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太陽の子供たち ~宇宙に進出した地球人の物語~  作者: さうざん
【高校生編】太陽系辺境防衛戦争
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42/236

戦艦オリオン、発進

ついに太陽系辺境防衛戦争、最大にして最後の作戦、


The Operation of Aegis

The Operation of Kamikaze

The Operation of Zero


が発動された。






「戦艦オリオン航空隊先鋒班、航空隊長テレーゼ・フェシカ、発艦する。」

「了解。」

オペレーターの声が響き渡る中、エリーゼはため息をついた。戦略班の仕事の大部分は終わった。あとは作戦を記録し、戦況に合わせて作戦を変えていくだけだが、大きく変わることはない。選択肢もいくつか用意してあった。

「エリーゼ、少し休んだほうがいいだろう。」

第一艦橋から各部署へ指示を飛ばしまくっていたブンタが、エリーゼに声をかけた。

「ええ、エリーゼ。休んで頂戴。」

上司であるトメグがそっと肩をたたいてきた。

「では、失礼します。」

エリーゼは自分の部屋に向かった。


自室は私物の大部分を冥王星に送ってしまったため、閑散としていた。姉の荷物も、必要最小限にまとめられている。少しベッドの上でぼんやりしていたが、ふとゴミ箱に目が行った。

今朝はなかったはずの、くしゃくしゃに丸められた書類の山。その不自然さに胸騒ぎがして、思わずゴミ箱に手を突っ込んだ。

陽性反応が出た妊娠検査薬が出てきた。

「うそでしょ……。」

エリーゼは言葉を失った。

「テレーゼ姉さん……?」






「隊長!」

「どうした?」

「右手にデブリが!」

「そうね、よけるわよ。」

テレーゼは最速で宇宙を飛びぬけていた。

「ごめんね……。」

思わずつぶやいた。

「隊長?」

「ああ、ごめんなんでもない。」

テレーゼは慌てて無線を確認する。そっと操舵槓から片手を離した。手をおなかにあてる。

(最悪な母親だ。ごめんなさい。)

思わず涙が出た。

(お父さんの所に、一緒に行かせて……。)






「戦艦オリオン、発進。」

トニイは艦長席で低く呟いた。

ポイオーティアから今まで動かなかった戦艦が、ついに動き始めた。

「最大船速でメカ総母艦に向かう。」

ブンタが頷く。彼に操縦桿が託されていた。

ピピーッと音が鳴り、通信が入った。

「こちら、戦艦オリオン航空隊、ポイオーティア防衛班のキムです。こちらはお任せください。われらが母艦の武運をお祈りしております。」

トニイが通信機をつかむ。

「こちら戦艦オリオン、艦長のタカハシだ。航空隊の無事の帰還を祈っている。」


「ありがとう……ございます。」

キム・ヨンミンは唇をかみしめて、嗚咽をこらえた。このK作戦において、母艦に帰還することなどほぼ不可能であると、だれもが知っていたからだ。









地球圏では、最後の確認が行われていた。

「では、各自離陸体制に。」

コウスケがそうやって最後の会議を終わらせようとした。

「君たちの無事を心の底から祈っている。必ず地球に帰ってこい。」

若者たちは一斉に格納庫に向かう。

「ツツイ司令官。」

「ん?スーマー部隊長。いいよ敬語じゃなくて。」

「いろいろ、ありがとうな。俺たちの力を認めてくれて。」

「いや、君たちが協力してくれたんだよ。」

コウスケは寂しそうに笑った。

「チームゼロなんて英雄にされちまったけど、僕らだけじゃ地球は守れない。」






「ええ、ご協力感謝します。」

「こちら日本政府。シェルターの開放を完了させました。」

「こちらテラポルトス、ありがとうございます。避難用の航空機は?」

「現在離陸の手配をしています。準備ができ次第、オセアニアや東南アジアに向かわせます。」

「ご協力感謝いたします。」

「それから、自衛隊の配置も進めています。地上からの対応が間に合うかどうかはわかりませんが……。」

「可能性は無限ですから。いい意味でも悪い意味でも。そのまま自衛隊の配置を続けてください。」

「わかりました。」

「こちら、大韓民国。」

「はい、テラポルトスです。」

普段は受付を担当しているあの女性は、今や各国政府からの連絡の窓口となっていた。

地球規模での避難計画だ。義務ではないが、身の危険を感じた多くの市民が、安全な場所への避難を求めていた。政府などに打診し、ある程度の標高のある地下施設などの開放を進めていた。避難場所の情報や、戦況を正しくかつ素早く伝えることも大切である。対応できる人数は少なかったが、職員たちは身を引き締めた。




「疲れたー。」

「カズマ!」

母親の怒鳴り声に、カズマは苦笑する。せめてもの気休めにと、家の庭に防空壕もどきのものを掘っていた。

「こんなんで役に立つのかね。」

「いや、センカちゃんが言ってるんだ。役に立つにきまってるだろう。」

近所のおじさんたちが笑う。今日も地球は平和だ。思わず空を見上げる。

「姉ちゃん……。」






センカたちは格納庫で、ゼロに乗って待機していた。

「オリオン、オリオン。こちら先鋒のフェシカ。メカ総母艦を目視で確認、データを送る。」

「こちら第一環境、キドだ。フェシカ隊長、始められるか?」

「いつでもどうぞ。」

「では、始めてくれ。」






エリーゼ・フェシカはわずかな睡眠から戻ってきた。第一作戦室でコンピューターの画面を見つめる。


「航空隊による第1次攻撃開始。」







「3機落としてやった。くそっ、まだまだか!」

「隊長!敵の航空部隊がポイオーティアに向かっています!」

「計画通りだ。そっちはキムに任せよう。」

「了解!」

「戦艦オリオンに武勲を譲らない気持ちで、全員あたれ!」

「おおおっ!」

通信が荒れる。テレーゼたちは飛びまわりながら、戦闘機を落としていった。







「敵はポイオーティアに航空部隊を差し向ける。」

エリーゼは画面をなぞりながらつぶやいた。






「キムさん、レーダーに感あり。」

「ああ、わかってる。」

「ヨンミン、いよいよだ。」

「ああ、いよいよだ。」

キム・ヨンミンとジョージ・コープはにやりと笑った。

「俺たちはポイオーティアのシールドの中にいることになっている母艦オリオンを、全力で守るのが任務だ。行くぞっ!」

激しい空中戦が、ポイオーティアで始まった。





「しかし、戦艦オリオンはすでにポイオーティアを離れ、敵総母艦へ向かっている……。」


エリーゼは不敵な笑みを浮かべた。


「計画通りね。」







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