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太陽の子供たち ~宇宙に進出した地球人の物語~  作者: さうざん
【大学生編】機械仕掛けの姉妹
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姉と兄のつぶやき

夕焼けの赤い太陽の光が、テラポルトスの空港の大きなガラス窓から差し込んでいた。

テラポルトスは地球最大の宇宙港であると同時に、地球最大の空港でもあった。LSSEの本部施設やそれに伴う職員や訓練生の住宅地などがある島「テラ・アイランド」の隣に隣接する、というよりも密着する「ポルトス・アイランド」そのものが巨大な空港と宇宙港、巨大な宇宙船ドックや整備工場であった。「テラ・アイランド」と「ポルトス・アイランド」は巨大な3つの橋でつながっていた。1つはLSSE職員や防衛軍関連の職員や物資が使う通路であったが、残りの2つは民間人にも開放されている。


空港の出国チェックカウンター(テラポルトスは国ではないが、安全管理のために身分は確認する。)の前に、日本人の中学生たちがたむろしていた。ベンチに腰掛けている者もいれば、友人とたわいもない話をして盛り上がっている者もいた。

引率の教師や外交官たちは、打ち合わせをしている。飛行機の時間までは少し余裕があるが、自由時間にするまでではない、という表情だった。


ウエキカズヤは、ぼんやりと太陽を眺めていた。鉄の星ヒルタの青い太陽や、緑の星リンネルーアの黄色い太陽も美しいだろう。自宅に訪れた2人の異星人の少女は、その美しさを教えてくれた。

しかしカズヤにとっては、やはりこの赤い太陽こそが「太陽」である。カズヤはそっと自分のパスポートを見つめる。パスポートには書かれていないが、母国の国旗には、赤い太陽の意匠が、これでもかというくらいに簡略され、それでも美しく描かれている。


ふと、背中を叩かれて後ろを振り向くと、そこにはカズヤの一番身近だった人が立っていた。


「姉ちゃん……?」

「よかったぁ。ミーティング長引きそうで、間に合わないかと思ってた。」

「大変なの?」

「うん、地球の公用語、というか代表になる言葉を決めなくちゃいけないんだけど、難しくてさ。」

「そりゃ、そうでしょ?」

「ユリアン・ゲープハルト戦略第2課長はもっと大変そうよ。」

「だって地球の代表だもの。地球は多様性の星なのが売りだしね。」

「言語の多様性は誇りよ。ええ、誇りですとも。何千男百と言葉があるわが故郷。」

「なのに話せるのは日本語だけ?」

「うっさいわね。英語とかロシア語とかフランス語とかヒルタ語とかリンネルーア語とか勉強した!あと、挨拶とかならもっとできる。」

「だったら政府の要人と今度翻訳機なしで話してみなよ。」

「あんたに言われたくないわ!」

「はいはい。」

「まぁ、私は第1課長としてヒルタやリンネルーアとも相談して意見をまとめるけど、様々なバックグラウンドを持つ宇宙移民たちの代表のユウキや、地球の国々の代表のユリアンなんかは相当苦労しているんじゃないかしら。」

「今日のミーティングは第1課の人たちだけ?」

「ええ、よくわかったね。」

「なんとなく。」

カズヤはぼそっとつぶやいた。

「まぁ、ちょっとこちらの意見もまとまったかな。まだ時間はあるから頑張らなきゃ。」

「無理はしないでね。大学行かないと、母さんたち怒るよ。」

「うん、ありがとう。」

センカは照れくさそうにつぶやいた。

「カズヤ、そろそろ時間?」

「まだあと10分くらいはあるんじゃない?」

「そっか。」

「うん。」

その時、向うから「おーい」という声が聞こえてきた。2人が振り向くと、向うから太陽系防衛軍第3軍の航空隊員の戦闘服を着た青年が走ってきた。

「ユウキ?どうしたの?」

センカの少し驚いた声に、ユウキが少し笑った。

「これから日本に帰るんだけど、カズマがゼロの整備について語り始めちゃって、少し時間ができたからさ。」

「わざわざ遠くまでありがとう。」

「いやいや、構わないよ。」

「でも、珍しいね。ユウキが日本に帰るなんて。最近はずっとプロセルピナシティとテラポルトスを行ったり来たりでしょ?」

「うん、だからこそ、かな。」

「さては、何かあったんですか?」

カズマの言葉に、ユウキが照れ笑いを浮かべた。

「実は、妹のミノリから進路について相談受けて。一回ちゃんと話し合おうと思って。おじさんたちとも。」

「ミノリちゃん、テラポルトスかプロセルピナに入れるつもり?」

「センカはどう思う?」

センカは少し悩んだ。

「そうね……他人の言葉にはなってしまうけど、ミノリとミズキはチームゼロの一員。いつでも歓迎する。」

「そうか……。実はミノリはプロセルピナへの進学を考えているらしいんだ。」

「職員養成学校?それとも士官学校?」

「さぁ……。でもあいつはアスに戻ることも考えている。」

「そう……辺境移民再建協会の会長さんとしては嬉しいんじゃない?」

「まぁ、嬉しいし、当然でもあるよ。あそこは僕らの第2の故郷なんだ。」

「ええ、そう。ところで、ユウキは?」

センカは少し声を低くした。

「ユウキはいつか、アスに戻るの?」

「帰りたいさ……。でも今は帰れない。宇宙移民自治政府の戦略委員長として、地球による太陽系連盟レッセの戦略局戦略第3課長としてやるべきことがありすぎる。僕は……そうだね、辺境戦争の被害者全員が、本当に全員が救われるまで、父さんや母さんやクラモトさんやクラモトのおばさんや……アスのみんなの元には帰れない。今度は『全員』助けてから、胸を張って帰るんだ……。」

「微力ながら、地球防衛軍の生き残りとして応援します。」

センカは少し悲しそうな顔をした。

「ミノリちゃんにも、その気持ち、伝わっているんじゃないかしら?」

「僕は、あいつには辺境戦争のことを引きずらないでほしいんだ。でも、あいつは予想外に受け止めようとしてくれている。」

「うん、いいんじゃない?」

「……わかった。」

ユウキは少し不安げに笑った。

「ところで、カズヤ君も中学生だよね?進路はどうするの?」

「僕は、地元の公立高校に行こうと思います。」

「将来、テラポルトスやプロセルピナに来るつもりはないかい?」

ユウキはそういって頭をかいた。

「実は君のことは戦略局で話題になったんだ。お姉さんよりも鋭いんじゃないかって。もしよければ宇宙移民自治政府に来ないかい?君なら大歓迎だ。」

「そういうめんどうくさいことはしないでくれるかな?機密情報のやり取りがめんどくさくなりそう。そこまでプライベートに持ち込むのはいや。」

センカはそういって大きな声で笑った。

「でも、カズヤは来ないわよ?」

「そうなの?」

ユウキが不思議そうな顔をした。

「僕は、あまり外の世界に興味がありませんから。」

「こいつ、自分の身の回りをしっかり固めていくタイプなのよね。今回テラポルトスに来たのも奇跡じゃない?」

「へぇ、そうなんだ。」

ユウキはそういって、カズヤにそっとささやいた。

「でも、君の鋭さは、きっとまたここに君を連れてくるような気がする。」

「何言ってるのよ!ユウキ!」

「はは、ごめん。」

3人はくすくすと笑った。その時、外交官が時間を告げた。中学生たちが荷物をまとめ始める。カズヤも荷物をまとめて、入国ゲートの中に消えていった。





「あれが、日本の……チームジパングやチームゼロにつぐエリート候補たちか。」

「きっと、そうね。」

「なんだか、ふわふわした子たちだったな。」

「まだ中学生よ。宇宙にも上がったことない子たち。」

「でも……。」

「全員がミノリやミズキじゃない。むしろあれだけふわふわした子たちがいる方が幸せでいい。」

「しかし、そういう普通の子たちが、チームジパングやチームゼロを変に意識して、エリート意識を持つようになったら怖いな。」

「うん。でもそれは、日本政府の問題じゃない?それとなく警告は続けていくけど……。いかんせん母国だし、愛国心がないわけじゃないし。だからこそ、厳しくしていかないと。」

「それに比べたら、カズヤはしっかりしているな。」

「まぁ、いろいろ迷惑はかけたしね。メイルやレイアとも一緒に住んだし、天の川銀河会議の時は相当ショックうけたみたいだし。そりゃそうなるかって感じ。」

少しだけ静かになったホールで、2人はそっとつぶやいた。

「カズヤは……本人の意志に逆らってまで宇宙に上げる気はないよ。姉として、ね。」

「でもあれは僕の本心だ。君より鋭い子が日本国内でくすぶるわけないじゃないか。成績もいいんだろ?」

「ええ、私以上だと思う。」

「意外なところでうっかり会ったり、下手したら敵対しかねないかもしれないね。」

「そう?」

センカはそういって、少しだけ嬉しそうに微笑んだ。


赤い夕陽が、最後の光を送り込んでいた。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


この章では兄弟姉妹をテーマにお話を進めてみました。私自身兄弟がいるので、いろいろ思うことがありますね。回収していないこともたくさんありますが、おいおい回収していきます。


さて次の章では、戦略局の会議を覗いてみようと思います。趣味全開で行きますので、もうしばらくお待ちください。

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