母星へのレポート
地球。
ウエキカズヤは、夕食の食卓にまさについたところであった。目の前にはいつもと変わらぬ食事が並んでいる。
「カズヤ、テレビ消しなさい。」
「はーい。」
だがテレビを消そうとした瞬間、臨時ニュースが入ってきた。
「待って。」
カズヤは叫んだ。
「こちらテラポルトスメディアセンターです。只今宇宙防衛軍より戦況報告が入りました。繰り返します。只今宇宙防衛軍より戦況報告が入りました。」
リポーターが白熱した様子で告げる。
「戦艦オリオン並びにアルテミスケノンベースキャンプより、録画での会見があります。」
「こちらスタジオです。只今より会見の様子を放送します。少し時間をください。テラポルトスの様子はどうですか?」
スタジオのキャスターがすこし慌てた様子を見せる。
「はい、各国の記者が騒いでいます。今までテラポルトスに残留している防衛軍関係者からの戦況報告はあったのですが、戦艦オリオン、また最近新設されたアルテミスケノンベースキャンプから、録画とはいえ報告があることはめったにありませんから。」
「そうですか、あ、準備ができたようです。それでは視聴者のみなさん、ご覧下さい。」
カズヤはテレビの前に立ち尽くしてしまった。
「母さん、姉ちゃんたち出るかも!」
「うん、そうだね。」
テレビに防衛軍のロゴが移ると、船内のある一室が映し出された。
「地球、並びに太陽系のみなさん、こんにちは。戦艦オリオン戦略班のエリーゼ・フェシカです。まずは、戦艦オリオンの戦況報告で、主だったものを報告します。」
エリーゼは画面に語り掛ける。
「まずは、情報長ミシェル・スノーヴァ。」
画面が切り替わり、すらっとした男が画面に現れた。
「戦艦オリオン情報長のミシェル・スノーヴァです。先日、メカのネットワークシステムへの大規模なハッキング計画を実施しました。結果、メカ側の作戦、プログラムされたものですが、を知ることに成功しました。すべてではありませんが、この情報をもとに、こちらも作戦を立案していく所存です。」
画面が切り替わり、エリーゼが再び話し始めた。
「メカの情報について、公開可能なものは、防衛軍のホームページにて公開してあります。ぜひそちらもご覧ください。」
エリーゼが手元のメモをちらりと見た。
「それでは一度、アルテミスケノンベースキャンプにつなぎます。」
画面が切り替わり、8人がカメラの前に座って敬礼している画面が映る。
「ああ、センカ!」
「お姉ちゃん!」
「元気なのか!?」
家族全員で思わず身を乗り出す。
敬礼をやめると、ショウタが話し始めた。
「こちらアルテミスケノンベースキャンプのチームゼロ、リーダー兼戦闘担当のハシモトショウタです。こちらでは、戦艦オリオンから離れた場所にあり、調査や救助ができずにいた辺境の移民星の調査と救助を行っていました。」
ショウタがセンカを促す。センカが片手のタブレットを少し見ると、しっかりカメラを見て話し始めた。
「チームゼロ戦略担当のウエキです。今回の一連の作戦の責任者でもあります。」
彼女は息を吸い込む。
「アルテミスケノン周辺の移民星アス、キノスラ、ペレ、シュリー、マナート、アイリスの調査を行いました。うち、マナートとアイリスは、辺境戦争開戦直後の段階で全住民の冥王星への避難が完了しており、シュリーも住民の半数が冥王星に避難しています。」
「まず、移民星マナートとアイリスですが、メカの攻撃を受け、街は廃墟となっていました。特にマナートは重力制御システムがほとんど機能しなくなっていました。こちらで修理できるものは修理しましたが、復興には時間がかかると思われます。」
センカはタブレットをちらりと見る。
「シュリーも攻撃を受け、調査の結果、生存者は確認されませんでした。残った住民のうち、約半数の42名の遺体を確認しました。しかし残り50名ですが……。」
センカは息をのむ。
「市街地から離れたところに、シュリーの輸送船が墜落しているのが確認されました。記録を確認した結果、メカの襲来から逃れようと輸送船での脱出を図ったようですが、メカに追撃され、農地に墜落したようです。」
センカは淡々と述べていく。
「移民星ペレも生存者は確認されませんでした。同じくメカの攻撃による市街地の破壊及び、環境コントロール機能を失い、生存不可能となったことが影響していると思われます。」
センカはいったん間を置いた。
「移民星アス、キノスラでは、生存者を発見・収容することができました。」
おそらく世界中で、歓喜の声が上がったに違いない。しかし続く言葉は残酷だった。
「移民星アスで4人、キノスラで2人です。他の生存者は確認されていません。生存者は……移民星アス在住、アサヒユウキ、アサヒミノリ、クラモトカズマ、クラモトミズキの4人。全員生まれ及び国籍は日本です。移民星キノスラの生存者は、レーシャ・コーサチュとパトリック・シャーリー。2人はキノスラ生まれです。レーシャ・コーサチュの両親はウクライナ国籍、パトリック・シャーリーの両親はカナダ国籍でした。」
センカはまた息を吸い込んだ。
「なお、アサヒユウキとクラモトカズマは、ゼロ機を操縦する自警団の団員であるため、民間人ではありますが、臨時にチームゼロとして迎え、作戦に協力してもらっています。また、アサヒミノリ、クラモトミズキ、レーシャ・コーサチュ、パトリック・シャーリーの4名は、現在アルテミスケノンベースキャンプで保護しており、安全が確認され次第、戦艦オリオン経由で冥王星まで避難させる予定です。」
ショウタがカメラに向かって言い放った。
「詳しい情報で公開できるもの、特に死亡した住民の情報は、防衛軍のホームページに載せてあります。これで報告は以上です。お返しします。」




