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Project Alpheos(プロジェクト・アルフィオス) ~あなたのリクエストで星の未来を取り戻せ~  作者: だしのもと
Project Alpheos 体験ミニストーリー(星レベル10~

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【お帰りなさいませ、の先に】

※挿絵はAIイラストを使用しています

「お帰りなさいませ、お嬢様」


 静かに一礼したピカルは、柔らかく微笑んだ。

 エプロンの結び目を確かめながら、ピカルは入口に立つお客様を迎え入れた。


 今日は『地球文化体験』の一環として、執事喫茶のホールスタッフに挑戦している。

 コーギーちゃんから「地球にはね、お客さんを主人公にしてくれるお店があるんだよ」と聞いたとき、ピカルはしばらく黙って「……そうか」とだけ返したが、当日の朝には接客マナーと紅茶の基礎知識をひととおり頭に入れてきていた。


(事前に学習した通り……まずは安心感を)


 椅子を引き、紅茶を注ぐ。

 温度、角度、香りの立ち方——すべて学習し、計算した上での所作である。

 無駄な動きを省いて、必要なことだけを、必要なタイミングで。

 それがピカルの考える「丁寧さ」だった。


「本日は少しお疲れのご様子ですね。よろしければこちらのブレンドを。心を穏やかに整える香りです」


 押しつけがましくなく、自然に寄り添う一言。

 学習した通りの文言だったが、声に出してみると思ったより自然だった。

 お客様の緊張した表情が、ほどけていくのがわかった。

 その変化を、ピカルは静かに観察した。

 言葉が人の表情を変える。

 知識としては知っていた。

 けれど目の前でそれが起きるのを見るのは、また少し違う感触だった。


挿絵(By みてみん)


 その後も何組かを接客した。

 緊張を隠せないお客様、慣れた様子で楽しんでいるお客様、友人同士でくすくす笑いながら入ってくるお客様。

 それぞれに違う間合いがあって、同じ言葉でも届き方が変わる。

 ピカルはそのたびに少しずつ調整した。

 計算、というより——読む、という感覚に近かった。


「……また、あの人に会いに来たいな」


 店を出る頃、小さな声が聞こえた。

 お客様の連れの方が、連れにそっと言った言葉だった。

 ピカルはわずかに目を伏せた。


(おもてなしとは……技術じゃなく、信頼の積み重ねなんだな)


 また来たいと思わせること。

 それは、紅茶の温度でも、椅子の引き方でもない。

 その人が「ここにいていい」と感じた瞬間の、積み重ねなのだと思った。


「次のご帰宅も、心よりお待ちしております」


 その微笑みは、最初より少しだけ余分な力が抜けていた。


_________________


 帰宅すると、キララが玄関で出迎えた。


「おかえり! どうだった!? 執事喫茶!」


「……疲れた」


「それだけ!?」


 ピカルは靴を脱ぎながら、少し考えてから続けた。


「思っていたより、難しかった」


 キララが目を輝かせる。

 ピカルが「難しかった」と言うのは珍しいからだ。


「どのへんが?」


 テーブルに向かい合って座ると、キララがお茶を出してくれた。

 ピカルはそれを一口飲んでから、言葉を選んだ。


「技術は、事前に準備できる。所作も、言葉も。でも……相手がどう受け取るかは、その場で読まないといけない」


「うんうん」


「同じ言葉でも、届く人と届かない人がいた。タイミングが少しずれると、ただの言葉になる」


 キララは頷きながら、膝を抱えた。


「それって、メイド喫茶のときも思った。『萌え萌えきゅん』も、言い方ひとつで全然違うもんね」


「……お前のほうが、そういうのは得意なんだろうな」


「え、褒めてる?」


「事実を言っている」


 キララがくすくす笑った。

 ピカルはお茶をもう一口飲んだ。


「帰り際に、お客さんが小声で言ってたんだ。また来たい、って」


「わあ」


「自分に言ったわけじゃない。連れの人に、だ。でも……聞こえた」


 キララはしばらく黙って、それからにっこりした。


「それ、すごくよかったじゃん」


「……まあ、な」


 ピカルは視線を逸らした。

 窓の外、夕暮れの空が橙色に染まっている。

 また来たい、という言葉が、まだ耳の端に残っていた。

 計算して引き出した言葉ではなく、誰かの本音が自然にこぼれた声。

 あれは、技術では作れないものだと思った。


「次があったら、もう少しうまくできる気がする」


「また行くの?」


「……どうだろうな」


 でも、その言葉は思ったより嘘ではなかった。

参加者リクエスト:ピカルに執事喫茶体験


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