とある雑誌の1ページ
新しい章です。
特集:テラポルトスの裏側
「地球の未来を決める少女」「ファーストコンタクトの3人」
ウエキセンカLSSE戦略局戦略第1課長への独占インタビュー
(写真:戦略局のデスクで仕事をする、ウエキセンカLSSE戦略局戦略第1課長)
わずか15歳、高校1年生の時に太陽系辺境防衛戦争に、国連宇宙防衛軍の兵士として出征し生き残った少女。わずか16歳、高校2年生で国連宇宙機構戦略部長として太陽系を動かし、鉄の星ヒルタと緑の星リンネルーアとのファーストコンタクトを成功させた少女。わずか17歳、高校3年生で天の川憲章に調印した少女。そんな彼女は今、19歳の大学生となり、あと1年で母国日本で成人を迎える。
今回、ウエキセンカ戦略第1課長へのインタビューと取材が認められた。「我々の仕事のほんの一部ですよ。」と彼女は笑うが、LSSE本部施設内まで取材が許されることはめったにない。そんな貴重な取材の記録を今回、特集として掲載する。
(インタビューに応じるウエキセンカ戦略第1課長)
ー今回のLSSE本部占拠事件、およびチームゼロ脅迫事件をはじめとする一連の「合同訓練事件」によって、チームゼロが選ばれたのが全くの偶然であることが判明しましたが、そのことについていかがお思いですか?
わたしは、日本の中学校に入ったばかりのころ、生まれが遅かったので12歳の時でしたね、そのころに政府の方からお話を聞いて、訓練を始めました。でもなぜ選ばれたのかは全く分からなかったんです。体力も学力もごく普通でしたし、数学に関してはからっきしだめだったのに、なぜ選ばれたのだろうとずっと不思議でした。
今思うと、勉強や訓練は大変でした。最初の2年は語学と基本的な宇宙での知識、ひたすら体力をつけるためのトレーニングがメインでしたね。それから、1年でそれぞれの専門に関する知識、ゼロの本格的な訓練をしました。高校生になってからより発展的なことを学んでいく予定だったのですが、辺境戦争が始まってしまったので、急遽訓練を切り上げて、訓練をしながら実践、つまり正式な防衛軍の兵士になったんです。
もちろん母国で義務教育も受けていましたから、いくら政府から手を回してもらっていても大変でした。友人にあれこれ相談できないのも苦しかったです。チームゼロのみんなで「選ばれたからには頑張ろう」と必死に学んでいました。
「もし選ばれなかったら…」と何度話し合ったかわかりません。それくらいつらいこともたくさんありました。けれど、楽しかったこともたくさんあります。訓練で最新のスキルを身に着けていくことも面白かったし、チームゼロのみんなで協力することも楽しかったですね。戦艦オリオンで、世界トップクラスの人たちと一緒に活動できたことも貴重な体験でした。太陽系の隅々まで行くことができましたし、ほかの星に友達までできたんですよ。つらい思い出よりも、楽しい思い出に目を向けられるようにしたいと、今は思うようにしています。
偶然とはいえ、選んでいただいたことに感謝しています。
ー今回の「守る会」のように、あなた方チームゼロのことを「独裁者」と批判する人もいますが、どうお考えですか?
ええ、そうでしょうね。私たちも気にしています。
私たちはまだ若いですし、たまたまあの戦争を生き延びたというだけでいろいろなことを任せてもらいました。光栄ですが、重荷でもあります。なので、なるべく私たちには実権が集まらないようにする、というのが国連宇宙機構時代からのチームゼロのモットーなんです。学校も忙しかったですしね。
当面の体制が整うまでの代理として、国連宇宙機構の各部署の部長を引き受けましたが、そこでM作戦、メイルたち鉄の星ヒルタの件が起きてしまいました。辺境戦争から1年もたっていない状況で、鉄の星ヒルタとの交流を始めるには、強力なリーダーシップを発揮する必要があったんです。私たちはM作戦を発動するために、正式な部長となりました。しかし、それがきっかけであちこちから批判され、ついに殺されかけたと思うと、少し強引だったのかもしれません。
現在、私たちはLSSEの課長としていろいろな業務にかかわっています。あくまで私たちは第1課長で、決定権は第2課長、第3課長と変わりません。重要なことは課長会議で話し合って決めます。若手が多いですが、経験も技術も才能もある、すばらしい大人ばかりなので、助かっています。本来であればその上に局長をおくべきなのですが、今の太陽系には局長を任せられる人はいません。もう何十年かして、LSSE体制が安定し、LSSE議会も本格的に指導し始めたら、議会に局長を選出していただきたいなと思っています。
ー学校も忙しい、と言っていましたが、学生としてはどのように過ごしているのですか?
大学に行って、普通に授業を受けていますよ(笑)
テラポルトスと日本をゼロで往復する日々で、実家にはあまり帰れていません。ゼロは空港や自衛隊の基地などに特別に置かせてもらって、バイクで大学まで飛ばすことが多いです。LSSEのほうが忙しいときは、大学側と相談して、補習や追加課題で補うようにしています。こんな生活なので、あまり友達はいないですね。大学で自由な時間があるときは、図書館でのんびりしたり、学食でご飯を食べたりしています。
ーでは、好きな講義は何かありますか?
どの講義も面白いですが、興味深いのは国際関係論ですね。最近いろいろひっかきまわしてしまったので、久しぶりに講義に顔を出したら、教授が怒っていました(笑)あまり大きな声では言えませんが、国際関係論の授業中に、こっそり戦略局の仕事をしているときがありました。授業中に気になったことをメモしておいて、こっそり端末からコスモクラウドの自分のアカウントにアクセスして、情報をチェックしたり、書類を修正したりしたことがあります。マスメディアや世論だけでなく、大学の教授の意見も拾えるので助かりましたね。
ゼミでは、歴史を勉強しています。大学くらいは好きなことを勉強させてもらおうと思ったんです。主に近代史を最近は読んでいるのですが、つい戦略局のタスクが頭に浮かんでしまいますよね。
ー実家にあまり帰れていないそうですが、ご家族とはどのような関係なのですか?
いつも体調を気遣ってくれます。K作戦の後しばらく行方不明になったり、ヒルタポリスで撃たれて意識不明になったり、全宇宙に命を狙われる放送されたり、いろいろと心配をかけてしまっているので、申し訳ないですね。
たまに実家に帰ったときは、ご飯を作ってくれたり、一緒にテレビを見たりしています。弟と学校の話をしたりもしますね。
ー普段はテラポルトスの職員用マンションで暮らしているのですよね?
はい、そうです。生活に必要なものはテラポルトスにそろっていますから、テラポルトスに泊まることが多いですね。
自分でご飯を作りたいとも思っているのですが、忙しくて第1食堂に頼ってしまいます。洗濯も間に合わなくて、制服はほとんどコインランドリーです。たまの休みにはひたすら寝ています。もう少しゆとりがあって充実した生活をしたいです。
ーでは、もしあなたが「LSSE戦略局戦略第1課長」ではなく、ごく普通の大学生だったら、どんなことをしたいですか?
もし普通の生活を送れていたら、大学で友達とおしゃべりしたり、土日にのんびり遊んだり、とにかく遊びたいですね。買い物をしたり、映画を見たり、気ままに過ごしたいです。高校時代の友達とあまり会えていないので、ひさしぶりに会いたいですね。
ーところで、若者といえばやはり恋愛でしょう。さすがにウエキ課長の恋愛の噂は聞こえませんが…。
恋愛をしている暇がないですからね。いろいろな人と会いましたが、どうしても政治や軍事の話になってしまうので、恋愛には発展していかないんです。
ーチームゼロ内でなにか噂はありませんか?
チームゼロですか(笑)家族みたいなものだ、と答えておきましょう。
実は、あまり恋愛の話を聞かないんです。時々ハシモト戦術第1課長の話を聞く程度です。それ以上は言えません。
ー一部では、アサヒユウキ宇宙移民自治政府戦略委員長とお似合いだ、といううわさが流れていますが、いかがでしょうか。
そのようなうわさが流れているんですか(笑)
確かに、アサヒ戦略第3課長を移民星アスで救助したのは私です。ですが皆さんもご存じのとおり、私はそこでメカのコアを撃ち抜いていなかったんです。それを見事な射撃術で撃ち抜いたのがアサヒ戦略第3課長です。彼がいなかったら私は今頃宇宙に消えていました。
それに、私たちを国連宇宙機構に戻したのもアサヒ戦略第3課長と、クラモト戦術第3課長です。2人に説得されて、私たちはもう一度宇宙に戻ろうと決めたんです。実は、辺境戦争の後、私たちは身を引こうかと思っていたんですよ。
なんといっても、天の川会議での一件ですね。アサヒ戦略第3課長が先に撃たなければ、今頃死んでいました。
こう思うと、私は何度もあの人に助けられていますね。私たちは違う立場の人間です。わたしは革新派の人間ですが、彼は独立派の人間です。実は意見が食い違うこともあるんですよ。だからこそ信頼はしています。
ーでは、革新派の人間として、あなたは今後どのような未来を作っていくつもりですか?
まずは、太陽系に住むすべての人類が、「人類」としての意識を共有し、まとまることです。現在地球上だけでも200近い国家があり、各移民星に大小の自治政府があるという状況が続いています。私たち人類の最大の武器がこの「多様性」です。私たちは価値観も宗教も経済も政治も文化も風習も、それこそ肌の色まで違うんですよ。自分とは違うものを受け入れることは、予想以上に難しいことです。私自身も、いまだに日本人の学生でしかないんですよ。例えば、いまだにアメリカのお菓子が甘すぎて苦手なんです。
ですから、無理に統合するのではなく、それぞれの土地に住む人が、それぞれの方法で、自分たちのことを決めていくことが大切です。異質なものを無理やり受け止める必要はありません。受け入れられないものを拒むことは、悪いことではないでしょう。私たちは、拒みたいものを平和に拒むことができるしくみを作っていかなければいけません。そういった意味で、宇宙移民の自治権拡大や、地球の国々の権限を守ることに、私たちは賛同します。
しかし、天の川銀河まで視野を広げると、そうはいかなくなります。鉄の星ヒルタ、緑の星リンネルーア、彼らとの交流の中で、「わたしたちらしさ」を保っていく必要があるんです。地球で発生した私たち「人類」の定義とは何か。私たちはヒルタやリンネルーアの友人たちとともに、それを模索しています。「地球人」であることにすべての人々が誇りを持ちながら、多様性を守っていきたいと思っています。
ーありがとうございました。
シン・ゴジラにはまりました




