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高校生活

「センカおかえりなさい。あら、あなたが噂のメイルちゃんね。」

センカの母が、笑顔でメイルと握手する。センカはそれを見て、深呼吸をした。


メイルの傷もほぼ癒えた。秘密を守るために、メイルを閉じ込めておくことは簡単だったが、少しでもメイルに地球のことを知ってほしかった。そこでセンカの家へのホームステイを提案したのだ。

表向きは、少数民族出身の辺境移民の女の子。戦争で避難しており、身寄りがいないのを少し面倒を見る、ということになっていた。地球のことをあまり知らないのは、「少数民族で山奥に住んでいたから」とかなんとか言ってごまかすつもりだった。

しかし、家族には伝えねばならない。


センカはもう一度だけ、盗聴器が仕掛けられていないか確認すると、リビングに座った。


「ちょっと……いい?」

「うん……。」

メイルも少し緊張気味だった。恐る恐る、センカが差し出した針で指をつく。

真っ青な血が浮き上がってきた。センカも同じように指を針でついた。赤い血が浮かび上がってくる。

「センカ……?メイルちゃん……?」

「お母さん……。」

センカはもう一度息を吸い込む。

「メイルは、地球の人じゃないんだ……。」



メイルは自分の口から、生い立ちや鉄の星、メカのことを話した。両親と弟は黙って聞いていた。

「つまり……メイルちゃんの正体は、チームゼロのみんなしか知らないのね。」

「ええ。宇宙機構でも察している人はいるけれど……。」

「それだけ危険なのね。」

「うちの警備は強化してもらったし、私もこれからは家にいるようにするから。」

センカは立場上、家に帰れないこともあった。テラポルトスに泊り込んだり、そのまま学校に行ったりしていた。特例で映像授業でなんとかしたこともある。

自宅はかなり危険だった。マスコミなどにとっくにばれていたからだ。ユウキたちを中心に、辺境移民やその関係者、また防衛軍関係者は、センカたちに責任はないとしているが、いつどこで恨みを買っているかわからない。家の周りには防犯カメラがつき、窓ガラスや壁は防弾使用だ。いざというときの警備システムも整えてはあった。(ちなみに全部センカがもらってきた給料だ。)

「法律とかまぁいろいろ整えてはいるから、何かあっても父さん母さんには責任を負わせないし……。」

「わかった。」

父がやっと口を開いた。

「メイルちゃん、地球へようこそ。」











「いってらっしゃい。メイルちゃん、やっぱりその制服似合うわね。」

「ありがとうございます!」

メイルが照れ笑いをする。

「センカ、遅刻するよ!」

「待ってー!」

2人は家を飛び出した。

センカの高校は電車を乗り継いで1時間以上かかる場所にあったが、海沿いで雰囲気もいい高校だった。

「海、楽しみだなぁ。」

「テラポルトスから毎日見てたでしょ?それにいろいろ忙しいんだから、海ばっかり見てるわけにもいかないし。」

「はーい。でもすごく楽しみ。」

電車の中でメイルがひそひそ呟く。センカも少し笑いながら、ちらりと斜め前に座っているサラリーマンを睨む。さりげなく自分の太もものあたりをさする。小型宇宙レーザー銃の冷たさが伝わってくる。サラリーマンはセンカの行動の真意をつかんだらしく、ため息をついた。







メイルは割と早く学校になじんだ。

出自を隠し、訳ありの辺境からの避難民で、地球の少数民族出身ということにしてあった。翻訳機もあったし、メイル自身は鉄の星で高度な教育を受けているので問題はない。

「メイルちゃん!学校慣れた?」

「うん、慣れたよ!」

「そっかぁ。すごいなぁ。」

「ねえねえ今度遊びに行こうよ!ね、いいでしょセンカ。」

「あー、うん。暇ならね。」

センカは友人たちの言葉に気のない返事を返した。今日は学校が終わり次第、テラポルトスに飛ぶ。ゼロで2時間ほど飛ばせば着くだろう。今日はリンカに呼び出しを食らってる。話の概要は想像できたが、今はあまり考えたくなかった。メイルもハルカの「定期健診」とやらに突き合せなければならない。

「じゃあ一生無理だ。」

「センカさ、たまには休みとかさ、思い切ってとりなよ。」

「とりたいよ!でもそのあいだ、誰があの書類の山を片付けてくれるの?って考えちゃうともうダメ。」

笑い声が教室に響く。

「そういえば、こんど高校の遠足で横浜行くじゃんね。」

「そういえばそうだ!」

「ヨコハマ?」

「そう!おしゃれな都会だよ!買い物とかもできるんだ!」

「センカとメイルも同じ班でいいでしょ?今日の6時間目は遠足のルート決めだし。」

「それ最高。」

センカは笑う。

「メイルよかったじゃん。観光観光。」

「へぇー。よくわからないけれど、楽しみにしてるよ。」

「あっ、メイルちゃん、あそこにガイドブックあるんだ。とってくるよ……。」

「横浜は、中華街っていうのが有名で……。」

友人たちの笑い声と、メイルの笑顔にほっとする。このまま友好関係が続いてくれればいい、と本気で思える笑顔だった。

「にしても……。」

センカはちょっとつぶやく。

「横浜に遠足か……。」













ユウキは一人で学校から帰ろうとしていた。カズマは課題を出し忘れて居残っている。もう夏も終わりかけていた。生ぬるい風が吹く。

ユウキは何気なく携帯電話を見る。トウキからの謝罪メッセージが来ていた。そんな暇があれば早く課題を終わらせろと思わず毒ついてしまった。

「最近、みんなと予定が合わないな……。」

メイル・ノトメイアという訳ありの女の子がいることはとっくに知っていたが、まだ直接会ったことがなかった。それだけでない。チームゼロのみんなも急に忙しくなって、なかなか会えない日々が続いた。

「部長さんは違うな……。」

ユウキも彼らなら部長になっても構わないと信じていた。しかし、戦術部長や戦略部長などといった地位はいらないと言い切っていた8人が、急に部長職を引き受けたことには少し疑問も覚えていた。そもそも満足のいく説明もされていない。

「何があったんだろう……。」

「アサヒユウキさん?」

突然声をかけられた。後ろを振り向くと、見慣れないスーツ姿の男が立っていた。

「どなたですか?」

静かに聞く。不思議な胸騒ぎがした。

「あなたと同じく、地球を守ろうと願う者ですよ。」

にやりと不気味に笑う男と、しばらくにらみ合うように見つめあっていた。恐怖と興味が同時に湧いてくる。

「僕は地球出身ですが、地球の住民ではありません。移民星アスのちっぽけな高校生ですよ。」

「そうですね。私たちは住むところは違いますが、敵は同じはず……というより同じだったはずですよね、守るために。」

男の妙に丁寧な口調が気になった。

「メカ……ですか。」

「ご明察。少しお話をしたいのですか……。」

ユウキは少し戸惑った。しかし気が付くと、目の前のファミレスを指さしていた。



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