残された希望
「こちらウエキ。第二環境コントロールセンター到着。」
「こちらアルテミスケノン、シイナ。状況は?」
「現在のところ、生存者はいない。がれきにかなり埋まっている。」
「了解。気を付けてね。オーバー。」
「無線連絡した。」
センカはそっけなく言うと、がれきを動かすのを手伝い始めた。
「ありがとう。」
ショウタもそっけなく返す。
「キノスラは無事だと思いたかったが……。」
「この規模の移民星で、コントロールセンターを2つもつ星はめずらしい。どちらかは無事で残っていて、必要な空気は残っている可能性は高かった。」
「ショウタ。そのがれきをどけてくれ。」
「わかった、ちょっと待っ……。」
ショウタが息をのむ。そこには人間の体があった。
「住民だな。」
「さっきから死体ばかり……。」
センカとショウタは遺体をなるべく丁寧にがれきの上に寝かせ、手を合わせた。
がれきをいくつかどかすと、コントロールセンター内への扉にたどり着いた。重い扉をゆっくり2人で開けていく。
「チームゼロ、チームゼロ。こちらクラモト。第一環境コントロールセンターの重力制御システム及び空調システムの復旧に成功した。電力が足りないので時間はかかるが、もう1時間ほどで市街地の大気は正常になるはずだ。」
通信機からのくぐもった声に、センカは耳を傾けた。
「そう、復旧できたのね。」
「よかったな、とりあえずは。」
ショウタが返す。
「生存者は……いないようだな。」
「酸素濃度が足りなすぎたのね・・・・・。」
地下にあるコントロールセンターの中枢に向かうまでのらせん状の階段のあちこちに、力尽きた人々の姿があった。
「こっちも早く復旧しないと。」
「ええ、そうね。」
ところどころに部屋がある。職員たちの待機場所や倉庫のようだが、どこにも生きているものの姿はなかった。
「ここが、最後だ。」
「機械の中枢ね。」
大きな扉には2人の男がすがりつくようにもたれかかっていた。
「奥まで逃げようとしたのかしら……。」
「いや、そうは思えない……。」
ショウタは遺体が持つ銃や、不自然な手を見てつぶやいた。
「何かを守ろうとしていた……?」
「とにかく中を見てみよう。」
センカは遺体を横に寝かせ、手を合わせた。
扉をゆっくり開けると、中には2人の女が倒れていた。
「センカ、酸素濃度がここは他よりも高いぞ!生存可能だ!」
「まさか!」
センカは2人に駆け寄る。
「ショウタ、鞄から酸素マスクを!」
「なんだよいきなり!」
「早く!」
ショウタが出した2つのマスクをセンカはひったくる。1人の女性は全く反応がなかったが、もう1人は微かに目を開けた。
「酸素マスクをつけました!もう大丈夫ですよ!話はできますか?」
センカがゆっくりはっきりした口調で話しかける。女はそっともう1人の女の握りしめた。
「助けが・・・・・・・。」
だが、何かを悟ったようにまた目を閉じた。
「中に……中に……。お願い……。」
「中?空調システムの中?」
「ええ……あの子たちを……。」
女は苦しそうに顔をゆがめた。
「お願い……。」
ショウタは黙って立ち尽くしていた。何も言えなかった。移民星アスの砂埃を思い出した。
「おい……センカ……。」
「わかりました。あなた方のお子さんたちは、必ず……必ず助け出します……。」
センカは絞り出すような声でそれだけ言うと、2人の女性の手に自分の手を重ねた。
「ありがとう……。でも……。」
見ず知らずの女の目に、涙が浮かんだのを、ショウタは見つめていた。
「よかった……。」
2人の女性の遺体を並べると、ショウタとセンカは外に並べていた2人の男性の遺体も一緒に並べた。この2組が夫婦であることは、身に着けているペンダントや指輪から、よくわかった。
遺体を並べると、センカはもう1度酸素濃度を確認した。
「開けます・・・・・。」
センカは黙って、空調システムの中枢の機械の整備のための扉を開けた。中は酸素で満ちていた。
2人の幼い子供が泣きつかれたように眠っていた。
「1歳か2歳くらいだろうか……。」
「男の子と女の子ね。」
センカとショウタはそれぞれ子供を抱き上げた。
「チームゼロ、チームゼロ。こちら第二環境コントロールセンター、ハシモト。生存者2名発見。無事収容しました。」




