【レッサーパンダ=コーギーちゃん?】
※挿絵はAIイラストを使用しています
「……丸い! 顔が丸すぎてかわいい……!」
目の前に現れた生き物に、キララの目も丸くなった。
レッサーパンダだ。
図鑑で見たことはあったけれど、本物は思っていたより小さくて、思っていたよりずっと毛がふわふわで、思っていたより顔が、とにかく丸かった。
「あっ、このリンゴ食べるかな?」
飼育員からもらったリンゴを差し出すと、レッサーパンダが口で受け取り、そのあと両手でリンゴを持った。
その瞬間、キララの思考が止まった。
「ちっちゃい手で持った……!!」
もぐもぐと食べる様子を、呼吸を忘れて見つめる。
小さな顎が一生懸命動いて、耳がぴこぴこする。
そして、しましまのしっぽがふわりと揺れた。
どこを見ても情報量が多すぎて、目が足りない。
食べ終わったと思ったら、今度はふと立ち上がった。
二本足で、まんまるのお腹を見せて、くりくりの目でこちらをじっと見ている。
「え、立った……!?」
その顔を見た瞬間、キララはぴんときた。
(……コーギーちゃんに似てる)
この愛嬌と、この佇まい。
くりくりの目も、ぺたっとした感じも、どこか重なる。
体格は全然違うのに、漂っている空気がどことなく同じだった。
のんびりしていて、愛らしくて、でも自分のペースをちゃんと持っている感じ。
(コーギーちゃんも、りんご持ったら立つのかな?)
帰ったら絶対試してみよう。
そう決意した瞬間、レッサーパンダはくるりと背を向けてとことこ去っていった。
「行っちゃった……」
まんまるのしっぽが木の影に消えていく。
名残惜しいけれど、頭の中はもう次の実験のことでいっぱいだった。
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帰り道、キララはスーパーでりんごを一個買った。
玄関を開けるなり、コーギーちゃんがのそりと顔を出した。
「おかえりー」
「コーギーちゃん! ちょっと試したいことがあるんだけど」
「ん? なになに」
キララはりんごをそのまま差し出した。
コーギーちゃんが首を傾ける。
「……りんご?」
「うん! 両手で持ってほしいんだ」
「両手で?」
「そう! こう、ぎゅってして、立って食べるの!」
コーギーちゃんはりんごをじっと見て、それから自分の前足を見た。
また、りんごを見た。
「……むりだよ」
「え」
「見てよほら! ボクの手足みじかいし、そもそも立てないし」
「あ~......」
キララはコーギーちゃんの体型を改めて眺めた。
胴が長くて、足が短い。
りんごの大きさと、前足の長さを見比べると、確かに、どう考えても成立しなかった。
「そっかぁ……そうだよね」
「なんで立たせようとしたの」
「今日ね、動物園でレッサーパンダが両手でりんご持って食べてて、コーギーちゃんに似てるって思ったから、試してみたくて」
コーギーちゃんはしばらくその言葉を噛みしめるような顔をした。
「……レッサーパンダに似てる」
「褒めてるよ!!」
「ふうん」
怒っているのか、受け入れているのか、よくわからない顔だった。
でもしっぽが、ゆっくりと左右に揺れていた。
「ねぇ。りんご、食べたい」
「あ、切るね!」
キララは台所に駆け込んで、りんごを八等分にカットした。
皮をむいて、お皿に並べて、戻ってくるとコーギーちゃんがお皿の前でお行儀よく待っていた。
「どうぞ」
コーギーちゃんはひとつ口に含んで、もぐもぐと食べた。
「おいしい」
「よかった!」
ちょうどそこへ、ピカルが部屋から出てきた。
「なにしてるんだ」
「実験」
「……何の」
「コーギーちゃんがレッサーパンダかどうかの確認」
ピカルは二人を交互に見て、それから何も言わずに台所へ向かった。
おそらく『理解不能』という文字が頭に浮かんだからだろう。
コーギーちゃんは二切れ目に手をつけながら、ふと顔を上げた。
「で、似てた?」
「可愛い所は一緒だった!」
コーギーちゃんはふふ、と笑っていつものソファへ向かっていった。
レッサーパンダがとことこ歩き去るときと、少しだけ似た背中だった。
リクエスト:
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