【もふもふ地獄へようこそ】
※挿絵はAIイラストを使用しています
「みなさん、こんにちは! 今日はゲーム実況に挑戦しますっ!」
キララがカメラに向かって元気よく手を振った。
その隣で、ピカルが居心地悪そうに座っている。
「……本当にやるのか、これ」
「やるの! 地球の文化だもん!」
今日の体験は『ゲーム実況配信』。
準備をしていたら、コーギーちゃんがのそりとやってきて、一本のソフトを差し出したのだ。
「これ、ボクが作ったんだ〜。もふもふ癒しゲーム。よかったら実況してよ〜」
「コーギーちゃん、ゲーム作れるの!?」
「まあね〜」
画面に映ったのは、まるまるとした一匹のコーギー。
タイトルは『もふもふコーギーとなかよし大作戦』。
ゆるい書体、淡い色づかい、どこからどう見ても癒し系だ。
「わあ、かわいい! 撫でてあげるゲームなんだね!」
「……この手のものは、たいてい単純だ。すぐ終わるだろう」
ピカルがコントローラーを手に取った。
この見立てを、数分後に全面撤回することになるとは、まだ知らなかった。
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スタートを押すと、コーギーが画面の中央にちょこんと座った。
『さあ、なでてあげよう!』の文字が、ぽわんと浮かぶ。
キララがわくわくしながら身を乗り出す。
ピカルがそっとスティックを倒し、コーギーの背に手を伸ばした――その瞬間。
『判定:はやい』
コーギーが、ぴょん、と逃げた。
「え」
「今の、逃げた!?」
もう一度。
今度はゆっくり、慎重に、指先の速度まで気を配って。
『判定:おそい』
また逃げられた。
「……なるほど。撫でる速度に、許容範囲があるらしい」
「厳しすぎない!? 撫でるだけだよ!?」
ピカルの目つきが変わった。
こうなったときの兄が何を始めるのか、キララはよく知っている。
「角度、速度、開始位置……判定の条件を洗い出す」
「実況が急に攻略解説になってる!」
試すうちに、ゲームの理不尽さが少しずつ見えてきた。
毛並みの向きを読んで撫でなければ一発で機嫌を損ねること。
しっぽに触れると『激おこゲージ』なるものが一気に溜まること。
耳の後ろに、ほんのわずかだけ『正解ゾーン』が存在すること。
画面の端では、視聴者のコメントが流れていく。
『コーギー凶暴すぎて草』
『これ本当に癒しゲー?』
『ピカルさんの真顔がいちばん怖い』
「見て、お兄ちゃん! コメントいっぱい来てるよ!」
「あとにしてくれ。……今、正解ゾーンに入る」
息を止め、耳の後ろへ、ぴたりとカーソルを合わせる。
『判定:かんぺき! もふもふ度+1』
「やったーっ!」
「……+1」
「え」
「クリアは、もふもふ度100だ」
二人のあいだに、短い沈黙が落ちた。
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配信を終える頃には、二人ともぐったりしていた。
三時間かけて、もふもふ度はようやく37。
ピカルは指を揉みほぐし、キララは机に突っ伏している。
そこへ、コーギーちゃんがのんびり顔を出した。
「どうだった〜?」
「……鬼畜だった」
「癒し要素どこにあったの!?」
コーギーちゃんは、きょとんと首をかしげた。
「え〜、そんなに難しかった? ボクは一回でクリアできたよ〜」
「「作者だからでしょ!!」」
声がぴたりと重なった。
コーギーちゃんはしっぽをぱたぱた振るだけで、まったく悪びれていない。
キララがため息をつきながら、配信のコメント欄をもう一度見返した。
そこには、こんな言葉が並んでいた。
『久しぶりにこんなに笑った』
『二人の掛け合いずっと見てられる』
『続き待ってます!』
キララは、ふっと肩の力を抜いて笑った。
「……なんだかんだ、楽しかったね」
「……まあな」
ピカルは指の関節を鳴らしてから、コントローラーを見つめた。
「次は、もふもふ度50を目指す」
「え、またやるの!?」
「乗りかかった船だ」
キララは目を丸くして、それから声をあげて笑った。
コーギーちゃんが、うれしそうにしっぽを振る。
「じゃあ、次回作も作っておくね〜。もっと難しいの」
「「作らなくていい!!」」
窓の外はもう夜で、配信を終えた部屋には、まだ二人ぶんの熱が残っていた。
参加者リクエスト:コーギーちゃんの作ったコーギーを題材にした激ムズ高難易度のもふもふ癒しゲームの実況配信
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