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今日から使える異世界ライフハック  作者: 白生荼汰


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本日カレー日和

 そんなわけで今日はカレーである。

 どんなわけだ、と聞かれても困るのだけど、香辛料をたっぷり使った料理なら金になるだろうから寄こせ、なんてたかられてイラっとしたからというのが理由の一つ。

 それから中途半端にカレー味のものを食べるのが続いたのと、結構量があるカレー粉をオウデルハインダー家に持ってってもらおうかと思うので、説明するのにブレッドにカレーを食べさせようかな、って。

 400gの角缶ひとつでもいったん開封したら使い切れるか怪しいけど、2kgとか10kgとかどないせえっちゅうねん。炊き出しでもするんじゃなきゃ、とても使い切れそうにもない。

 カレー屋を開くにしても、あのスレチとかいうやつの反応を見る限り、量がありそうだと思われたら変な奴に狙われそうで怖い。

 なので、わたしとしてはある程度の量をオウデルハインダーさんちに押し付けて、もうお譲りしたので手元にはございません、という体裁をとりたいのだ。

 カレーが食べたいだけならレトルトを開ければいいんだけど、せっかく下処理済みの牛(ブル)すじもあるし、朝カレーとしゃれこみたい。

 牛すじカレーの牛すじはトロットロであってほしいので、昨日寝る前に冷凍しておいたすじ肉半分と取っておいた本茹での汁、それからチャーシューを作った時の下茹で汁と残ったタレを合わせて一煮立ちさせてある。長い時間煮込み続けなくても、煮返しては休ませるのを繰り返すことで、余熱と冷める過程で味が染みたり柔らかくなったりするんである。多分。知らんけど。

 人体ぐらいの温度が一番食中毒菌が増えるらしいので、鍋が触れるくらいになったら急速に冷やし、そこにおっきめに切ったジャガイモとくし切りの玉ねぎと乱切りにした人参を加えて箸が通るまで煮て、また冷ましてある。

 後は仕上げとして、薄切りの玉ねぎとカットトマト、カレー粉を炒め合わせたものを入れて煮込んだら、昔風の牛すじカレーの完成だ。

 一晩寝かせたカレーが美味しいって言うけど、わたしは作りたての方がスパイスの香りが立ってて好き。なので仕上げは朝からする。

 多めに作り置きして何度も煮返したカレーももちろん好きなんだけどね。

 おろし金がないから細かく刻んだ生姜とニンニクを炒めて香りを立たせ、薄切りにした玉ねぎを全体に透明感のある茶色になるまで炒める。

 これが大変なんだよね。レンジがあると楽なんだけど、まともにやると小一時間くらいかかる。

 昔はきつね色って言ってた気がするけど、最近だと柴犬色っていうんだっけ?

 どっちでもいいけど、飴っぽい状態になるまでよくよく炒めて、ちょっと日和ってそこにカレー粉を入れてもうしばらく炒めてから、カットトマトを入れてドロドロになるまで水分を飛ばす。

 それを鍋に入れて……あぁー!

「バターチキンカレーと作り方ごっちゃになってた……これじゃシャバシャバになっちゃう……」

 バターチキンカレーは、ほとんど水を入れずにチキンを漬けたヨーグルトとカットトマトの水分で仕上げるんだけど、煮込んでルーを入れる日本式カレーだとルーを入れなければスープカレーになってしまうのは当たり前なのに、わたしは間違えた。

 割って使うカレールーやフレークカレーと違って、カレー粉にはトロミ成分がないんである。ならばどうするかというと、カレー粉と小麦粉を炒め合わせてルーにする。ホワイトソースとかブラウンソースと似たような手法だ。もっと簡易的にするなら小麦粉とバターを練り合わせたブールマニエを加えるのでもいい。

 普通にカレー作る時は市販のルーを使って、カレー粉はバターチキンカレーとかカレーうどん作る時ぐらいしか使わないから、うっかりした。

 問題は、ここに小麦粉がないことだ。

 代用するとしたらホットケーキミックスだろうか。お好み焼き粉はあんまり量があるヤツじゃないから使い切っちゃったんだよね。甘い香りもカレー粉には勝てなさそうだけど、小袋とはいえトロミつけの為だけに開けるのもな。おろし金があればじゃがいもをすりおろしたのでもいけそうだけどおろし金がない。

「あ、そうだ。クラッカーとかどうよ」

 おばあちゃんが残した長期保存食で、やたらにあるのがクラッカーやビスケットだ。そのまま食べられるし、元々水分が少ないから長期保存に向いてるんだろう。

 基本のルーの構成要素は何かと言えば、火を通したでん粉と油脂だ。そこにミルクが入ればホワイトソースに、茶色くなるまで熱してブイヨンで伸ばせばブラウンルーに、もちろんカレー粉が入ればカレールーになる。

 そして、クラッカーの主な構成要素と言えば、小麦粉と油脂で、これはもうクラッカー=ルーと言っても過言ではないのでは?

 本格的なクラムチャウダーはクラッカーでトロミをつけるっていうし、いけるいける。

 なるべくシンプルな塩味のクラッカーを細かく砕いてカレーに足し、しばらく煮込む。

 やがてカレーはトロッとしてきて……。

「おはよう、リサ。もう起きてるか?」

「はーい」

 ブレッドがきた。

いつも読んでいただきありがとうございます。

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