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太陽の子供たち ~宇宙に進出した地球人の物語~  作者: さうざん
【高校生編】太陽系辺境防衛戦争
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最後の平穏な日々

「ほら、パトリック、ちゃんとご飯食べなくちゃ。」

「ううーん。」

「もう、パトったら。隣のレーシャを見てごらん。静かに食べてるだろ。」

「レーシャちゃん、おなかいっぱい食べた?」

「パトリックもおいしいスープ食べよう……ってこらっ!スプーンを投げるんじゃない!」

パトリックに苦戦しているユウキが、妹のミノリに食って掛かった。

「おい、なんでレーシャはおとなしく言うこと聞くんだよ。」

「さあね。お兄ちゃんが怖いんじゃないの。」

「そうかなぁ。」

ミノリは器用にスプーンを使ってスープを食べるレーシャの口元を軽くふいてあげる。



「ユウキ、お前だいぶ苦戦しているな。」

ショウタが肩をぽんぽん叩いた。

「ほんとだよ。」

「がんばれよっ。」

ショウタはそういって、テーブルの反対側の空いた席に座る。

「センカ、戦艦オリオンの戦略班との連絡はどうなっている?」

「ええ、いっぱい来てるわよ。あっ、ちょっと待って。」

センカが通信機のボタンを押す。

「こちらアルテミスケノンベースキャンプ、ウエキです。……はい、了解しています。……作戦の変更の可能性……わかりました、また連絡ください。……はい、了解です。オーバー。」

「なんだって?」

「作戦に変更だって。たぶんここへの影響はあまりないと思う。」

「そうか……。」

「リンカ、情報班はどうなってるの?」

センカが伸びをしながら言った。

「この間のH作戦……ハッキング作戦で新たに分かった情報がとんでもなかったのよ……。もう各部署からてんでわんや依頼や質問が来て大変らしいわ。」

「しかし、無視できない情報だったからな。」

ショウタも伸びをした。

「戦略班は、今までメカの次の目標は辺境最大の星、冥王星だと思っていた。だからポイオーティアの要塞化と、戦艦オリオンによる防衛をしていたのよ。」

「ポイオーティアは冥王星宙域を守るには最適だからな……パト、いい加減にしてくれ。」

センカの言葉に、ユウキが答えようとしてまたひと騒動が始まったようだ。

「もう、お兄ちゃん! でも冥王星を中継地点にして、辺境の人を避難させようとしたんだよね。だからポイオーティアや冥王星に遠い人もその作戦を許したんでしょ。」

ミノリがレーシャのスープ皿を片付けながら言った。

「そう、辺境の移民星の人々は安全な冥王星に避難してもらうはずだった。」

ショウタが続ける。

「しかし、メカは巧妙だ。航路をうまく遮断してしまった。結果として、アルテミスケノンベースキャンプができるまで、ぼくらは移民星アスと連絡をとるのがやっとだったんだ。」

「僕らも、避難できなくなるとは思わなかった。で、危険を冒すよりは残って待とうとしたんだ。アスにはゼロがあったし、連絡を常に取り合うようにして、なんとかやってきたんだが……。通信衛星が破壊され、連絡が取り合えなくなった途端、奴ら一気に……ってパト、もう勝手に泣くんじゃないよー。」

「レーシャ、お水飲もうか。」

「くっ……。」

パトリックの鳴き声に一同は少し笑顔になった。

「とにかくまずは冥王星だと思っていた。そこにメカが、冥王星も海王星プラントも全部すっとばして、地球に向けて一発やらかそうとしているなんて情報が入ってみろ。そりゃ大騒ぎさ。」

ショウタが自分もノートパソコンを開きながら言った。


「みんな、コーヒーか何か飲む?」

スズナが台所から声をかけてくれた。

「ああ、ありがとう。」

「お願いします!」

「はーい。」

スズナがコーヒーを準備し始めた。

「やっぱり、ここは閉鎖?」

「まだなんとも言えないというか……。」

ショウタが言った。

「でも、メカがもうこのあたりを重視していないし、今の私たちの仕事と言えば、調査と索敵、あとは遺体や遺品の収集くらいでしょ?」

センカがパソコンをたたきながら続けた。

「アルテミスケノンから戦艦オリオン、あるいは地球に戻る日も近いんじゃないかしら。」

「やっぱり、そうよね。はい、コーヒー。」

「ありがとう。」

しばらく無言の時間が続いた。

「どちらにせよ、荷物の整理をしておいたほうがよさそうね。」

「ああ、いざというときの撤収作業はおそらくスズナとタケルに任せることになりそうだ。」

「わかった。任せて。」


ピピーッという電子音が鳴り響いた。

「戦艦オリオンからの通信?」

「通信入ります。」

スズナがとっさに通信機に飛びついた。

「アルテミスケノンベースキャンプ、こちら戦艦オリオンのトニイだ。」

「艦長!」

ショウタがその場で敬礼をした。

「ショウタ、個人的に連絡がしたい。秘匿回線で話してくれないか。できれば君ひとりで。」

「はい。ぼくの端末に連絡ください。」

「ありがとう。ではいったん切るよ。」


「いったい……?」

ショウタは、端末を片手に見張り台に向かった。再び電子音が鳴る。

「はい。」

「ショウタ、君に伝えなければならないことがある。正式には今日の夜、全員に連絡が行くはずだが、少し早目に耳に入れておいてほしくてね。」

「わかりました。なんでしょう?」

「メカが一気に攻勢にでる可能性が非情に高くなっているのは、十分承知だね。僕らはその機会をうまく使って、逆にメカを一気に叩こうと思っている。」

「はぁ。」

「実はこの作戦は、ずっと昔から立てていた。A作戦とK作戦という名前でね。危険すぎると思ったし、最後の切り札にするつもりだったんだ。」

電話の奥でくぐもった息の音がした。

「何度も作り直した。作戦ともいえないものだが、もうあれしか方法がない。」

「はい。」

「君たちも作戦に関わってもらう。」

「はい。」

「君に伝えておかなければいけないのは……。すまん、作戦の詳しい内容は僕の権限で開示するわけにはいかない。今夜にはある程度開示できるはずだが。でも君たちには作戦名だけでも、ある程度想像はつくはずだと思う。」

「その作戦名だけ、先に伝えるのですね。」

「そうだ。」

「お伺いします。」

「The operation of AegisとThe operation of Kamikazeだ。」

「……そうですか。」

「作戦の概要はわかるな?」

「盾……特攻……。」

「まさにその通りだ。」

「つまり、僕たちは……?」

「君たちの役回りは特別だ。」

「この情報を僕はどうすれば……?」

「僕ら大人がチームゼロにどう伝えればいいのかを聞かせてくれ。」

「それは……。」

ショウタは歯を食いしばった。

「すべてをきちんと伝えてください。」

「ありがとう。」

艦長はそういうと、通信を切った。




トニイは、戦艦オリオンの艦長室で立ち尽くしていた。

「コハル……。俺たちは……。」

トニイは崩れ落ちるようにして床に手をついた。


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