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太陽の子供たち ~宇宙に進出した地球人の物語~  作者: さうざん
【大学生編】狙われる「リーダー」たち
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混乱の朝

アサヒユウキは、鋭く差し込む朝日を感じて、ゆっくり目を開けた。


目の前には、見覚えのある懐かしい机と本棚。誇りが舞う中、一筋の光に照らされた部屋の風景を眺めて、一瞬だけまどろむ。

しかし次の瞬間、がばりと起き上がってしまった。

「ここはっ…。」

そこは、かつての自分の部屋だった。あの頃に戻ったかと思いたかったが、荒れた部屋と、床に転がる仲間たち、ベッドの足元のカズマ。

「だよ……な。」

太陽系防衛戦争で、メカに襲われる前のあの平和な移民団の暮らし、家族がいることが当たり前だった暮らしではない。

わかってはいるが期待してしまう自分にわずかに申し訳なさを感じた。

メカの襲撃で窓ガラスが割れてしまっていた。戦後、室内に砂が入ることを防ぐために板を打ち付けただけの窓には、わずかな隙間しかない。それでもこれだけ明るいということは、もうずいぶん明るいのではないか。

しかしユウキは、疲れ切った仲間を起こす気にはならなかった。とりあえず自分だけ起き上がり、そっと部屋を出た。


リビングへ向かう階段の段数も、体が覚えていた。まだ寝起きでぼんやりしている頭に、かつての記憶がよみがえる。

何かおいしそうなにおい。味噌汁のにおいだ。ユウキは台所に立つ母親の姿を思い出した。わずかに緊張しながら、ユウキは最後の段を降りて、台所の方を向いた。


後ろ姿。そこにいたのは、懐かしい母のものでも、時折見かける妹のものでもなかった。

「センカ……?」

「ああ、おはよう。ユウキ。」

センカが振り向く。

「あ、おはよう。朝ごはん?」

「うん。味噌汁とおにぎり。」

「男子たちはもう少し寝かしとこうかって話してたんだ。」

ハルカがおにぎりを握りながら笑った。

「あ、ごめん。」

「いいよいいよ。みんなはもう起きてた?」

スズナが手に塩を振りかけながら尋ねた。

「いや、まだだだ。えっと、この毛布の塊は?」

「ああ、これ?」

ハルカがくすくす笑う。

「コウスケとリンカ。徹夜で通信手段を確保してくれたみたい。寝落ちてたからもう少し寝かしとこ。」

「ありがたいな。」

「これで情報がわかるわね。」

センカが鍋をのぞき込みながら言った。

「本部が無事ならいいんだけど。」

「なぁセンカ、地球に戻るアテはあるのか?」

「朝から鋭いこと聞くね。」

センカがいじわるそうに睨んだ。

LSSEテラポルトスの動向は宇宙移民自治政府プロセルピナにも関わってくるんだ。」

「スーマー。」

センカはため息のように呟いた。

「え?スーマーがどうしたって?」

「もし、LSSE本部が自由に動けなくて、世界各国の首脳もスパイも動けないとなった時に、頼れるのは彼よ。」

「スーマーは動くのか?あいつはただのジャーナリストだぞ。」

「だからよ。かつての戦友だし、なんとか彼と連絡が取れれば。」

「そうか……。ユリアンさんたちはどこまで動けるんだろう。」

「ユリアンさんの人脈や知識、外交手腕は信頼できる。それを駆使してきっとなんとかしてくれるはず。」

「でも、うまくいく?」

ハルカが不安そうに聞いた。

「結構、正論言われているよね。」

「テラポルトスの権力構造が、おかしいことはこちらも承知。だからこそ、主計局は戦略局や戦術局とも相談して、長期的な改革を計画していたのに。」

スズナがおにぎりを握りながら言った。

「これだけ作れば十分でしょ。」

「そうだね。」

「センカ、味噌汁は?」

「いい具合。」

「おっけい。」

スズナが笑った。

「朝ごはんにしよう。ユウキ、みんなを起こしてきて。」







めいめい、味噌汁とおにぎりという、いかにも日本人らしい朝食を済ませると、スズナの支持の元、洗い物と洗濯、掃除などをぱっぱと済ませた。

「あー、食器はそこ!カズマ、屋上で洗濯物干して!」

「屋上けっこう崩れてるから、人手いるぞ。」

「その辺に現役の防衛軍の司令官とか転がってるだろ。」

「はいはい。」

あちこちで笑い声があがる、不思議な風景だった。



一通りの仕事が済み、仮眠をとれたコウスケとリンカの指示の元、簡易の小型通信衛星(ただし技術第1課長お手製の高性能)がトウキのゼロでばらまかれた。

「これで、独自の回線で地球との通信ができる。ばれないでね。」

「しばらくは持つはずだが……不用意なことはするなよ。」

「ありがとう……。」

ショウタがそっとつぶやいた。

「ニュース、見よう。」



全員がショウタのタブレットに集まる。インターネットのニュースサイトへアクセスする。

「いったい、これは……。」

全員、言葉を失なった。





三星合同軍事訓練開始

辺境戦争の慰霊の想いも込めて


(プロセルピナシティ)太陽系標準時11日朝、太陽系外縁天体準惑星、冥王星のプロセルピナシティのプロセルピナ宇宙港から、宇宙戦艦の船団が飛び立った。鉄の星ヒルタ宇宙軍、緑の星リンネルーア軍、そして太陽系防衛軍の主力宇宙戦艦による連合艦隊である。

太陽系防衛軍からは、総旗艦を務める戦艦アルタイルを始めとする第1軍のサメロトリアテロ型宇宙戦艦の他、第2軍からはプリテントディアモンド型宇宙戦艦が、第3軍からはビントロトリアテロ型宇宙戦艦が参加している。

今回の訓練の目的は、太陽系辺境防衛戦争と同規模のメカの襲来を想定しており、当時のデータを使用しながら具体的な訓練を行うことである。かつて多くの命が犠牲になった場所で行う訓練というだけあって、各星の軍隊、特に戦艦オリオンの生存者である「チームゼロ」の面々の顔は引き締まっている。「あの時、助けられなかった人を、今度は助けに行きます。」クラモトカズマ第3軍司令官は、宇宙移民の人々に向かってそう伝えた。

また今回の訓練の途中で、小惑星ポイオーティアなど戦場での慰霊祭も行われ、メカを通じた三星の不思議な因縁と希望も再確認されることとなる。






各国首脳テラポルトスに続々集結

異星人との会談、交流に向け準備


(テラポルトス)太陽系標準時午前10時 

地球のテラポルトスには、地球上の各国首脳が続々と集まっている。現在太陽系外縁部で行われている合同訓練の後に開かれる、鉄の星ヒルタや緑の星リンネルーアの要人たちとの会談のためだ。

基本的に他の星との交渉はLSSEとして行うが、観光や貿易では、各国・各星政府との交渉は有効である。大きなチャンスとすべく、各政府は準備を進めている。

また、様々な会談も同時に行われることになっており、テラポルトスは天の川銀河でもっとも熱い場所となっている。






【速報】市民団体がLSSEへ死刑宣言

テレビ局や有名サイトを世界中でジャック


(ニューヨーク)太陽系標準時15時30分

太陽系標準時で本日15時ごろ、「太陽系の民主主義を守る会」を名乗る国際的な市民団体が一斉に世界中のテレビ放送や有名サイトをジャックし、声明を発表した。詳細は不明だが、LSSE本部の体制を批判し、「チームゼロ」の死刑を宣告した模様。現在「チームゼロ」と呼ばれるLSSE本部の幹部たちは、太陽系外縁部で行われている三星合同訓練のため、地球を離れている。







【速報】「太陽系の民主主義を守る会」名乗る団体

テラポルトスを占拠、LSSE体制を批判


(プロセルピナ)太陽系標準時16時

冥王星のプロセルピナシティに本部を構える宇宙移民自治政府は、テラポルトスのLSSE本部との連絡が取れなくなっていることを明かした。各星の移民団に冷静に行動するように声明を発表、情報収集にあたっている。

テラポルトスが、「太陽系の民主主義を守る会」の声明通り、占拠されている可能性が高いことが指摘され、事態は緊迫している。






各国首脳と連絡とれず

太陽系の民主主義を守る会の人質となっている可能性も


(東京)太陽系標準時16時

日本政府は、本日朝にテラポルトスに向かった首相を含む代表団と連絡が取れていないことを明かした。テラポルトスの空港に到着したという報告は受けているため、太陽系の民主主義を守る会を名乗る市民団体の人質になっている可能性も高い模様。

日本政府は引き続き情報収集に努めるとともに、主な閣僚やスタッフを官邸に集めている。

同じような状況が、各国で繰り広げられており、混乱が広がっている。







【速報】プロセルピナより入電

三星合同訓練中止、チームゼロ逃亡


(ニューヨーク)太陽系標準時17時

国連本部は、冥王星のプロセルピナシティの宇宙港に、太陽系防衛軍第3軍の戦艦が帰還したことという情報が、宇宙移民自治政府よりもたらされたと公表した。

第3軍によると、プロセルピナシティ経由で情報を受け取った連合艦隊は訓練を中止し、第3軍は母港であるプロセルピナシティへ、ヒルタ宇宙軍やリンネルーア軍を含む残りの艦艇はテラポルトスへの帰途についたという。

なお、命が狙われている「チームゼロ」の10名は、連絡を受けると、零号機に乗り辺境へ逃走したという。






チームゼロ、逃亡

「太陽系の民主主義を守る会」新たな声明を発表


(ロサンゼルス)太陽系標準時20時

「太陽系の民主主義を守る会」を名乗る市民団体が新たな声明を発表した。

交渉の結果、LSSE本部施設内に代表監視団を送り込み、不当な体制にあるLSSE本部と職員を監視下に置いたという。また、テラポルトスにいる各国の首脳も無事が確認され、代表監視団によって保護されているという。

「守る会」は引き続き、いわゆる「チームゼロ」の10名の身柄を要求しており、それまでは監視を続けるという。

一部情報筋では、代表監視団は観光客を人質にして本部施設内に侵入したともいわれている。LSSE職員と各国首脳は、事実上人質とされたとみられている。連絡は取れるが、監視されている可能性が高い。

なお、命を狙われている「チームゼロ」の10名は依然行方不明のままである。宇宙移民自治政府は、周辺宙域の調査を始めるとともに、「地球へ向かているのではないか」という声明を発表している。





混乱する太陽系

鉄の星ヒルタ、緑の星リンネルーアにも動揺


(ヒルタポリス)ヒルタ標準時10時

今回の一連の事件について、太陽系外にも動揺が広がっている。

鉄の星ヒルタは、政府の代表団の他、主力艦隊と、ファーストコンタクトの象徴であるメカ研究の第一人者、メイル・ノトメイアを地球に派遣していた。現在ヒルタ宇宙軍の派遣部隊は、太陽系防衛軍第1軍、第2軍と共に水の星地球の港テラポルトスに向かっているとされているが、情報は錯そうしている模様。緑の星リンネルーアのリンネルーア軍も共に行動しているとみられている。

ヒルタのヒュンベルガー首相は、リンネルーアのリーヒ・リンネルーア女王と緊急回線で連絡を取ったことを公表しており、両星が協力して事態の把握に努めていると述べた。また、太陽系側に説明を求めていき、ヒルタ人とリンネルーア人の安全を最優先するとしている。







次々と現れるニュースに、10人は言葉を失った。

「つまり、テラポルトスが落ちた……?」

ショウタが震えながらつぶやいた。

「テラポルトスが、民間人に?」

「ショウタ、あなたのせいじゃない。」

センカがそっと告げた。

「あなたのせいじゃないから。誰も死んでいないから。」

「しかし、このままでは……っ!」

ショウタはかつてのパートナーの顔を正面から見つめた。

「太陽系連盟だけの話じゃない。内乱でも済まなくなった。下手すると、天の川銀河を揺るがす大問題になりかねないぞ!」

「だから、あなたのせいじゃない。」

「今回の合同訓練の責任はぼくにある。最高司令官は僕だった。」

ショウタはそういって全員の顔をゆっくり見つめた。

「最悪僕がすべての責任をとる。心配しないでくれ。Zero作戦……託されたものを僕たちは無駄にしてはいけない。」

「リーダー。」

センカが静かに呟いた。

「それは、最後に言ってください……。」

「センカ、戻ってきたな?」

ショウタが不敵な笑みを浮かべた。

「ええ。なんとか。」

センカは、やはり不敵な笑みを浮かべる仲間の顔を見渡した。

「地球に戻る。誰の命も殺さない。」

センカはそこまで言い放つと、少し困った顔をした。

「でも、具体的な策はまだ。もっと情報を集めなきゃ。みんなも手伝って……みんな、お願いします。」

おどけた顔が、最後に一瞬不安に歪むのを、誰も見逃さなかった。


いつも読んでいただき、ありがとうございます。

結構見切り発車だったのですが、この章なんとかなりそうです(笑)


更新滞るかもしれませんが、のんびり読んでください。

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