と輝いていた。















旗艦アルタイルに彼を収容した。ハルカによる検査が行われた後、センカは姉弟をしばらく2人きりにした。


とんでもなく地球からも鉄の星ヒルタからも離れた場所であると、なんとか恒星から割り出した連合艦隊は、宇宙の裂け目内についてさらに解析を進めていた。この調子でいけば、明日にはまた宇宙の裂け目に入れるはずである。


そんな報告を仲間たちから聞いた後、センカは再び、2人のヒルタ人が待機している第2作戦室に向かった。

ちょうど2人は、軽い昼食を済ませたところであった。センカはにっこり笑って、同じテーブルに腰かけた。

「気分はどう?」

ヒルタ語で話しかけると、スタワードの顔がほころんだ。

「とても。この食べ物もなかなかおいしいね。」

「そう言ってもらえてうれしいわ。」

センカはにっこり笑って、それからメイルを見た。

「あんたの弟くん、かわいいじゃん。うちのと変えてよ。」

「どうぞご自由に。こんな生意気な弟、助けなきゃよかった。」

その声に安堵の色が見え隠れしているのを、センカはほほえましく聞いていた。

「弟さんがいるんですか?」

スタワードが不思議そうな顔をする。

「ええ。ちょうどあなたと同じくらいの。きっと仲良くなれると思うよ。今は地球にいるから、もっと後での話になるけれど……。地球の話は聞いた?」

ノトメイア姉弟はこくりと頷いた。

「姉さんから聞いたけど……本当に?」

センカは黙って自分の指先の皮を噛み切った。薄らと赤い血が滲んだ。

スタワードは黙ってそれを見つめていた。

「じゃあ、あの話も本当なんだね。僕らの自衛システムが……。」

センカはこくんと頷いた。

「ええ。私はメカをいくつも撃ち落したし、メカに大勢の仲間を殺されたわ……。」

センカはそういって、自分がまとっている戦闘服を指さした。

「他の人と、少しデザインが違うの、わかったかしら。」

「うん。色やラインが少し違うね。」

「これは……戦艦オリオン、メカと戦った時に私たちが乗っていた宇宙戦艦のものなの。あの艦に乗っていた乗組員の生き残りは、ほとんど私たちだけなの。あの人たちと私たちの母艦を忘れないように、今でもこれを着ているんだ。」

メイルがうつむいた。センカは続ける。

「ごめんなさいね。でも、今の太陽系はまだ辺境防衛戦争の爪痕が残っているの。それだけは、知っておいてほしい。」

しばらく沈黙が続いた。

「さぁ、難しい話はここまで。あなたたたちの故郷ヒルタに向かう準備は着々と進んでいる。メイル、スタワード。スタワードの戦闘機ジュラーダのデータを解析して、新たな航路を探っているのだけれど、ちょっと手伝ってもらえないかしら。ヒルタ語はまだ難しいのよね。」

「ヒルタ語、上手だよ。」

スタワードはにっこり笑って立ち上がった。

「スタワード、なんか大きくなったね。」

メイルはそっと呟いて、立ち上がった。


姉であるメイルと共に両親とメカを追っていた弟くん、スタワードの登場です。スタワードは不時着した後、大量に積み込んでいた食料や備品で生き延びていました。そのあたりの話もいつか書きたいですね。

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