【もう一度、すくうから】
※挿絵はAIイラストを使用しています
「いらっしゃいませー! 当店自慢のアイス、ひんやり冷たいですよー!」
うだるような暑さの中、キララの声が元気に響いた。
今日の体験は『アイスクリーム屋さんの店員』。
朝から気温はぐんぐん上がって、お店の前には長い行列ができている。
ショーケースには、色とりどりのアイスが並んでいた。
ミント、いちご、チョコ、バニラ、レモン、ぶどう――数えきれないほどのフレーバー。
「わあ、どれもおいしそう……! あとで味見していいって、ほんとですか、店長さん!?」
「休憩のときね」
「やったー! がんばりますっ!」
キララは張り切って、アイスをすくうディッシャーを握った。
すくうのは、思ったより力がいる。
固いアイスに、手首をくるんと使って、まあるく。
最初はいびつだった玉が、だんだん、きれいな丸になっていく。
「はい、チョコのダブルです! 暑いので、溶ける前にどうぞ!」
「ありがとう、お姉ちゃん元気だね」
「元気だけが取り柄ですっ!」
お客さんが笑ってくれるたび、暑さも少しだけ忘れられた。
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行列がひと段落したころだった。
列のうしろのほうで、小さな女の子が、ぽとりとアイスを落とした。
すくいたてのバニラが、地面にぽたっと崩れる。
「……あ」
女の子の顔が、みるみるうちにくしゃっとゆがんだ。
そして、わあっと泣き出した。
キララは、カウンターから飛び出していた。
女の子の前にしゃがんで、目線を合わせる。
「大丈夫、大丈夫。びっくりしたね」
「だって……アイス……」
「うん。落ちちゃったね。悲しいね」
キララは、女の子の頭をそっと撫でた。
それから、ぱっと立ち上がって、店長のほうを振り向いた。
「店長さん、あの……」
言いかけたキララに、店長は、うなずいて笑った。
「いいのよ。こういう暑い日は、そういうこともあるから」
キララは、ぱあっと顔を輝かせて、新しいバニラをすくった。
さっきよりも、ちょっとだけ大きな玉を。
「はい、どうぞ! 今度は、しっかり持っててね」
女の子は、涙でぐしゃぐしゃの顔のまま、それでも、こくんとうなずいて受け取った。
ひとくち舐めて――ふにゃっと、笑った。
「……おいしい」
「よかった!」
その笑顔を見た瞬間、キララは、すくってあげてよかった、と心から思った。
汗も、暑さも、腕の疲れも、どこかへ飛んでいってしまうくらいに。
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夕方、店じまいのころ。
キララは、くたくたになってカウンターにもたれていた。
腕はぱんぱん、髪は汗でぺったり。
それでも、心はなんだか、ふわふわと軽かった。
「今日はよく頑張ったね」
店長が、冷たいレモンアイスを差し出してくれた。
「わあ、いいんですか!? いただきますっ!」
ひとくち食べると、酸っぱさと甘さが、じんわり体にしみた。
一日中すくっていたアイスを、こうして自分で食べると、また格別だ。
「あの子ね、帰りにもう一回、お姉ちゃんにバイバイしてったのよ」
「ほんとですか!? うれしい……!」
キララは、レモンアイスを見つめて、ふと思った。
アイスって、不思議だ。
冷たくて、すぐ溶けて、あっという間になくなってしまうのに。
食べた人は、みんな、笑顔になる。
「アイスって、いいですね」
「あら、どうして?」
「食べると、みんな笑うから。……さっき泣いてた子も、笑ったから」
店長は、少し驚いたように瞬きをして、それからやさしく笑った。
「あなた、向いてるわ。この仕事」
「えへへ、ありがとうございます!」
夕暮れの空が、アイスみたいにいろんな色に溶けていた。
セルフリクエスト:キララでアイスクリーム屋さん
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