戦いの跡
一晩中生存者を探して飛び回っていた4機のゼロは、翌日の見事な朝焼けの中、テラポルトスに降り立った。
滑走路にはマスコミが詰めかけていた。警備員や作業員が必至で押さえつける。だが、ゼロの機体が破壊され、飛んでいるのが奇跡であるほどだと理解したマスコミたちは、騒ぐのをやめた。
「どいてくれ!」
イバーノフが人混みをかき分けてゼロに近づいた。
「まさか、まさかあれを……!」
コックピットが開いて、コウスケが何かを引きずりおろそうとした。作業員が駆けつける。
「スーマー・ヤオ アジア部隊長だ……。すぐに手当てを……してくれ……。」
作業員たちがヤオを抱きかかえた。
「急げ!」
「担架を持ってきたぞ!」
作業員がわめく。
「みんなを……早く……。」
コウスケが上の空でつぶやく。他のゼロのコックピットを開けようと近づく。
レポーターの1人がたまらなくなって飛び出したのと、コウスケが倒れたのはほぼ同時だった。
「なぜ……なぜ……?」
レポーターは泣いた。息子とほとんど変わらない歳だ。レポーターは泣きながらコウスケを抱き起そうとした。
「こちら、戦場跡のアサヒです。」
「こちら冥王星、生存者は?」
「やはりいないようです。」
「そうか……。ゼロの4人は?」
「見当たりません。」
「しかしゼロの4人は確かに離脱したはずです。」
カズマが通信に加わる。冥王星を守った2人は、ゲートウェイが壊されて、戦場に近づけない防衛軍の代わりに、あたりを調べていた。大きな目的は、消息を絶ったチームゼロの4人の捜索だった。
「通信も入っていたし、ゲートウェイも壊されている。巻き込まれたはずはない。」
カズマは自分に言い聞かせるようにつぶやいた。
「ゼロの破片は見つけていませんし……。捜索範囲を広げてみます。」
「そうだな……。いや、いったん戻ってこい。」
冥王星側のオペレーターが呼び戻してきた。
「君たちも長時間宇宙にいるわけにはいかないだろう。」
2人もかなりのけがをしていた。ゼロも体も応急処置のままだ。
「いったん、帰投します……。」
ユウキは通信を切ると、通信機を投げつけて叫んだ。カズマはそんな親友に声をかけられなかった。
「ここは……?」
タケルは目を覚まして、白い空間に戸惑った。
「タケル……?」
聞き覚えのある声がする。
「スズナ……?」
顔を横に向けると、隣のベッドにスズナが寝かされていた。
「向こうにコウスケとリンカもいるみたい。」
「ここはどこ……?」
「病院だよ……テラポルトスの。」
「地球か……。」
タケルは目をぱちくりさせた。
「おい、あれから……あれから何日たった!?」
「5日だ。」
反対側のベッドから声がした。
「コウスケ……。」
「俺は昨日目が覚めた。リンカとスズナはおとといだ。」
「他のみんなは……?」
「行方不明らしい。」
「行方不明……?行方不明って……?」
「K作戦の4人は、ワープウェイ破壊後、冥王星に戻るはずだったはずなの。でも戻ってこない。問題の宙域をユウキたちが探しているけれど……。」
「ワープウェイを破壊しちまったから、救助部隊がなかなか送り込めないんだ……。」
「A作戦のメンバーは?俺たち以外の?」
「死んだ。」
コウスケがそっけなく言い放った。
「うそだろ……全員か?」
「いや、スーマー・ヤオは助かった。重症だけど生きてはいる……。」
リンカがそっと言った。
「あとは死体ばかり。機体の破片しか見つかっていない子もいるし、何も見つかっていない子もいるわ。」
「あの日、流れ星がすごくきれいだったんだって。離脱しそびれて、大気圏に落ちてしまったり、デブリにぶつかったり、乱射したレーザーに当たったりして……。」
スズナが目を背けた。重苦しい雰囲気が広がった。
「Z作戦は……?」
タケルが呟く。
「作戦通りだ。A作戦とK作戦、および戦艦オリオンのすべてのデータを公開した。リンカとスズナのおかげだ。ただしZ作戦関連のものはまだ公開はしていない。」
「そろっていないからか……。」
「そうだ。」
「かなりの人が気づいてはいる。私たちが作戦直前に中尉に昇格し、チームジパングの役職を代理という形で受け継いでいる。ポイオーティアが防衛軍……いえ太陽系の未来を私たちに託しているという陰謀めいた話で、マスコミは盛り上がっているわ。」
病院にも関わらず、タブレットを持ちながらリンカは寂しげに笑った。
「あったっているようなあたっていないような。」
「うっ……。」
ショウタは目を覚ました。
「ここは……?」
「今……調べてる……。」
「トウキ?」
「ああ、トウキだ……。」
通信機越しにうめき声が聞こえた。
「センカが今、ハルカを引っ張ってきてる。」
「どういう……ことだ?」
「吹っ飛ばされたんだ。爆発の衝撃波に……。」
ショウタは記憶を呼び戻す。確か、冥王星へ帰投しようとした矢先に、大爆発が起き、爆風でふっとばされて……。
「宇宙空間だから、とんでもないところまで飛ばされた……みたい。」
苦しそうにトウキが調べた。
「データ、送るね。」
「ああ。ここは……?」
「人類未踏の地だよ。太陽系外縁部の辺境の辺境……ってかんじかな?」
「冥王星は……?遠すぎるか……。」
「うん。遠すぎて、あと壊れてて……通信機が使えない。」
「どこかのワープウェイは?」
「壊したばかりだろ?」
ショウタは頭を抱えた。まだ頭がぼやぼやする。
「燃料が残りわずか……。」
「そうなんだよね……。食料残りわずかだし、酸素も無駄にはできないよ……。」
「あれから何日たった……?」
「酸素の残量を見ると……うーん……。3日くらいかなぁ。」
「そのあいだ宇宙を漂っていたのか……。」
「とっさにワイヤーをひっかけあってよかった。おかげでバラバラにならずに済んだから……。」
「はーい、お待たせ!」
「センカが戻ってきた!」
ハルカの機体が後に続いているのが見えた。
「よかった、ハルカも無事だったんだ!」
トウキは嬉しそうだ。ショウタも少しほっとした。
「つまり、燃料も食べ物も酸素も残り僅かなのに、遭難しちゃったってことね。」
「ざっくりいうと、そう」
トウキが言う。
「計算してみたんだけど、一つだけ方法がある。」
「なんだ……?」
ショウタが聞く。
「燃料ギリギリだし、未知の航路だけど……アルテミスケノンが一番近いんだ。」




