なかま
8機のゼロは宇宙を駆け抜けていった。
「チームゼロ、チームゼロ。これよりあらかじめ設定した航路で進む。」
「トウキ。オートパイロットで大丈夫か?」
「かまわない。ただしレーダーを使って索敵は続けてくれ。」
「こちらハシモト。今は俺が中心に索敵にあたる。先頭のトウキ以外のみんなで交代でやっていこう。」
「了解」とか「はいはい」といった返事が帰ってきたのを聞いて、ショウタははっと息をついた。
「やれやれ、寝られないな。」
「ショウタ、こちらウエキ。索敵は人が多いほうがいい。手伝う。」
「助かった。」
ショウタは笑った。
「左側半分を中心にたのんでいいか?」
「大丈夫よ。」
センカが機械をいくつか動かす音が聞こえた。
「設定完了。索敵開始。」
キューンと、レーダーの音が鳴った。
「周辺に敵艦見られず。スペースデブリに注意するように、各機に連絡。」
「了解。チームゼロに告ぐ。オートパイロットのスペースデブリへの警戒レベルを2つくらいあげておいてくれ。」
「大きいものを見つけたらまたこちらから連絡しよう、ショウタ。」
「わかった。ところでセンカ、なんか曲を流してくれないか。」
「なんで私なの?」
「君の曲のセンスは独特だ。はやりにのってないのに、不思議とあっている。」
「ありがとう。じゃあこれ。」
ゆったりしたメロディーと落ち着いた歌声が聞こえてきた。
「いい歌だな。」
しばらく聞いて、ショウタはセンカに話しかけた。
「ちょっと古いアニメのエンディング曲だったの。宇宙が舞台で。広い宇宙に飛び出した人間たちの物語よ。主なストーリーは、帝国と民主主義をそれぞれいだく2つの陣営に別れて戦う人類の戦いなんだけれど、すごく壮大で歴史的で。今の私たちがハッとするようなエピソードもたくさんあって。」
「別れの歌なのに、悲しくないな。でも悲しくないわけじゃない。」
「不思議な歌よね。」
2人はしばらく黙っていた。
「俺たちさ、なんでここにいるんだろう。」
「え?」
センカは飲み物を飲む手を止めた。
「だってさ。俺ら何か特別に秀でた能力があったわけでもなく、なのに選ばれて訓練を受けてここにいるだろう?」
センカは目を閉じて、いままでのことを思い出していた。
インターホンが鳴った。母が玄関へかけていく。
「ウエキセンカさんのお宅ですか?」
「ええ、娘に何か用ですか?」
「私は国連の宇宙局のものです。」
「国連の・・・・・・まさか。」
「こちらを読んでいただければわかるでしょう。娘さんは新しく作られる国連宇宙保安隊の次期隊員として、今から訓練を受けていただきたいのです。」
「なぜ、娘が?」
「お前、何してるんだ?」
「ああ、あなた。この国連の人が・・・。」
「なんだって?きちんと説明してもらわんとわからないよ。」
「すでに日本政府から了承を得ています。詳しい説明をしますので・・・・・・。」
政府のお偉い施設の小さな会議室に、すらっとした大人が何人か立っていた。
「君たちは選ばれた8人だ。日本の学校のシステムがすこし特殊なので、君たちはほかの国のものより早めに訓練を始める。厳しい訓練だが、乗り越えて立派なパイロットになってくれ。」
「今からスケジュールを配ります。学校の予定等は考慮してあります。プライベートの問題は基本受け付けませんが、どうしてもというときには相談してください。」
「この訓練は極秘です。ほかの人には長期の国際交流プログラムやそのための養成プログラムに選ばれたということにしてください。絶対に話してはいけませんよ。」
遅い夕食を食べようとしたとき、突然声が上がった。
「あっ、僕ハシモトショウタ。中1だ。えーと、ほら、一緒に頑張ってく仲間だからさ。自己紹介。」
「わたしはウエキセンカ。中1です。よろしくお願いします。」
「僕ツツイコウスケ! 中1です。」
「シイナリンカといいまず。よろしくお願いします。」
「えーと、ニイムラトウキです。よろしくお願いします。」
「スギヤマスズナです。よろしく・・・・・・・お願いします。」
「オオノハルカです。よろしくね!」
「ニシオカタケル、中1です。よろしく。」
「あれ、みんな中1なんだ?」
「本当だね。」
「え、部活何?」
「えーと、バスケ部。」
「へー。わたしソフトボール部なんだ。」
「わたしもよ。でもこの訓練でもう部活どころじゃなくなっちゃった……。」
夕方の街を8人が駆け抜けていく。
「テスト終わった!」
「教官もほめてくれたね!」
「これで語学は一応おっけー。科学なんかの知識も一通りパスしたし。」
「アメリカでの訓練まで少し休みだ!」
「ちゃんと勉強続けなきゃだけどね。」
笑い声が響く。
「お疲れ様会しよう!」
「いいね!」
「あそこの焼肉屋さん、どう? 一応手当もらったし。」
「ぱーっと食べようぜ!」
「賛成!」
笑い声が再び響く。
「3、2、1、ファイヤー!」
一斉に銃声が響く。
「上達したな。次は戦闘機の訓練だ。休憩と準備を含めて1時間後に格納庫集合。わかったな。」
「疲れたな。」
「そこの自販機で飲み物買ってくる!」
「うちのも買ってきて!」
「えー」
しかし自動販売機の前には先客がいた。
「ああ、待たせちゃったね。君は確か・・・ああ、日本人の訓練生たちか。」
「あなたたたちは・・・・・・・?日本人?CIA?」
「どっちも正解だ。」
「そっか、ここで訓練していたのか。」
「じゃあいずれまた会うね。その時またゆっくり話そう。僕らはCIAの日本担当エージェント、チームジパングだ。」
「君たちが今から乗るのは、零号機。開発が中止されてしまった異色の機体だ。本来なら1号機ベースの練習機を使うところなんだが、あいにくすべて運用に回されてしまっていてね。空を飛ぶ感覚をつかむために、やむなくこれを使うことになった。失敗しても構わない。操作の方法はシュミレーション通りだ。」
教官や大人たちが騒いでいた。
「まさか、あそこまで乗りこなすとは。」
「危険すぎるだろう。」
「しかし可能性があるぞ!」
「君たち・・・・・・ゼロは気にいったかい?」
休憩時間、更衣室でスズナがいきなり声をかけてきた。
「相談していい?」
「どうしたの?スズナ?」
「部活のこと・・・。訓練について嘘つくのもだんだん難しくなってきて、大会前なのに休むなんてって、友達と喧嘩した。合唱好きだけど、もう続けられないかも・・・・・・。」
「わたしも実はそんなかんじなんだよね・・・・・・。」
「学校の友達、確実に減ったわ。」
「悪くいう子もいるよね。」
「どうしよう・・・・・・?」
「きっと大丈夫。いつか認められる時が来るよ。今できることをやるしかないよ!」
「君たちは・・・・・よくやった。もう訓練することもない。君たちは明日から正式に国連宇宙保安隊、いや名前が変わって国連宇宙防衛軍か。とにかく正式に配属される。なお、このことは正式なルールに従って公示する。世間で騒ぐものがいるかもしれんが、気にするな。君たちはよくやったんだ。おめでとう。」
「いろいろ、思い出すね。」
「ああ。」
「大変なこともあったけれど、あきらめたこともあったけれど、みんないつも笑顔で、楽しかった。」
「本当にそうだったな。今もそうだ。戦争なのに、みんなでいるのが楽しい。」
「戦争は嫌だけれど、今は楽しもう。」
「そうだな。面白くしよう、この宇宙を。」
ピピーッピピーッとけたましい音が鳴った。
「なんだ?」
「高熱源体をスペースデブリの中に確認。メカの可能性あり。4時の方向!距離は遠い!」
「チームゼロ!戦闘配置!見つかる前にデブリに紛れて逃げる!」
「ショウタ、チームゼロ。こちらトウキだ。今みんなに第2の航路データを送る。予備のものだったんだが、ここからあまり離れていないし、比較的安全だ。静かにここを離れよう。」
「了解!」
あちこちから声がきこえてきた。
「オートパイロット解除。マニュアル操作に移行。」
センカも操舵槓を握りしめた。
「ウエキ、移動開始します。」
ちなみに、文章にちらっと出てくるアニメは「銀河英雄伝説」のことです。第3期のEDである「歓送の歌」を聞くと、一緒にがむしゃらに頑張った仲間のことを思い出しますね。一緒に作り上げたものも、一緒に頑張った時間も一瞬で過ぎ去ってしまったけれど、だからこそぐっとくるものがあって、そこがすごく思い起こされる曲だなと想いながら聞いています。




