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太陽の子供たち ~宇宙に進出した地球人の物語~  作者: さうざん
【大学生編】機械仕掛けの姉妹
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妹の想い

YURIKAシステムのホログラムの少女は、指を少し動かすと、少し呆然としているリンカをそっと見つめた。

「リンカ、終わったわよ。」

「ユリカ姉さん……ありがとう。」

「ハッキングはちょっと予想外だったわ。まぁ新しい防御システムの実験ができたからいいね。」

「ああ、すまないな。」

コウスケがそっとつぶやいた。

「あっちのパネルを少し整備したい。リンカ、こっちは頼んだよ。」

「……うん。そうね。」

リンカがホログラム映像の少女の方を向いていくつか操作を始めた。

「そういえば、ユリカ姉さん。」

「どうしたの?」

「もうすぐ、父さんの誕生日なんだけど……。」

「今年は何を送るの?」

「どうしようか?インターネットで買おうと思っているんだけど。」

「食べ物なんかどうかしら。それなら役に立つし。」

「そうね。お鍋のセットでも探してみようかな。」

「今、おすすめのを探すわ。あとでメール見といてね。」

「ありがとう……。」

「父さんへメッセージは……こっそり送っておくわね。」

「助かる。」

2人の会話を聞きながら、コウスケは唇をかみしめた。

ユリカは、あくまで機械だ。コンピューターの管理をするプログラムの1つに過ぎない。

YURIKAシステムは、高度なコンピュータープログラムが複雑に組み合わさっている。その総まとめ役を担っているのが、人格を移植されたプログラムYURIKAである。

リンカは元々、双子の姉妹の妹として、駆け出しのエンジニアの両親のもとに生まれた。しかし姉の方は生まれてすぐに亡くなってしまった。その亡くなった姉がユリカという名前だったのだ。

この開発者の一家が、新たなコンピューターの人格に選んだのが、死んだ娘だった。もっとも本物の彼女の性格や思考はわからない。そこでリンカの思考をベースに、新たに作り上げたのがこの「ユリカ」だった。

「ユリカ姉さん、そういえば今度そこに行くの。」

「ええ?いいなぁ。」

2人の会話はいたって普通だ。しかし、姉はシイナユリカではない。YURIKAなのだ。

コウスケが知るシイナリンカは、冷静でしっかりとした少女、いや女性であったが、姉が関わると彼女は自分の立場を見失い始める。

「姉さんも行けたらいいのに。」

「仕方ないわ。でも動画なら見れるから、少しのぞこうかしら。」


ふと画面を見ると、メッセージが1件届いていた。

「シイナユリカ……。」

思わずつぶやきかけた。そっと後ろを見ると、にこやかにリンカと話しながら、ホログラム映像の少女がこちらをちらちら見ている。

「あなたの、その気持ちをいつまでも持ち続けてください。」

メッセージが続く。コウスケは言葉を失った。

「妹は、私のことを姉だと思い込もうとしています。でも私はあくまでコンピューターのプログラムのYURIKA。その一線を越えることはできません。」

後ろからは笑い声が聞こえてきた。しかしメッセージは続いた。随分と器用な機械だと、コウスケは思わずにいられなかった。

「いざというときは、妹にそれを言い聞かせてください。」

「わかりました。」

コウスケはそうメッセージを返した。

「でも、そういうあなたもあくまでお姉さんなのですね。」

「すみません……。」

その一言だけが返ってきた。コウスケは少しだけ微笑んだ。












夕食の時間になり、リンカはいつも通り、第一食堂のいつもの席で夕食を食べていた。

「リンカ?隣いい?」

「センカ……戦艦ベガはどうだった?」

「相変わらずいい戦艦ね。」

「そう……。」

リンカはサラダを食べる手を止め、味噌汁をすするセンカをじっと見つめた。

「抜き打ちの検査、聞いていなかったわ。」

「抜き打ち、だったから。あえて言わなかったの。」

「驚いたわ。いきなり敵襲だもの。」

リンカはそういってわざとらしいため息をついた。センカも少し笑った。

「ごめんごめん。」

「で、何が知りたかったの?YURIKAシステムの何を?」

センカは笑うのをやめた。しばらく沈黙が続いた。

「私がやりたかったのは……そうね。」

センカは少し迷った顔で答えた。

「YURIKAシステムに隠されているのは誰?」

「誰?」

「ええ。あそこでしか生きられないのは……ブラックボックスの中で生きているのは誰?」

センカはおそらく知っている、とリンカは思わざるを得なかった。

「誰、って聞かれるとはね。」

「やっぱりまだ言えないの?」

「言えないわ。ごめんなさい。」

「だろうと思った。同じチームゼロでも?」

「ごめんなさい。誰かは言えないわ……。セキュリティにも関わるし。」

「そうか。悪いことは……してないのよね。」

「ええ。わたしはそう思ってる。」

センカとリンカはしばらく黙りこくった。

「リンカ、私たちが分かってるのは、あのコンピューターは私たち人間に限りなく近いものであるということ。」

「そうともいえる。」

「技術の発展は喜ばしいことだけど、わたしたちはまだそれに対応できる世界ではない……その人間に限りなく近い生きている『機械』を保護することも、その『機械』から生きている人間を保護することもできない。」

「そう……ね。」

「安易な気持ちで……技術の発展を認めることはできない。今はね。」

センカはそっとつぶやいた。

「今は……大丈夫。でもいつか、わたしはあなたを止めなければいけなくなるかもしれない。」

「わかったわ……。」

「ごめんなさい。」

「ええ、大丈夫。センカ、お願いがあるの。」

リンカはそっとつぶやいた。

「私は……やりたいことがある。YURIKAシステムを完成させる。もっと強くてもっと美しいコンピューターにする。」

「うん。」

センカも頷く。

「でも、そのために私は間違えたことをしてしまうかもしれない。」

「うん。」

「そうしたら、チームゼロのみんなで、私とYURIKAを……殺して。」

「リンカ……。」

センカはちょっと笑った。

「それ、私がユウキに言ったことと一緒なんだよね。すごく運が悪い。なんかもう、フラグ立ってる。」

「半分冗談、半分本気って感じ。」

「わかってるよ。」

センカとリンカはくすくす笑った。

「とりあえず、この件はいったんこれでおしまい。防衛軍最高司令官にもそう伝えとく。」

「やっぱり、ショウタも動いてたのね。」

「仲間を疑うのはつらかったけど、私たちにしかできないと思って。」

「ごめんね、本当に。悪いことはしないから。」

「わかってる。わかってるよ。」

センカはそういって席を立った。

「ジュース取ってくる。」

「はいはい。」

センカが見えなくなると、リンカはそっと目元をぬぐった。アイラインが微かに滲んで指についた。

「それでも……お姉ちゃんに戻ってほしかった……。」


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