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太陽の子供たち ~宇宙に進出した地球人の物語~  作者: さうざん
【大学生編】狙われたリーダーたちの思い出
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142/236

旧本部施設の片隅で

「ったく!どうしてこうなった!」


テラポルトスの宇宙港には、人があふれかえっていた。

「はいっ!日本からの志願兵のみなさんはあっちのゲートから!韓国からの人はこっち!フィリピンの人は奥に進んで右のゲート!」

「はい、そこ!押すな!押さないでゆっくり進んでください!」

同僚たちの声が響く。しかしその声はすぐに怒号にかき消される。

「もう何時間も待たされているんだぞ!」

「いい加減にしてくれ!」

「なぜアジアからの志願兵はこんなに入国審査に時間がかかるんだ!」

「そうだ!ヨーロッパやアフリカの奴はとっくに訓練を始めているそうじゃないか!」

「こんなんじゃ、ヒルタやリンネルーアにやられちまうぞ!」


合同訓練から数か月。もうすぐクリスマスだというのに、テラポルトスはこの騒ぎだ。


宇宙移民自治政府プロセルピナが突如、火星に待機しているヒルタ宇宙軍とリンネルーア軍と同盟を組み、地球に対して宣戦布告をしかけてきた。宇宙移民の自治権の拡大を求めての宣戦布告だった。正確に言うと、宇宙移民の自治権の拡大に全く興味を示さない『太陽系の民主主義を守る会』の監視下に入ってしまった地球、特に本部テラポルトスへの宣戦布告だった。ヒルタとリンネルーアは、火星に待機させられ続けていることへの不信感と、地球上に残されたヒルタ人、リンネルーア人の保護のためと、ともに宣戦布告をしかけた。


「守る会」は慌てた。彼らに軍事知識は全くない。むしろ軍事的なものは何かと忌み嫌って避けてきた者ばかりだった。テラポルトスにいるはずの軍の指揮権は「守る会」が掌握したつもりだったが、チームゼロによっていつの間にか宇宙移民自治政府プロセルピナの第3軍に渡っていた。


そこで彼らは、地球上の国々に軍事力を提供するように求めた。地球を守るために。


といっても、地上戦の装備では間に合うはずがない。テラポルトスの職員たちは「守る会」のやけくその対応に半ばあきらめた気持ちで、各国との交渉を始めた。当然、どの国も渋るだろう。ついこの間まで、首相や大統領を人質に取られ、今も外交団の要人を人質同然にテラポルトスに残さざるを得なかった国々は、「守る会」への不信感を高めている。テラポルトスで人質として働かざるを得ないLSSE職員たちは、『守る会』の監視下の元、交渉と対策を進めた。



ところが、どの国もなぜか進んで兵力を送ってきた。しかも、装備や物資、資金だけでなく、進んで国民を送り込んできた。正規軍だけでなく、一般市民を志願兵として募集してまで送り込んできた国もある。


正直、人ではあまりいらない。どちらにせよ、訓練をしなければ使い物にならないし、宇宙で戦艦として使える宇宙船も限られている。


それなのに、各国は先を争うように国民を「志願兵」として送り込んだ。


そして、この志願兵たちに紛れて、LSSE職員や太陽系防衛軍関係者、各国のスパイ、そしてチームゼロが紛れ込む可能性があった。特にアジア系の人種に紛れて紛れ込む可能性のあるチームゼロを、「守る会」は恐れた。アジア系の志願兵たちが入国ゲートにあふれかえっているのは、いちいち細かいチェックをしなければならないからに他ならない。


LSSE職員たちは全員この「守る会」にうんざりしていていた。反旗を翻してもよかったのだが、下手に動けば命はもちろん、LSSEという組織そのものをつぶしかねない。「守る会」はあくまで市民団体であり、彼らを殺していい明確な理由がなかったのだ。下手に彼らを殺して後ろ指をさされるよりは、彼らが暴走してぼろを出すのを待ち、静かに反撃の時を狙っている。残された職員たちがあちこちで動いているらしいという噂も流れている。特に課長クラスの者たちが中心になって、何らかの方法で連絡を取っているらしいという嘘か本当かもわからない噂が、職員たちを勇気づけていた。






「いい加減にしろ!」

「そうだ!もう入るぞ!」

「もう何十時間と食べていないし休めていないんだ!」

「うわっ、ちょっと押さないで!」

「よし!いっちまえ!」

「おいっ、お前らも行けよ!」

「なんだなんだ!列が動いたぞ!」

「おいっ!とまれ!うわぁ!」

職員たちの怒号もむなしく、ついにあふれかえった志願兵の集団は崩れた。ゲートを次々と乗り越え、人の集団が本部施設になだれ込んでいく。志願兵たちはほっとしたような笑みを浮かびながら大集団で進んでいき、職員たちはそこに飲み込まれ、流されまいと必死だ。


当然彼らは、2人の若い志願兵が、通路に積み上げられていた物資の一部をかすめ取り、人気のない封鎖された通路に駆け込んだことにも気づかなかった。









人影は立ち入り禁止の札を通り抜け、いくつかの扉を抜ける。廊下には、「国連宇宙保安隊 会議棟」とか「国連宇宙防衛軍 ミーティングルーム」といった文字が各国語で書かれており、ところどころに大きなバツ印と共に、「この区画は現在使われていません」とか「新しいLSSE会議棟へはこちら」といったことが書き込まれている。


「ここ、使ってたんだぜ、俺たち。」

「水」と書かれた段ボールを抱えた青年が、通信機や翻訳機、画面を兼ねたサングラス越しににやりと笑う。ハシモトショウタだ。背中に背負った大きなリュックからはガサゴソとという音が鳴った。

「そうね。LSSEのために新しい本部施設が整備されたから、ここは廃棄され、順次新しいスペースとしてリフォームしていたけれど、ここは手が回っていなかったのよね。」

「食料(簡易)」と書かれた段ボールを抱えた少女が、同じくサングラス越しに笑った。ウエキセンカである。

「そりゃ、ここは課長会議が開かれるようなでかい会議室がいくつも隣接しているし、人類宇宙委員会との面会室もある。相変わらずな……。」

「そうね、下手に作業員を入れられないものね。」

「おかげで助かったけれどな。」

2人は一つの大きな重い扉の前で止まった。

「ここね。」

「ったく、段ボールはどうするんだよ。」

2人はそれから黙って、地面近くの排気口のフェンスを開ける。フェンスは意外と簡単に外れた、ちょうど大きな段ボール一つと、人間が這えば通れる広さはある。

「行くしかないか。」

ショウタは、先に段ボールを押し込むと、自分も排気口に潜り込んだ。センカもそれに続く。センカは自分も入ると、手を伸ばして排気口のフェンスをはめなおした。

「あの扉さえ開けばなぁ。」

「だーめ。あの扉が開かないことになっているから、あそこが逃げ場になっているのよ。」

センカがそう言ってクスクス笑う。ショウタも少し微笑んだ。

「センカ、明かり頼んでもいいか?段ボールにさえぎられて、こっちは真っ暗なんだ。」

「はいはい、ちょっと待ってね……はい、ついた。渡すよ?」

センカは段ボールの隙間からペンライトを投げる。明かりが無造作に揺れて飛んできた。

「うん、ありがと。」

「自分の分の明かりも確保しました、班長!」

「ははっ、懐かしいな。」

ショウタはセンカの言葉に目を細めた。

「班長なんて呼ばれるの、久しぶりだよな。」

「特別青年地球防衛班、だったね。」

「まだ高校生だったんだよな、俺たち。学校帰りに宇宙に飛んでいって、隕石を砕いたり、スペースデブリを集めたり、指名手配犯を追いかけたりしてたんだっけ。」

「そうそう。テラポルトスには人が全然いなくて、がらんとしてて、そこを駆け回っていたよね。少し寂しかったけれど、ちょっとおもしろかった。でも……やっぱり怒ってほしかった。大人にね。『廊下を走るな!』って。」

「おれもそう思う。」

ショウタとセンカは、たわいもない話をしながら、排気口の中を這いつくばって進んでいく。もちろん物資の入った段ボールを押しながら。埃が時折舞うが、使われていない区画の排気口にしては少ない方だろう。

「それにしても、単位大丈夫かなぁ。卒業遅れなきゃいいんだけど…。」

センカがつぶやく。泣く子も黙る太陽系のリーダーたちも、ほんの大学生に過ぎない。

「何とかしてもらおう。俺は……うん。」

「なに?ショウタ?彼女のこと?」

センカがまた笑う。ショウタは後ろの段ボールを軽く蹴った。

「痛い!」

「ったく、ほんとしょうもないパートナーだよな。戦場でお前に命を預けるなんて、やっぱやめたほうがいいかもしれない。」

ショウタはわざとすまして答える。

「それはこっちのセリフ!で、今は誰と付き合ってるんだっけ?あ、あの女子大の子?デートしたんでしょ?」

「そいつとは、なんでもないんだけど……。」

「はぁ?あんたその子と遊園地行って、週刊誌に写真撮られてたじゃない?」

「あれは仕方ないだろ!どっかの企業の重要人物が近々遊びに来るから、それを狙うスパイ集団が準備に現れるかもしれないから、ついでに様子見て来いって送り出したの、どこのどいつだよ!おかげで『ちょっとトイレ』とか苦しい嘘吐きながら、タケルが「スペースアミューズメントランド(仮)」の参考にするとか言ってつかんできた遊園地の図面を元に、暗殺に使われそうな場所全部洗い出してチェックして、……本当に大変だったんだからな。」

「えーと、情報をつかんだリンカ、限定アイテムをお土産に買う代わりにデートのための備品をそろえてあげたスズナ、企業秘密の図面を手に入れたタケルでしょ?」

「LSSE戦略局戦略第1課長の権限使って正式な裏ルート使って依頼してきたのはどこのどいつだよ!?」

「ワタシハサインヲシタダケデス。」

「センカ、てめぇ。だいたいあれも1対1のデートじゃないし!どっかの企業の息子とか医者の息子だか、どっかのお嬢様だかモデルだかが加わって、ほとんど話してないし!」

「ハルカが有名なお医者様の連絡先を知っていてね、そこからリンカが息子さんの連絡先をつかんで、うまいこと大学生の人間関係を使って、人数加えといて上げたのよ。」

「……やっぱり。」

「だって、その日芸能人の大物カップルがその遊園地に行くって情報が入っていたんだもん。マスコミが結構裏で騒いでたらしいよ。今度の彼女は一般人の女子大生だから、いつもの『仕事上の付き合いです。』作戦が使えないでしょ? 取引ができるほど優秀そうな子じゃないし、複数人なら写真撮られてもダメージは少ないし。」

「だろうなとは思ってた。でも、たまの休みくらい休ませてくれよ。」

ショウタはため息をつく。

「でも、その子も、その前に写真撮られた子も、みんな本命じゃないんでしょ?」

センカは先ほどのおちゃらけた声とは違う、静かな声でつぶやいた。

「……実はな。」

「だろうね。」

「なんでわかった? チームゼロでも、コウスケにしか話していないはずだ。」

「だろうなぁとは思っていた。」

「うん、本当に何かあった時のために……。ほら、コウスケはなんだかんだ口硬いし、副司令官兼ねるときも多いから、俺とは別行動になることも多いだろ?」

「うん。」

「その……隠すとかやましいつもりはなかったんだけど……。」

「うん。」

「こんな排気口に逃げてるときに話すことじゃないんだけどなぁ。なんだか話したい気分だ。」

ショウタは埃っぽい空気を吸い込む。

「俺たちが出征する日に、神社のキーホルダー渡しながら、泣きながら告白してくれた子。あの子だよ。」

「うん。」

「辺境から帰ってから、しばらく俺たちは普通の学生に戻ろうとしただろ? その時、改めてあの時の告白に応えさせてもらった。一人の高校生として。もう宇宙に戻るつもりはなかった。Z作戦はまっさらなまま未来を託すものだったけれど、別に俺たちに託そうとした作戦じゃない。チームゼロに託す作戦じゃなくて、変な奴がリーダーにならないようにする作戦だったし。僕らしか残らなかったから、僕らが引き継いだだけ。」

「そうだったね。」

「だから、俺たちは国連宇宙防衛軍の後に地球や太陽系をまとめる国連宇宙機構の仕組みができ次第、他の人に託して引退でもするつもりだった。部長代理をすぐに引き受けられなかったのは、まぁそんなところだったろ?」

「うん。」

「俺も、ずーっと悩んでた。普通の高校生に戻ろうと必死だったんだ。俺がリーダーになっちゃいけない、俺たちが絶対的に正しいわけがないって。そうしたら、彼女があの時のお守りのキーホルダー渡しながらきっぱりと言ってきた。『じゃあなんで生きて帰ってきたの?』って。」

「出征するときは確か……?」

「そう、はっとしたよ。『いつまでも待っているから、そうやって宇宙のどこかで頑張っている姿がいちばんかっこいいから、いろんな人が待っているんだから、その人たちのために全力で宇宙を復興させてよ、もっと面白い世界にする力があるならしてよ』って。」

「そうだね……。」

「あれで気持ちが決まったよ。すぐに国連や政府のお偉いさんと連絡を取り合った。俺たちがリーダーになっていいのか、どうあるのが太陽系のためなのか、ずいぶん話し合った。そうやって俺はここに戻ってきたんだ。」

「彼女さんとは?」

「別れたよ。お互い大切な存在だからこそ、縛りたくなかったんだ。お互い彼氏や彼女もできて、楽しいこともあって。でもやっぱりあいつがいちばんなんだろうな。」

ショウタは少しだけ微笑んだ。

「あのお守りは手放せないし。そう頻繁にあったり連絡をとれるわけじゃあないけれど、あいつのために何があっても地球に帰ってくるって決めてるんだ。」

「ヒュー!いいね!」

センカが口をとがらせる。

「ったく、なんか恥ずかしいな。」

「いいじゃん、いざというとき、命を預けるパートナー同士でしょ?」

「まぁ、そうだな。じゃあ俺のパートナーさんよ。」

「ん?」

ショウタはにやっと笑って尋ねた。

「アサヒユウキくんとはどういう関係なんでしょうか?……って痛い!」

後ろから段ボールがアタックしてくる。手に持っていたペンライトを落としてしまった。光が揺れる。

「ったくお前は。で、どういう関係なの?」

「……命の恩人。」

「ほーう。それだけ?」

「命を助けた人、助けてもらった人、私を殺そうとした人、敵、同僚、ライバル、でも大切な人。」

「と、いいますと?」

「うーん、でも家族って感じはしないんだよね。同僚とか戦友?に近いかも。」

「だーかーら、ぶっちゃけ2人は付き合ってるの?好きなの?そういう関係なの?」

また段ボールが不穏な音を立てる。声は聞こえず、ただ這って進む音だけがしばらく聞こえた。

「嫌いなわけじゃない。」

センカの絞り出すような声。国連総会で啖呵切った女の子のものとは到底思えないほど情けない声だった。

「でも……わからない、考えたくないの。」

「別に直接聞いたわけではないけれどさ……、ユウキとセンカはどうなのかって世界中が思ってるぜ。まぁ俺たちは「それはねえだろ」って断言するけど……。それにユウキもお前のこと、嫌いだとは思ってないだろうし、脈なしってわけじゃあ……。」

「とにかく意識したくないの。その、恋愛対象としてね。」

「なんで?」

ショウタは少し納得しながら、それでも尋ねた。

「だって……、大切な友達だから。大切な同僚で戦友で、お互いに命を助けてもらった仲で。どこかで生きて頑張ってるって思うだけでこっちも頑張れるし、一緒にくだらない話をしたり、真剣に宇宙の未来を話すのも楽しい。本当にすごく大切な存在で、だからこそ、だからこそ、そういう対象として見たくない、なんていったら、ユウキは怒るかな。」

「黙っとくよ、一応ね。」

ショウタは静かにそれだけ言った。埃が静かに舞う。

「そろそろ出口じゃないか?ほら!」

「ええ?そうなの?段ボールで見えなくて。」

「ちょっと見てくるよ……、うん、出口だ。間違いない。」

「ほんと?いきなり守る会が出てきても知らないわよ?」

「大丈夫だって。よいしょっと。ほら、段ボールおろすぞ。」

2人は再び通路に立った。使われなくなった古い施設は薄暗く、遠くの方から何かの機械が動いているブーンという振動が響いているが、それもわずかで聞き逃してしまいそうなくらい、静かだった。

「あっちだな。」

「ええ。」

2人はしばらく通路を歩き、角を曲がると、ある扉の前で立ち止まった。

「ここか?」

ショウタがそう言って扉をノックしようとした瞬間、扉が一気に開いた。明かりが2人を刺す。

「よぉ、お久しぶりお二人さん。大西洋からはるばるお疲れ様。」

コウスケがそこに立っていた。見ると、古い会議室は机やいすが勝手に動かされ、毛布や食料や銃が散らばり、その合間に見慣れた仲間たちが寝そべったり、座って何かしていたりしている。机の上にはパソコンが並び、リンカがその前で何かしていた。

「やっと来たわね。」

リンカがそう言って一瞬だけ顔を上げると、すぐにコウスケの方に顔を向ける。

「コウスケ、メインデータバンクのフィルターのプログラム再建の大まかなプロット、ちょっと確認してくれない?」

「わかったよ。でも、YURIKAシステムにアクセスしないと完成しないし、どっちにしろこのクーデター片づけた後の話だから、急ぎじゃないだろ?」

コウスケがセンカの荷物を受け取りながら答える。

「今時間あるし、どうせ後々徹夜で動くのはこっちでしょ? どっちにしろここの防犯システムをずっと見張ってなきゃいけないんだし、いいじゃない。」

「あ、やっぱ俺たち監視されてた?」

ショウタが荷物を置きながら聞いた。

「もちろん。排気口のところにセンサー、通路にも監視カメラを3つほど設置させてもらっているわ。」

リンカが一瞬だけこちらに目を向けて言った。

「センカはどこまで気づいた?」

「監視カメラ2つは気づいたけれど、3つ目はわからなかったわ。排気口のセンサーも……もしかして、あの点検用のシールみたいなやつ?妙に新しいなと思ったんだけど。」

「正解。さすがね。3つ目は会議室の中に設置したの。そこから扉の窓の部分を通して通路の監視ができるってわけ。」

リンカが答える。

「さすが。少なくとも『守る会』には効果がありそうね。」

センカはそう言って伸びをした。

「全員集合ってわけじゃあないな。タケルとスズナはどうした?」

ショウタが部屋を見渡しながら言う。

「さっすが。」

トウキが笑った。

「デートってところかな?」

「トウキ、さすがにそれは笑えない。」

コウスケがわざと真剣な顔で言う。

「ははっ、コウスケがいちばん笑ってたくせに。あっ、ショウタ、タケルとスズナは本部施設内の開拓中。テラポルトスって、各国の情報機関がいざというときのために本部施設建設のときにもあれこれ隠し通路とか作ってるんだよね。一応LSSEになるときに改築してるし、だいたいはタケルが把握しているんだけど、まだ把握しきれてない通路とか排気口もあるし、使えるかどうか確認するのも必要だし、こっち来てから暇なときはあちこち見て回ってるよ。」

「なるほどね。」

センカが頷く。

「あとは、食料とか水とか、武器とか、いろいろ必要だから、それを取りに行くのも兼ねてる。今日も夜になったら偵察に行くつもり。」

ハルカがそう言いながら手元の銃の手入れをつづけた。

「宇宙レーザー銃、予備のだけど、人数分はそろってるわ。偵察、行くでしょ?」

「ええ、食い扶持が増えちゃったしね。どこから偵察してるの?」

「地図があるわ。トウキ、手伝って。」

「はいよー。じゃあ今日の計画を教えます。」

「ありがとう。助かるわ。」

「助かる。で、今まではどうしていたんだ?」

「おいおい、4人とも、食料も大切だけど、この後どうするかも重要だぜ。特にセンカ、お前の戦略と今の現状を照らし合わせて計画を練り直さなきゃいけないし、ショウタ、お前の最終判断も仰ぎたい。俺たちが帰る場所は、こんな人気のない会議室じゃない。もう一息とはいえ、一番難しいところなんだ。わかってるよな?」

コウスケが、扉のそばで武器を確認しながらつぶやいた。武器といっても、そのあたりに積みあがっていたであろう木材や何かで、いざというときのバリケードに近いのだろう。

「もちろん。俺たちはアルテミスケノンベースキャンプでの束の間のにぎやかな共同生活みたいなことをするために、テラポルトスに戻ったわけじゃない。」

ショウタがしっかりとした声で言う。

「でも、腹が減っては戦はできないの!」

それをかき消すように、センカがつぶやく。古い会議室に、笑い声が響き渡った。



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