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Project Alpheos(プロジェクト・アルフィオス) ~あなたのリクエストで星の未来を取り戻せ~  作者: だしのもと
Project Alpheos 体験ミニストーリー(星レベル10~

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【海の音でいい】

※挿絵はAIイラストを使用しています

「うわあ、海だー!」


 キララは砂浜に着くなり、サンダルを脱いで駆け出した。

 白い波が寄せては返し、足首を冷たくくすぐる。


「冷たっ! でも気持ちいい!」


 振り返って、まだ砂浜のふちに立っているピカルに手を振る。


「お兄ちゃんも早くー!」


 ピカルは日差しに目を細めて、ゆっくりと歩いてきた。

 手には、いつもの記録帳。


「……今日は、潮間帯の生き物を観察しようと思ってる」


「かんかんたい?」


「潮間帯。潮の満ち引きで、海になったり陸になったりする場所だ。生き物が多い」


「むずかしいことはあとにして、まず遊ぼ!」


 ピカルは波の動きを、しばらく目で追っていた。

 寄せる間隔、引く速さ。


「……今の波は、だいたい七秒周期だ。次の大きいのが来る前に、あそこまで戻れば――」


 言い終わる前に、想定より大きな波が足元に届いた。

 靴が、しっかり濡れた。


「……計算が」


「あははっ! お兄ちゃんでも外すんだ!」


「海は、変数が多すぎる」


 キララは笑い転げながら、波と追いかけっこを始めた。

 寄せる波から逃げて、引く波を追いかける。

 単純なのに、いつまででもできてしまう遊びだった。

 ピカルも、どうせ濡れたついでにと、少しだけ付き合った。


 _________________


 しばらくして、キララが砂浜にしゃがみこんだ。


「見て、お兄ちゃん! 貝がら!」


 手のひらに、小さな巻貝がいくつか転がっている。

 ピカルはさっそく記録帳を開いた。


「それは、巻貝の一種だな。この螺旋の形状は――」


「あのね、これ、耳に当てると海の音が聞こえるんだって!」


 キララは一番大きな貝を、そっと耳に当てた。


「わ……ほんとだ、ざあーって、聞こえる……!」


 目を閉じて、うっとりしている。

 ピカルは記録帳から顔を上げた。


「……それは、正確には海の音じゃない」


「え?」


「貝の中で、周りの音が反響しているだけだ。自分の血が流れる音も混ざる。海がなくても、同じ音は聞こえる」


「…………」


 キララは、貝を耳に当てたまま、じっとピカルを見た。

 なんとも言えない顔だった。


 _________________


 夕方になって、二人は砂浜に並んで座った。

 空が、水平線の向こうから、少しずつ橙色に変わっていく。


「ねえ、お兄ちゃん」


「なんだ」


「さっきの貝の話、ほんとはちょっとだけ、がっかりした」


 ピカルは黙って海を見ていた。


「海の音だと思って聞いてたのに、ただの反響なんだって思ったら、なんか……ね」


 波の音が、二人のあいだを通り過ぎていく。

 ピカルは記録帳を閉じた。

 それから、キララの手の中の貝を、しばらく見つめた。


「……さっきのは、忘れてくれ」


「え?」


「反響でも、血の音でも、どうでもいい」


 ピカルは、めずらしく、言葉を探すようにした。


「お前が海の音だと思って聞いたなら、それは、海の音でいい」


 キララは、貝を握ったまま少し黙った。

 それから、にっこり笑ってもう一度耳に当てた。


「……うん。やっぱり、聞こえる。海の音」


「そうか」


「お兄ちゃんも聞く?」


「……一回だけな」


 差し出された貝を、ピカルは耳に当てた。


挿絵(By みてみん)


 ざあ、と、遠い音がした。

 反響だと、わかっている。


 わかっているのに、その音は目の前の海と、不思議とよく似ていた。

 水平線に、陽が半分沈んでいた。


参加者リクエスト:二人で海辺で遊ぶ


お読みくださりありがとうございます!

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リクエスト企画の方は不定期で参加者様を募集してます。

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