それぞれの朝
「カズヤ、今日の予定は?」
「ヒルタ語日常会話講座、だって。」
「へー。昔メイルに教わったし、楽勝じゃないの?」
「さあね。」
冷たい態度の弟と共に、センカはコンビニに立ち寄った。
「あ、センカおはよう!」
トウキとハルカが、ちょうど買い物を終えて出てきた。
「おはよう。2人は今日出張だっけ?」
「ああ、ハルカは月のアルテミスシティに、俺は火星のハルモニアシティだ。」
「私のゼロ、この間のスペースデブリの時の緊急出撃で調子悪くなっちゃったから、今整備中で。」
「俺のもついでに整備してもらうことにして、今日は4号機に乗ってくよ。」
「4号機って最近開発されたあの2人乗りのやつよね?」
「ああ、2人で操縦するやつで月に行って、そっから火星に行く機体を借りていく予定なんだ。」
「乗り心地もチェックしたいしね。」
3人は少し笑った。
「でも、朝から出張なんて大変じゃん?」
「でも、結構大きな学会だから、楽しみ!」
「僕も会議が終わったら、ダイマス団長と……おっと今はダイマス太陽系防衛軍第3軍火星師団長?やっぱり団長か。とにかくダイマス団長と食事をしてくる。」
「いいなぁ、よろしく伝えといてよ。」
「センカは今日は?」
「戦艦ベガのこと、いろいろやらなきゃ。」
「そっか、大変だね。」
「でも久しぶりだし、楽しみよ。」
「あのさ、姉ちゃん。」
突然、カズヤが呟いた。
「トウキさんとハルカさん、普通に急いでるんじゃない?」
3人は思わずハッとした表情をした。
「ほんとだ。急がなきゃ。」
「ほんとだね、ありがとうカズヤ君!」
コンビニで買い物を済ませ、入り口から本部に入る。長いエレベーターの中で、センカはそっと弟に尋ねた。
「あんた、昔から頭良くてしっかりしてたけど、最近は特にそうじゃない?」
「そう?」
「うん。たぶんあんたの頭なら、余裕でテラポルトスに行けると思う。」
「で?」
「カズヤさ、いつかLSSEで働きたいとか、宇宙に行きたいとか思ってるの?」
単純な興味だった。最近の若者は宇宙志向の者が多い、というニュースをどこかで耳にした。進路選択の際に、宇宙に思いをはせる若者が増えたのだそうだ。特に日本は、チームゼロやチームジパングのこともあり、より盛り上がっているという。
「なんでさ、みんなそう言うの?」
カズヤが恨めしそうにセンカを見つめた。
「みんなそう。お姉ちゃんと一緒で、宇宙で働くんでしょって。でも僕は宇宙になんか行きたくない。」
「……やっぱりね。」
センカは少しだけ笑った。
「たぶんそうだろうと思ってた。昔からあまり外国に興味持ってなかったしね。」
「うん。」
「そっか。それも大変だと思うけどね。」
「どういうこと?姉さん。」
「いろいろ。」
その時、エレベーターの扉が開いた。
「研修室はこの階だよ。いってらっしゃい!」
コウスケは、技術局のドリンクコーナーでコーヒーを飲んでいた。すると横に誰かが座った。
「よっ、おはよ。」
「ああ、ショウタ?」
「今日、あれだろ?YURIKAシステムのチェックと整備。」
「ああ、そうだ。」
「調子はどうだ?」
「問題はないだろう。」
「そうか。」
ショウタは自分もコーヒーを飲もうと、エスプレッソマシンの前に立った。
「でも、なんであんなところに整備室を作ったんだ?セキュリティとか技術的な問題にしても、あそこまでやらなくてもいいとは思うけど。」
「まぁ……念のためって感じだ。」
「そうか……。まるであそこに何か重大な秘密が隠されているみたいで、俺は嫌だけどな。」
「すまないな……あんまり話せないんだ。」
ショウタはコーヒーを片手にドリンクコーナーのベンチに座った。
「まぁいいや。とにかく頑張れよっ。」
「ああ、頑張るよ。」
ショウタはコーヒーを一気に飲み干して立ち上がった。コウスケもゆっくり飲んで立ち上がる。しかし去っていく親友の後ろ姿を見て、ふとつぶやいた。
「あいつなんで、技術局に来たんだ……?」




