動き出す狂った歯車
「くそっ!」
センカはそういって書類を投げつけた。
今回の作戦で捕えた12人の暗殺者は、何も情報を持っていなかった。彼らは反国連宇宙機構ではあったものの、結局は金と名声に目がくらんだだけであり、その背景にあるものについてはほとんど知らなかった。
つまり、敵を捕らえて情報を吐かせようという目論見は達成できなかったのである。
「しかたないわよ。」
これまたうつむいたセンカに、リンカが冷たく言い放つ。
「世の中そんなに甘くないってことね。」
「はいはい。」
センカは腕をバタバタさせると、そのまま伸びをした。
「ところで、リンカ。例のコンピューターシステムは?」
「あとは明日スイッチを入れるだけよ。」
「お疲れ様。」
リンカが少し微笑む。リンカの両親であるシイナ夫妻が中心となって作り上げた新たなコンピューターシステム、YURIKAがついに完成したのだ。
さらにYURIKAの戦艦搭載用のシステムが、3隻の戦艦には搭載されていた。これで情報解析の技術は飛躍的に上がる。
「さぁ、作業に戻ろう。」
スズナがみんなに声をかける。
鉄の星についての情報が公開されるや否や、地球圏はパニックに陥った。しかし、人類宇宙委員会の根回しもあり、国連でも正式に承認された。センカたちは無事M作戦に臨むことができた。
今は戦。艦アルタイル、戦艦ベガ、戦艦デネブの3隻の戦艦、サメロトリアテロ型宇宙戦艦の出航準備で、テラポルトスは騒がしかった。この3隻は、戦艦オリオンに変わる新たな宇宙戦艦として建造されていたものだった。
旗艦戦艦アルタイルの艦長かつ、この連合艦隊の最高司令官は、ハシモトショウタ戦術部長が兼任することが決まっていた。戦艦ベガ艦長兼連合艦隊戦略長は、ウエキセンカ戦略部長が兼任、また補給を主に受け持つ戦艦デネブの艦長には、スギヤマスズナ主計部長が抜擢されている。そのほかの重要な役職に、チームゼロの面々は兼任させられている。
しかし、アサヒユウキとクラモトカズマはサメロトリアテロ型宇宙戦艦には乗らなかった。彼らはあくまで「辺境移民再建協会」の民間人であるとして、太陽系で活動を続けると言った。
彼らはメイルとの仲も良好であったし、異星への興味もあった。しかし自らの経歴を考え、あくまで一定の距離を保つようにしていた。彼らはそれを残念に思っていると言っていたが、おそらく本心でもあるだろうとセンカは切ない思いで見ていた。
出航の日が近づくにつれて、人々の不安は希望に変わっていった。ユウキはそれが、辺境戦争や戦艦オリオンのそれと似ていることに気付いていた。
ユウキは、今日も一人でカフェにいた。
「こんにちは。」
「あなたはいつも同じスーツですね。」
例のスーツの男が、今日も近づいてくる。
「あなたこそ、いつも同じものを飲んで待っていらっしゃいますね。」
ユウキは少し深呼吸すると、ゆっくりと切り出した。
「そろそろ、お話を伺ってもよいでしょうか?」




