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太陽の子供たち ~宇宙に進出した地球人の物語~  作者: さうざん
【高校生編】太陽系辺境防衛戦争
44/235

きけ、わだつみのこえ

「うわああああああああああ!」

「おりゃあああああ!」

ユウキとカズマはレーザーを撃ちこむ。何度目かの爆発が起きた。


「はぁっ、はぁっ。」

「全部……やったのか……?」

2人はあたりを見渡す。見渡す限りのスペースデブリがあたりを埋め尽くしていた。

「レーダーに感なし。敵影なし。」

「はぁっ、ははっ、やったのか……。」

「らしいな……。」

2人は倒れこんだ。安全装置を外したゼロは、宇宙へまっさかさまに落ちていった。








「あそこだっ!」

トウキが叫んだ。


4人の目的は、ワープウェイの破壊だった。

メカ総母艦の攻撃に取り残しがあった場合、小型戦闘機1機でも彼らは地球を狙う。メカはワープウェイに気付いており、ハッキングの際に、ワープウェイを利用した攻撃作戦も含まれていたのだった。

そのため、今回の作戦で、戦場近くのワープウェイの出入り口を壊す必要があった。


「あまり気は乗らないが……。」

ショウタはつぶやく。

「攻撃開始!」

ワープウェイはあっという間に壊されていく。次々とミサイルを撃ち込む。

「これで、当分使えないだろう。」

「わたしたちもね……。」

センカは少し笑って見せた。

「俺たちは、冥王星に行くことになっているが……。」

「いや。」

ショウタは静かに命令を下した。

「K作戦を見届ける。」

3機は黙って、リーダーに従った。










「火薬をありったけ用意しろ!」

「エネルギー充填!ぎりぎりまでやれっ!」

ダブは叫んだ。

「最後だぜ!思いっきりやるぞ!

「思いっきりやるぜ?」

ブンタがにやりと笑った。

「目標、総母艦!どーんとやるぜ!」

「主砲攻撃はじめ、正面だけを狙って!」

キッドが叫ぶ。

「正面突破よ!」

「第一艦橋。フェシカだ。防空は私たちに任せてくれ。」

「ありがとうテレーゼ!」

トメグはそういって別の通信機を手に取った。

「エリーゼ、記録は?」

「こちら第一作戦室フェシカです。作戦データおよび実戦の記録をまとめました……少しだけ未来の出来事も書いてありますが。」

「ええ、ありがとう。」

「全データ、テラポルトスへの送信始めます。」

「ありがとう。スノーヴァ情報長、通信環境は?」

「なんとかさせる!大丈夫だ。いける!」

「ありがとう!」

トメグは叫ぶ。

「通信機を取ってくれ、一番いいやつだ。」

トニイはダブに言った。

「はいよ。」

ダブが投げてよこす。









「ユウキ!ユウキ!」

カズマの声で目が覚めた。

「俺たち、スペースデブリのなかで気を失っちまったみたいだ。」

「機体は?」

「まぁもともとぼろぼろだしな。」

「カズマ、これからどうするか?」

「K作戦のほうはどうなっているのか……。先ほどから通信環境が良くない。冥王星の通信機を使ったほうがいいかもしれない。」

「ああ、そうだな。」

2機が向きを変え始めた時だった。通信が入ってきた。





「全宇宙に。国連宇宙防衛軍 戦艦オリオン艦長のタカハシハヤトです。残念ながら、これが我々からの最後の通信です。」

全宇宙に広がっていく通信。ユウキは息をのんだ。

「僕たち防衛軍にもはや悔いはありません。我々は十分生き抜かせてもらったと思っています。後のことは、若者たちに託しました。全宇宙の皆さん、太陽系の未来を託します。今までありがとうございました。お先に失礼させていただきます。」


「やめてくれっ……!」

ユウキは叫んだ。








遠くかなたで、何か大きなものが爆発したような、気がした。宇宙が一瞬明るく光った。


「ああ。」

コウスケは嗚咽を漏らした。

「我らが母艦の、船出を……お祝いいたします。」

かすかに泣き声が聞こえてきた。リンカかスズナだろうか。

「コウスケ、来るぞ!」

タケルの声が聞こえてきた。

「総員、レーザー発射用意!」

コウスケは目の前にせまりつつある塊を睨む。

「第1射、撃てっ!」


レーザーが飛び交う。それは不気味なくらい、きれいな格子を描いていた。だが一番太いレーザーは中枢を狙ってた。

「微調整開始!」

コウスケが叫ぶ。あちこちの機体が動く。

「火星、月の皆さん!」

「はなてっ!」

火星と月からのみ、こんどはレーザーが降りかかる。

「金属にひびが入った!」

スズナの声が響く。

「もう1度いきます!」

コウスケはあたりを見渡す。

「第2射、撃てっ!」


再びレーザーが飛び交う。まだ金属の塊は揺らがない。

「第3射、準備。」

コウスケは自分も微調整しながら叫んだ。

「ゼロ、安全装置を解除しろ。月、火星の皆さんもお願いします。特別青年地球防衛隊、撃ったらすぐ離脱しろ。訓練通りだ。部隊長、よろしく頼む。」

コウスケは「コハル」と静かにつぶやいた。機体が一瞬揺れた。

「第3射用意!」

「カウントお願いします!」

タケルが叫んだ。

「5、4、3、2、1 !」

リンカの声が響き渡る。

「撃てっ!」

コウスケは叫んだ。





一斉にレーザーが飛び交う。ついに金属の塊はバラバラになった。スペースデブリと化したメカの巨大ミサイルは、ばらばらと降りかかってきた。

「よけろっ!早く離脱しろ!」

ロバート・ダヌイは叫びながら、大きな塊を撃ち落し、粉々にする。地球に降り注ぐ塊は少しでも細かくしなければならない。部隊長たちが任されたのはその要となる配置であり、だからこそより危険だった。

「うわあああああああ!」

「操縦できない!」

「きゃああああああ!」

悲鳴が次々と聞こえてきた。訓練を終えたばかりの若者ばかりだ。デブリにパニックを起こし、追突したりレーザーを撃ちまくっている。

「はやく離脱しろ!見境なくレーザーを撃つな!」

ロバートは叫び続けていた。




「ほらっ!よっ!お前たちも……。」

マーク・ワシントンはひょいひょいとデブリを撃って飛び回っていた。だが返事がない。

「おいお前たち……。」

マークは唇をかみしめた。離脱に失敗したのだろう。

「おい、出て来いよ!それとも俺にかなわな過ぎて出てこれないのか?」

通信機に向かってわざと軽口をたたく。

「おっ、でかいのが来た。」

マークは大きなスペースデブリに狙いを定めた。が、そこで言葉を失った。

「おい……。」

そこには、デブリから逃げそこなった仲間たちの機体がへばりついていた。

「うわああああああああ!」

叫び声がこだました。





「救助に迎え!お前たちは火星を守れ!」

ダイマスは叫びながら、自身もM1号機に乗り込んだ。

「1人でも多く助けろ!」





「はぁっ、はぁっ。」

ジョン・ブラウエルはあたりを見渡した。

「誰か、生きている奴は……?」

レーザーを撃ちこんだ反動でどこかに飛ばされたもの、デブリと共に消えたもの、レーザーに撃たれたもの。見つかる機体はどれもバラバラだった。ジョンは自虐的に笑う。誰も守れなかった。

「おい、お前、コーニー?」

ようやく生存者を見つけた。同じオセアニア部隊のオーストラリア班の班長だ。

「よかった!」

「ブラウエル……。」

ジョンは息をのんだ。何かの破片が太ももに突き刺さっている。

「コーニー!今助ける!」

「ブラウエル……。Up jumped the swagman and sprang into the billabong. "You'll never take me alive!" said he

And his ghost may be heard as you pass by that billabong: "Who'll come a-waltzing Matilda, with me?"」

「コーニー……。」

通信機ごしに必死に歌うコーニーを見て、ジョンの中で何かが崩れた。

「いやだ、一緒に帰るぞ!お前んとこの歌みたいに、羊食べてやろうぜ!なぁ?」

だが、コーニーはすでに息絶えていた。

「誰か、誰か生きていないのか?」

ジョンは飛び回る。だが、耳に妙にコーニーの歌声が響いた。

「Who`ll come a waltzing Matilda with me?」

その歌声が、あちこちから聞こえてくるようだった。

「うわああああああああああああああ!」

ジョンは叫ぶと、荒っぽく機体を動かした。




いくつものデブリを粉々にした。任務は果たした。レープレヒト・バルツァーは息を吸い込んだ。

「こちらもだいぶやられている。生存者は……?」

レープレヒトはあたりを見回した。

「あれは!」

まだ大きなデブリが残っていた。

「あっちはアフリカ部隊の担当か……?」

一瞬ダヌイの顔がよぎる。

「あの大きさじゃ地球に被害が出かねない。」

レープレヒトは必死に追いかける。レーザーを撃ちこむ。なんとかデブリを粉々にした。

「ふぅ。」

だがレープレヒトはデブリが赤く染まっていることに気が付いた。見渡すと、自分の機体も赤く染まっていた。

「高度を下げすぎた……!」

このままでは地球の重力に引っ張られてしまう。大気圏に再突入することは可能だが、この体勢では危険だ。機体も傷ついている。だが体勢を立て直す前に、アラーム音が聞こえた。

「酸素が……!」

慌てて酸素マスクをつける。が、もはや体勢は直せない。マスクも勢いで取れていった。薄れていく意識の中で、故郷の山々らしきものが一瞬だけ見えた。







「うっ!」

レーザーを撃ちこんで、デブリを粉々にした。だが次の瞬間、別の小さなデブリがぶつかってきた。機体が揺らぐ。

「デブリが飛んでくる!?」

ウー・チュンミンはデブリが来たほうを睨んだ。がその時、鋭い破片がコックピットの強化ガラスを打ち抜いた。その勢いで、チュンミンは宇宙空間へ吹き飛ばされた。戦闘服を着ているから、しばらくは大丈夫なはずだ。デブリから身を守るため、機体に戻ろうとする。だがその時、自分が随分地球に近づいていることに気が付いた。

「ああ。」

まっさかさまに青い海へ落ちていく。戦闘服を着てはいるが、耐えられないだろう。自分の機体が赤く染まっているのを見ながら、チュンミンは地球を見た。

「地球は青い……。」

そっとつぶやく。故郷である台湾が見えた。

「ああ。ああ。」

不意に涙がこぼれた。

「再見……。」
















ショウタたちは、急いで戦場に引き返していた。センカはこぼれてくる涙を抑えられなかった。放送が聞こえ、まばゆい光がいまだにあたりを包んでいる。

「そこを抜けたら……!」

トウキが叫ぶ。

そこには、たくさんのデブリが飛び交っていた。何かが轟々と爆発し続けている。敵の総母艦も、戦艦オリオンも、影も形も残さずに燃えていた。

「うそ、うそ!」

ハルカがそう叫ぶと飛び出していった。

「生存者を探してきます!」

「だめだ!」

トウキが叫んだ。ハルカの機体が止まる。泣き声が通信機越しに聞こえてくる。

「ショウタ……。」

「みんな、地球へ帰ろう……。」









その日の夜空は美しかったと、後々語り継がれている。彼方で光り輝く燃えつつける大きな花火と、たくさんの流れ星が地球のあちこちで見られたのだという。それがなぜこんなにも美しいのか、人々は知っていた。


宇宙という大きな海に燃える、命の光だからだ。










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