アルテミスケノンへ
「チームゼロ、チームゼロ。こちらニイムラ。まもなくアルテミスケノンに到着する。」
「こちらスギヤマ。付近に敵認められず。」
「ありがとうスズナ。センカ、上陸計画を。」
「わかったわトウキ。今から2手に分かれて、周辺の索敵とベースキャンプ設営を始める。ハシモト、ウエキ、オオノ、シイナの4名は索敵に、それ以外は内部の空洞に入り、ベースキャンプの場所を決めてくれ。」
「了解。タケル、誘導は任せた。」
「トウキ了解。」
センカは大きく機体を傾け、アルテミスケノンの表面まで近づいた。
「レーダー、索敵開始。」
キュイーンという電子音とともに、画面(といってもコックピットの一部が表示画面になっているのだが。)にアルテミスケノンのデータが流れる。
「敵および敵が設置した施設などは見受けられず。」
センカは報告した。
「こちらもだ。」
「敵の基地にはなっていないようね。」
「敵の痕跡も見当たりません。」
「ウエキ、オオノ、シイナ。これより目視による最終確認を始めてくれ。」
「了解。」
アルテミスケノンは球体ながら、その表面はかなりいびつであった。そして内部に空洞がいくつかあった。かつて辺境への移民の際に候補にあがったものの、移民計画が立案される前の調査の時点で辺境戦争が起きてしまい、詳細なデータを残して表舞台から消えた小惑星だったのだ。戦艦オリオンで、情報長のミシェル・スノーヴァがこのデータを見つけて戦略長のトメグに連絡し、彼女がその有用性に気づきエリーゼ・フェシカに情報を託すまでは。戦艦オリオンがポイオーティア周辺から動けない状態の中、アルテミスケノンにベースキャンプを設置し、第2の戦艦オリオンにする計画は魅力的であった。もっとも、人員が足りず計画はとん挫していたが。
この空洞の1つが、戦闘機を収容するのにちょうどよかったため、そこを中心に基地を建てる計画になっていたのである。
「こちらハシモト。敵はいないようだ。」
「ニシオカ、了解した。これより基地の設営を始める。戦闘マニアのハシモト、ウエキは、コンテナを切り離して引き続き見張りをしてくれ。それ以外は例の空洞にゼロをとめて、宇宙服を着用して作業に当たってくれ。大きな荷物を片づけるまでは、重力制御システムと空調システムを動かせないからな。」
「戦闘マニアって何よ! ついでに周辺宙域も探検させてもらいます.」
「違いない。了解した。」
宇宙服といっても、彼らの制服である戦闘服は、ヘルメットや手袋などのオプションをつければ、簡易宇宙服として十分機能する。しかし長期の宇宙遊泳などには、宇宙服が必須だ。といっても、ずいぶん軽量化されたので身に着けるのは苦ではない。
8人は無重力空間のなか、荷物を引っ張ったり固定したりしていた。無重力なので多少重いものでもわけなく運べた。
「トーチカ組み立て完了した。」
「中も大丈夫だ。室内重力空調システムの順調だ。」
「コンテナも設置完了。物置として使えます。」
「あとは、レーダーのアンテナと、対空砲だ。手伝ってくれ。」
「重いなこれ。」
「これでも無重力だぞ。」
男子が大物を片づけている間に、女子は室内を片づけたり、備品の確認をしていた。
「スズナ、そっちはどう?」
「大丈夫よ。終わったわ。」
「こちらウエキ、まだ?」
「もうスイッチ入れられる。じゃあ、重力制御システム、起動!」
タケルが重力制御システムの電源を入れた。
「これで半径10kmに重力が発生した。続いて、空調システム起動。」
タケルがスイッチを入れた。スズナが手元の小さな機械で、空気の確認をする。
「1気圧まで残り2分。気密シールドの発生確認。あと5分もあれば、宇宙服なしで空洞で暮らせるわ。」
「サブ電源系統確認。予備電源も起動した。いまからスリープ状態に移行させる。」
彼らの新しい家、アルテミスケノンベースキャンプは、ここに創設された。




