↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Project Alpheos(プロジェクト・アルフィオス) ~あなたのリクエストで星の未来を取り戻せ~  作者: だしのもと
Project Alpheos 体験ミニストーリー(星レベル10~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
94/97

【ふたりぶんの、ひとつのケーキ】

※挿絵はAIイラストを使用しています

「わあ、ショーケースがきらきらしてる……!」


 キララは店に入るなり、ガラスケースに顔を近づけた。

 いちごのショートケーキ、つやつやのチョコレートケーキ、レモン色のタルト。

 どれも小さな宝石みたいに並んでいる。


 今日の体験は『ケーキ屋さんのお手伝い』。

 エプロンを借りて、二人で厨房に立つことになった。

 店主のおばあさんが、にこにこしながら一枚の注文票を差し出す。


「ちょうどよかった。今日ね、常連の女の子の誕生日ケーキを頼まれてるの。よかったら、二人で作ってみてくれる?」


「ええっ、私たちが!?」


「土台はわたしが見ててあげるから、大丈夫。デコレーションは、二人の好きなように」


 ピカルは注文票に目を落とした。

 『六歳・女の子・いちご好き』とある。


「……わかりました。やってみます」


_________________


 スポンジを焼き、クリームを塗る工程は、自然とピカルの担当になった。

 温度、時間、クリームを引く角度。

 ピカルの手つきは危なげなく、切り分けた断面はきれいな水平を保っていた。


「お兄ちゃん、相変わらず正確だね……」


「土台が歪むと、上に何をのせても崩れる。基礎が大事だ」


 問題は、その次だった。

 いちごを手にしたピカルが、定規でも当てるように、等間隔で並べ始めたのだ。

 寸分違わぬ間隔、寸分違わぬ角度。


「……こう並べると、視覚的に安定する」


「うーん」


 キララは腕を組んで、首をかしげた。


「きれいなんだけど……なんか、お店のサンプルみたい」


「それの、何が問題なんだ」


「んーとね、これ、六歳の女の子の誕生日ケーキでしょ?」


 キララはいちごを一粒つまんで、くるっと回した。


挿絵(By みてみん)


「私だったら、こう……びっくりして、笑っちゃうケーキがいい!」


 そう言うと、キララはクリームといちごとチョコを使って、ケーキの上に不格好な動物の顔を描き始めた。

 丸い目、ちょんとした鼻、ぐにゃっと笑った口。

 お世辞にも整っているとは言えない。

 でもなんだか、見ているこちらまで笑ってしまう顔だった。

 ピカルは、しばらくそれを黙って見ていた。


「……対称性は、完全に崩れているな」


「あはは、そうだね!」


「だが」


 ピカルはいちごを一粒、キララの描いた顔の横にそっと足した。


「この顔なら、こっちに一粒あったほうが、笑って見える」


「……お兄ちゃん」


「基礎は俺が保証する。表情のほうは、お前に任せる」


 キララは、まばたきをひとつして、それから大きくうなずいた。


_________________


 完成したケーキを受け取りに、女の子が家族とやってきた。

 箱を開けた瞬間、女の子が息をのんだ。


「……わあ! このケーキ、笑ってる!」


 きゃっきゃとはしゃぐ声が、店内に響く。

 いちごを指さして、目をきらきらさせている。

 その隣で、お母さんも「かわいい」と笑っていた。

 ピカルとキララは、厨房の奥からそっとその様子を見ていた。

 女の子の笑い声が、扉が閉まるまで続いていた。


_________________


 帰り道。

 夕暮れの空の下を、二人で並んで歩いた。


「あの子、すっごく喜んでたね!」


「……ああ」


「お兄ちゃんの土台、断面ほんとにきれいだった。あれがあったから、私も安心してデコできたんだよ」


「……そうか」


 ピカルは少し間を置いてから、続けた。


「俺のいちごの並べ方は、たしかに整っていた。でも、あの子はたぶん笑わなかった」


「そんなことないよ」


「いや」


 ピカルは前を向いたまま言った。


「整っているものは、安心する。でも、笑わせるのは……お前のほうだ」


 キララは、ぱっと顔を上げた。


「それ、褒めてる?」


「事実を言っている」


 いつか聞いたのと同じ台詞に、キララはくすくす笑った。


「じゃあ、次も一緒に作ろうね。お兄ちゃんが土台で、私が顔!」


「……いちごの数だけは、俺に決めさせろ」


「なんで!?」


「多すぎると、崩れる」


 キララは笑いながら、夕暮れの道を跳ねるように歩いた。

 その手には、店主がお礼にくれた、いちごが一粒。

 かじると甘さのなかに、ほんの少しだけ酸っぱさがあった。

参加者リクエスト:二人でケーキ屋さん


お読みくださりありがとうございます!

ブックマーク、評価、コメントを頂けると大変嬉しいです!!


リクエスト企画の方は不定期で参加者様を募集してます。

Xで最新情報を投稿してますので、よかったらご覧ください。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。