The First Generations
「そもそも、宇宙空間で、特に移民星で子供が生まれることがまれなんだ。」
カズマは、本部トーチカの台所で熱いお茶を飲みながら言った。
「仕事も金もない若者ばかり集まるし、生活が苦しくて子育てどころじゃない。宇宙空間が子供の発育にどう影響するかもわからないしね。」
ハルカもうなずく。
「確かにそれはまだ研究途中なの。宇宙進出があまりに急激過ぎてね。」
「本来なら、移民した先での持続的な発展のためにも、新しい世代を生み出さなければいけないのに。」
センカがため息をつきながら、お茶をすする。
「送り出した地球側にもいろいろ考えがあったんだろうがな。」
送り出された側であるカズマが、皮肉っぽく返す。
「善意から始まったにしてもね……。主導権をあくまで保持したいと考えているお偉いさんもいることは事実よ。」
センカは新しくお茶を注ぎながら言った。
「送り出すだけ送り出して、これから宇宙の発展を、と思ったらメカが来て、肝心の地球防衛までだめになったんだからな。しかたないよ。」
コウスケが、やれやれと肩を落とした。
「まぁとにかくそんな状態だから、宇宙空間で生まれた子……一部ではスペースノイドなんて呼ぶらしいが、そんな子たちは珍しいんだ。アスにもいなかったしな。」
カズマが身を乗り出して話し始めた。さらにユウキがお茶のコップを出しながら、会話に加わる。
「アスでの最年少が、ミノリたちだったんだ。」
「そういやそうだったな。」
「そう、学校もなくて、通信教育で受けていたし。」
「なんかちょっとだけ、懐かしく感じるな……ってやべえ。俺たち課題出してねえどころの騒ぎじゃないぞ。」
「確かに。」
「なんなら出征中の俺たちも、課題出してないどころの騒ぎじゃないぜ。留年確定かもしれねーよ。」
台所が笑い声でいっぱいになった。
「確かあの2人は、キノスラ移民直後に生まれた子たちだ。おそらく宇宙で生まれた最初の世代の子供たちだ。」
カズマがお茶をすする。
「それじゃあ、間違えようはないわね。」
センカが念を押した。
「間違いないよ。」
ユウキがお茶を注ぎながら言った。
「レーシャとパトリックだ。」
「台所でのんびりお茶なんか飲んで。」
すぐ目の前のあのテーブルに、ノートパソコンを広げたリンカが、台所組を睨んだ。
「住民データベースを確認したわ。」
「どれどれ。」
みんながノートパソコンに集まる。
「パトリック・シャーリー。赤毛の男の子のほうね。移民星キノスラ生まれ、両親の国籍はカナダ。もうすぐ2歳になるわ。」
リンカがノートパソコンのキーをたたく。
「レーシャ・コーサチュ。あら、この子やっぱりアルビノなのね。どうりで白くてかわいらしいと思った。移民星キノスラ生まれ。両親の国籍はウクライナ。同じくもうすぐ2歳ね。」
「ウクライナか……。」
センカが少し首を傾げた。
「どうかした?」
「ううん、なんでもない。」
「アルビノだったのね。」
ハルカが住民データベースをのぞき込む。
「2人の健康に関するデータはあるかしら。」
「キノスラのメインデータバンクにアクセスするわ。」
リンカとハルカがノートパソコンを食い入るように見つめていると、スズナが大量のタオルを抱えて現れた。
「これで服を作るしかないわ。子供用の服はあまりなかったの。」
「あとは大人用の服を縮めたりするしかないな。」
「ほら、毛布も持ってきたよ!」
タケルとトウキも何やらいろいろ抱えて部屋に入ってきた。
「スズナ、私も手伝う。」
「センカありがとう。でも報告書とか……。」
「今夜徹夜でやるから。」
「こらっ!不健康!」
スズナがぺちぺち頭をたたいた。
「とにかくオムツや下着を縫うのが先ね。」
レーシャとパトリックは、床の上に置かれた段ボール箱(食料が入っていたもの)に毛布と一緒になって眠っていた。2人はアルテミスケノン到着後に少しだけスープを飲んだが、まもなく眠ってしまっていた。
「ところで、ショウタは?」
「見張りなう。」
センカが針を動かしながら、やれやれと肩をすくめた。
「見張りなんていらないじゃないか。索敵は自動で行われているし。」
「ショウタ、だいぶため込んでいるからね……。」
センカはそういうと、息を吸い込んだ。ちらりと時計を見る。
「明日は特に大きな作戦等は計画されていません。各自日常の業務にあたること。本日の作戦の報告等は明日の朝のミーティングでまとめて行います。では各自解散・就寝してください。」
みんな伸びをしたり、時計を見たり、手元に残っている作業を続けたりした。




