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太陽の子供たち ~宇宙に進出した地球人の物語~  作者: さうざん
【大学生編】狙われる「リーダー」たち
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動き出すゼロ

「ゼロの整備、してきたよー。」

トウキとスズナが工具を振り回しながら、ユウキの家に戻ってきた。移民星アスののんびりした風に、砂埃がわずかに舞う。

「ああ、ありがとう。」

センカはいったん顔を上げると、また手元のノート(アサヒ家の引き出しに入っていた使用前のものを借りた)に覆いかぶさった。

「それで、今後のスケジュールは?」

スズナがそっとセンカの隣に座った。

「やっぱり、地球に戻りたいわね……。」

センカはノートに書き込まれた文字や矢印を指さしながら言った。

「手に入れたニュースを見る限り、本部テラポルトスは自由に動けない。」

スズナはノートをのぞき込んで、やれやれという顔をした。

「相変わらず、ノートが読めない。」

「そんなことないでしょ?」

センカはちょっと笑った。

「ん?センカのノートがどうした?」

台所で、お茶を飲みながら今後の行動について戦術面で話し合っていたショウタとカズマがこちらを見た。

「ああ、センカのノート、相変わらずだなぁって。」

「どれどれ。」

センカのノートは、センカが気合を入れて書くととても上手なのだが、考え中の時やメモ程度の時は、誰にも解読できないことで有名だった。そのメモのせいで、どれだけの戦略局の職員が泣いたか、とよく冗談のネタにされる。しかし、ショウタだけは、なんとなくこのメモが分かるらしい。

「さすが、元パートナーってだけあるのね。」

「そりゃ、訓練生の時からずっと命を預けた仲だからな。これ読めないと死ぬし。でも昔はここまでじゃなかったよな。」

「そうなんだ。」

「うん、中学生くらいの時はまだ読めたんだけど、だんだん独創的なノートになってって。」

「ショウタ、うるさいよ。」

センカの声にショウタがははっと笑った。

「で、戦略担当。何をお望み?」

宇宙移民自治政府プロセルピナの戦略委員長さんはどちらに?」

「ユウキなら、墓地に向かったはず。」

先ほどからノートパソコンのキーを叩き続けていたコウスケとリンカが、ようやく顔を上げた。

「そう……。」

センカは目を下に向ける。辺境戦争で、移民星アスは、ユウキたち4人を残して全滅した。かつての仲間や家族の墓に、ユウキとカズマはこの逃亡生活中よく足を運んでいた。

「行ってきなよ。センカも一日中ノートとにらめっこじゃ、病気になるよ。」

アルテミスケノンベースキャンプの図面から顔を上げたハルカが声をかけた。

「ああ、そのとおりだ。」

タケルも図面から顔を上げた。

「ところでスズナ、アルテミスケノンの備品についてなんだが……。」

「はいはい、どうしたの?」

「医療機器については覚えているんだけど、食糧とかどれくらいあったかわからなくて。」

「あ、そっか。ハルカは遺体の収集の指揮とってたから。」

「そう、あの時アルテミスケノンの撤収を進めたのは、おれとスズナだった。」

「懐かしいね。」

3人は感慨深げに図面を見つめた。

「おい、トウキ。」

「ショウタ?」

「我らが戦略第1課長が何を考えているかはさておき、ここからどう地球に帰るか、ルートは考えたい。」

「少なくとも、冥王星の第3軍は動ける。太陽系防衛軍としても協力したい。」

「了解。まず一番の条件は、テラポルトスの宇宙港を使わないことなんだ。」

トウキが散らばっていた地図や宙図をかき集めた。

「アメリカのケープカナベラルとモハーヴェ、カザフスタンのバイコヌール、ロシアのボストチヌイ、フランス領ギアナのクール―、中国の酒泉。」

「しかし、現在有人の旅客船が主に使用しているのは……。」

「ああ、ケープカナベラルとバイコヌール、そしてテラポルトスだ。他の場所は貨物が主流だ。移民事業の関係なんかで使うのは、基本テラポルトスだったし。」

「間違いない。」

「だが、テラポルトスはああいう状況。それ以外に着陸するしかないだろう。もっとも、センカはテラポルトスに降りたいんだろうな。」

「正統性、か。堂々とするべきではある。」








墓地の周りには花が咲き乱れていた。

ユウキはその中に並ぶ墓標の中を、ゆっくり歩いていた。

「センカ?」

ユウキはゆっくり顔を向ける。

「宇宙移民自治政府戦略委員長にお願いしたいことがあります。」

いつもなら、いきなり殴りかかってきたり、いきなり銃を撃ってきたりする仲であるからこそ、重々しいセンカの真面目さ。ユウキも姿勢を正す。

「なんでしょう?LSSE戦略局戦略第1課長。」

「冥王星経由で地球に帰りたい。」

「いま戻るのは危険すぎる。命を狙われているんだ。」

センカは静かに笑った。

「いつものことじゃん。」

「まぁ、そうだが……第1課長。」

宇宙移民自治政府プロセルピナの2人は辺境に残っていてほしい。」

「どういうことだ!?」

「2人は国連宇宙防衛軍の正式な兵士ではなかった。」

「でもっ!」

「冥王星を守ってくれたことには感謝している。戦艦オリオン艦長、タカハシハヤトに変わってお礼を言います。」

「センカ、何を考えている……?」

センカはそこでユウキに詰め寄った。

宇宙移民自治政府プロセルピナは独立して動いて。」

「ああ、いいのか?」

「私たちの正当性を主張するなら、ニューヨークが適任のはず。あなたたちには……まず、ヒルタとリンネルーアの人たちの保護を。」

「火星の両軍を動かすのか?」

「訓練中の指揮系統のトップは、ショウタだった。ショウタから一時的に全権をカズマに移す。」

「クラモトカズマ第3軍司令官に、一時的に最高司令官の権限を託す、と?」

「そうすれば、ヒルタ宇宙軍とリンネルーア軍に命令できる。本当は母星に帰したいけれど……。」

「わかった。テラポルトスに取り残された、ヒルタ人とリンネルーア人の救出を名目に動けばいいんだろう?」

「ご明察。そのついでに、「守る会」に揺さぶりをかけて。」

「難しいが、やってみる。」

「あとは、任せるわ。」

「俺たちはプロセルピナシティから動く。その見返りは?」

「宇宙移民の自治権の拡大、なんてどう?」

「いいのか?」

「本当はもっと着実に進めていくべきなんだけど、この際仕方ない。「守る会」相手にたっぷり搾り取ってやって。」

「はいはい。」

2人は少し笑った。「太陽系の民主主義を守る会」の目的はLSSEそのものなのに、宇宙移民自治政府プロセルピナが「民主主義だから」と自治権の拡大を叫び始めたら、「守る会」は面白くないだろう。

「で、チームゼロはどうするんだ?」

「本部に戻る。」

「はぁ?」

本部テラポルトスに戻るよ?」

「どうやって?」

「そこは、まぁいろいろ使ってね。みんなと話す。」

「わかったよ。宇宙移民自治政府プロセルピナにはどうしろと?」

「地球へ送ってほしいのと、援護射撃をよろしくねーってこと。」

「はいはい。じゃ、戻るか。」

2人はゆっくり、市街地に向けて歩き出す。ついにチームゼロが動き出した。




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