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Project Alpheos(プロジェクト・アルフィオス) ~あなたのリクエストで星の未来を取り戻せ~  作者: だしのもと
Project Alpheos 体験ミニストーリー(星レベル10~

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【萌えってなぁに?】

※挿絵はAIイラストを使用しています

「いらっしゃいませっ、ご主人さまー!」


 少し高すぎた声に、自分でびっくりしてキララは瞬きをした。

 けれど目の前のお客さんが笑ってくれて、ほっと胸をなでおろす。


(これが……メイド喫茶……!)


 フリルのエプロンの端をぎゅっと握りしめる。

『おもてなし文化』というものは、思っていたよりずっと体当たりだ。

 コーギーちゃんから「地球にはね、お客さんを家族みたいに迎えるお店があるんだよ」と聞いたとき、なんとなく想像はしていた。

 けれど実際にフリルのついたエプロンを身につけて、見知らぬ人の前に立ってみると、全身がじわじわと沸騰しそうになる。


「ケチャップで、メイドさんの魔法をお願いします!」


「ま、魔法……?」


 一瞬固まる。

 チラリと隣を盗み見ると、先輩メイドがお皿に向かってにっこり笑いながら言っていた。


「おいしくなーれ、萌え萌えきゅんっ!」


(……なるほど、そういうことか)


 キララは小さく息を吸って、覚悟を決めた。


「おいしくなーれ、萌え萌えきゅんっ!」


挿絵(By みてみん)


 両手でハートを作り、笑顔で言い切った瞬間、顔に熱が集まる。


(さ、さすがに恥ずかしいかもしれない!)


 でもお客さんからは——


「お、元気でいいね!」


 その一言に、胸の奥がふわっと軽くなった。


(そっか。これも、誰かを元気にする力なんだ)


「またのご帰宅、お待ちしてますっ!」


 笑顔で見送って、ひと息ついたところで、キララはふと首を傾けた。


(……それにしても、『もえ』ってなんだろう?)


 地球にはまだまだ、知らない言葉がたくさんある。


_________________


 シフトを終えて帰宅すると、ピカルがソファで本を読んでいた。


「おかえり」


「ただいまー!」


 キララはエプロンを畳みながら、勢いよく隣に腰を下ろした。


 ピカルが本から目を上げる。


「どうだった」


「たのしかった! 最初すごく緊張したけど、お客さんが笑ってくれて……あ、でも」


 キララは少し考えるような顔をして、ピカルのほうに向き直った。


「ねえ、『萌え』ってなに?」


 ピカルの手が、ぴたりと止まった。


「……萌え?」


「お店でね、『萌え萌えきゅん』って言うんだけど、意味がよくわからなくて」


 ピカルはゆっくり本を閉じた。

 閉じてから、表紙を見つめた。

 何かを慎重に選んでいるような間があった。


「……感情の一種だろう」


「どんな?」


「かわいいとか、守りたいとか……その、複合的な」


「ふくごうてき」


「いくつかの気持ちが重なってる、ってこと」


 キララは「ふーん」と言って、膝を抱えた。


「じゃあ、アルフィオスにはない言葉?」


「……概念としては、近いものはあるかもしれない。でも地球のそれとは少し違う気がする」


「どう違うの?」


「こっちのは、もっと……」


 ピカルはまた少し黙った。

 窓の外、夕暮れの光が部屋の端を橙色に染めていた。


「愛でる対象が、自分より遠くにある感じがする。手が届かないものに対して、それでも大切に思う、みたいな」


 キララはしばらくそれを噛みしめた。


「じゃあ、お客さんが私に向かって『元気でいいね』って言ってくれたのも、ちょっとそれに近い?」


「……どうだろうな」


(……お兄ちゃんにも、萌えってあるのかな)


 キララはそれを口には出さなかった。

 なんとなく、聞かないほうがいい気がした。

 その代わり、キララはピカルのほうに向き直り、両手でハートを作った。


「お兄ちゃんへ、萌え萌えきゅんっ!」


 ウィンクつきで言い切ると、ピカルが固まった。

 一拍おいて、耳の先がじわりと赤くなった。


「……急になんなんだよ」


「萌えについての練習! お兄ちゃんにLOVEを込めて♡」


「……そうか」


 ピカルはそっぽを向いて本を開いた。

 でも、ページはしばらく動かなかった。


(あ)


 キララはその横顔を見て、胸のあたりがふわっとした。

 さっきお客さんに向けられた「元気でいいね」の感触とは、少し違う。

 もっと近くて、あたたかくて、なんだかそっとしておきたいような。


(……これが、萌えかもしれない)


 地球の言葉は、使ってみてはじめてわかることがある。

参加者リクエスト:キララにメイドカフェ体験


お読みくださりありがとうございます!

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リクエスト企画の方は不定期で参加者様を募集してます。

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