ファーストコンタクト
「ああ、センカとコウスケか。」
コックピットから飛び降りる2人を見て、ダイマスが手を振った。
「いいところに来てくれた。こいつだ。」
ハルモニアシティから離れた、火星の裏側と言ってもいい場所に、確かにメカによく似た機体が転がっている。
「メカの撃ち残しか……?」
コウスケが顔をしかめた。
「砂地が深いから、衝撃が抑えられてる。まだ生きてる可能性が高いな。」
「いや、生きてる……。」
センカが身震いした。
「え」
「どうしたんだ?」
センカは手元の機械を見せた。
「これ……生命反応がある!」
そう叫ぶと、センカはメカに似た機体に向かって飛び出していった。
「おい!危ない!」
コウスケも叫んだ。思わず銃を構える。
「おい、生命反応って、メカはメカだろ?機械だろう?」
ダイマスの焦った声が響き渡った。
センカは出入り口らしい部分をたたいていたが、やがて腰に着けていたナイフを取り出して、ガンガンたたき始めた。すると突然、シューっと音が鳴った。
「爆発するぞ!」
「コウスケ!黙って!」
センカはその場で立ち尽くした。
「おい、どうしたんだ?」
立ち尽くすセンカに、コウスケは声をかけた。
「来て!」
センカはそう叫ぶと、なんと機体のなかに入ってしまった。
「おい!」
コウスケは駆け寄る。ショウタがセンカから目が離せないと言っていたのはこのことかと納得してしまった。
「なんだ……よ。」
センカは1人の女の子を抱きかかえていた。どこからどうみても女の子だった。見たことのないデザインの服を着ている。けがをしているようだ。その子は青い血を流して気を失っていた。
「血が青い……だと?」
「コウスケ、医療キット。ダイマスさん、このことは内密にお願いしたいのですが。」
「わかった。」
「あー俺だ。例のやつだが、辺境から飛んできたメカの残骸らしい。割と形がはっきり残ってるから、コウスケが調べてる。ああ、騒ぎになるといけないから、内密にな。よろしくぅ!」
ダイマスが関係各所に連絡を入れているようだ。
「構造はメカとほぼ変わらない機体だ。メカそのもの。中に人が乗っているけれど……。」
コウスケが頭を抱える。
「メカに生き物が乗っているなんて初めてだ。まさか……。いや、メカと戦うとき、そもそもメカだと判断する基準は生体反応のなさだ。」
「コウスケ、もういいよ。」
「ああ。」
センカが包帯を巻き終わったらしい。青い血の子は女の子らしかったので、センカが治療することにしたのである。
「血が青いってまさかと思うが……このべっぴんさん、宇宙人……?」
ダイマスが通信機を切ってから近づいてきた。
「可能性は高いわね。」
センカはため息をついた。
「メカには言語のようなものがあった。いま解析しているけれど。それを使う人たちがいてもおかしくはないわ。」
「じゃあまさか……。」
コウスケが息をのむ。
「メカを開発した種族の女の子が宙から落ちてきたってとこね。」
とりあえずしばらく様子を見ることにした。
そのあいだ、コウスケはメカの残骸を研究したいとか何とか言って、地球にメカに似た機体を持っていく許可を取ることに成功した。
「あとはこの子をどうするか……。」
「公にはできないわ。何が起きるか……。」
センカは何となくユウキとカズマの顔を思い浮かべた。
「それは同感だ。」
「しかし火星より地球のほうが設備がいいだろう?検査とかもしないといけないだろうし……。」
ダイマスも頭を抱えた。
「いずれは……。」
センカはどこか遠くを見つめてしばらく考えていたが、やがて通信機に手を伸ばした。
「こちらウエキ、ハルカ?」
「うん。突然秘匿回線なんかにかけてきて、どうしたの?」
「2つお願いがあるの。」
「何?」
「いま1人?」
「うん。誰もいない。」
「了解……。いまから超極秘の、もう本当にウルトラ最高超極秘の患者を連れていくから、テラポルトスの病院の奥深くの病室を確保してほしいの。あと本当に信頼できる医者と看護師数名えりすぐって。」
「うん、やっておく。もう1つは?」
「チームゼロを全員その病室に集めて。」
「うん、わかった。」
「事情はそこで説明する。極秘でお願い。」
「わかった。医務部の権限乱用するね。」
「テラポルトスに連れていくか。」
「それしか方法ないじゃん。」
センカはそういいながら、女の子を背負った。明るい場所で見ると、彼女が少し青白い顔と青みがかった髪をしているのがよくわかった。その子をコックピットの隙間に押し込む。
コウスケは牽引ワイヤーで、メカをつないでいる。ぶつぶつ言いながらも楽しそうだった。
「では、ダイマス団長。」
「火星のことは任せとけー!」
ダイマス団長はにやりと笑った。
「こちらテラポルトス管制センター。そのまま着陸してください。」
「了解。ありがとう。」
センカは伸びをする。あとは大気圏に突入するだけだ。もう一度計器類を確認した時だった。とつぜん、人の声がした。
「んんんー。」
「え、あ、うそ!」
センカが叫ぶ。コウスケが通信で「どうした?」と聞いてきた。
「ん……。」
青い血の女の子が目を覚ました。見慣れない機体や計器類に戸惑い、こっちに振り返った。
「あ、おはよう。」
センカは思わずそう言って、それからそんな自分がおかしくなって、思わず笑ってしまった。




