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いつか神殺しのアマデウス  作者: 焼き29GP
第一部 王国の動乱
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一章〜非望〜 六百六十二話 その身に流れる血の濃さ

 正直なところ、アレルはアリシアがラーパの素行(そこう)の悪い感じに(おび)えているのかと思っていた。しかし、実際にその表情を見ると(おび)えは感じられず、どこか警戒している感じが強く感じられる表情をしている。

 ただ、それをアレルがアリシアへ(たず)ねようとした所、それよりも先にアレルはドノヴァンに訊ねられてしまう。


「そっちのアンタは、ラーパを見てどう思ったんじゃ?」


「は? ······正直に言うなら、雪(うさぎ)みたいな見た目をしているなとは思ったが?」


 その返答に、ドノヴァンは諦めたみたいなため息を吐き、隣にいるアリシアからは(とが)めるみたいな視線を向けられてしまう。そんな反応に、アレルは頭の上に疑問符を浮かべてしまうも、直ぐに何かを諦めた様子のドノヴァンがアレルへ語り始める。


「まあ、隠してもおらんかったからの。ただ、そっちのお嬢さんは気付いていたみたいじゃから、一度は説明せんと信用に関わるじゃろうて仕方ないから話してやるわい」


「あの······私は、そんなつもりでは······」


 だが、アリシアは何かを察しているみたいにドノヴァンの話を止めようとするも、ドノヴァンはそんなアリシアへ首を左右に振る。


「別に、気遣いなんて()らんよ。そっちの、お嬢さんが頼りしとる(あん)ちゃんからは偏見を持っとる奴特有の気配が全くせんからな。······まあ、まずは(わし)の事を話すと、見た目には判らんと思うが(わし)には四分の一だけドワーフの血が流れておるんじゃ」


「四分の一?」


 アレルが()き返すと、ドノヴァンはウムと力強く(うなず)く。


「祖父がドワーフでな、母がその娘だったんじゃ。その母が生きとった頃は、丁度亜人戦争の只中(ただなか)でな······亜人の血が入っとるってだけで迫害されたもんじゃ」


「なあ、話の腰を折るみたいで悪いんだけど、ドノヴァンって何歳(いくつ)なんだ?」


 亜人戦争の終結が百年前、それも海魔なる魔物が海の往来(おうらい)を不可能にした為による事だとアレルは教えられている。その亜人戦争の只中(ただなか)で生きていたなら、ドノヴァンはどう考えても百歳を超えていなければおかしい。

 そんなアレルの疑問に、ドノヴァンはその顔の(しわ)を更に深くして笑う。


「ファッファッファッ、確かに何も知らなそうなお前さんには、(わし)何歳(いくつ)か気になるんじゃろうな。今の(わし)は、確か百三十歳ぐらいだったはずじゃ。母が、随分(ずいぶん)長生きした方で二百年くらい生きとったからな、(わし)はあと二十年は生きるじゃろ」


 ドノヴァンがそうしてニカッと笑うと、アリシアがアレルへこっそり耳打ちしてくる。


「······ドワーフの寿命って、大体(だいたい)二百年から三百年くらいだって言われているの。だから、混血で二百年なら凄い長生きした人だと思う」


 その説明に、少し前にエルフのイスマイールについて話を聞いた際、エルフでも二千年なんて無理だとアレルは聞いていた。ただ、それも普通(・・・)と付いていたのでハイエルフでなくとも、もしかしたら千年ぐらいの寿命に百年二百年単位での個人差があるのかもしれないとアレルは考える。

 しかし、ドノヴァンにドワーフの血が入ってると聞いたアレルは、瑠璃からの言葉にようやく合点(がてん)がいく。


「なあ、もしかして俺のもう一人の連れに気付いたのも、ドワーフの血が関係しているのか?」


「そうじゃな、お前さんが連れているのが妖精の(たぐい)なら、全くの無関係とは言えんじゃろうな。なんせ、ドワーフもエルフも亜人の中で妖精族と呼ばれる者じゃからの」


 すると、ドノヴァンにそこまで言わせて姿を見せないのも失礼だと思ったのか、瑠璃がフードの中から出て来てドノヴァンへ頭を下げるみたいに上下に浮遊する。


「ほう······夜光蝶(やこうちょう)か。ヒト族に(なつ)くとは、長生きすると珍しい光景に出会(でくわ)すもんじゃな」


「俺にとって、家族みたいな存在でもあり頼りになる相棒だよ」


 アレルがそう言うと、瑠璃はどこか照れた様に身体を左右に振りながらアレルの肩へと止まる。そんなアレル達を見て、何故かドノヴァンは優しげな目をしながらも家族かと小さく(つぶや)く。


「どうかしたのか?」


「いや······(わし)にも、一応そういう者がおるんじゃがな、お前さん等の様な関係ではなくてな······さっきも、クソジジイなどと言われてしもうた」


「えっ? でも、先程の(かた)は······その······」


 ドノヴァンの言葉に、その家族とはラーパの事だと判るのだが、そのラーパに関して何かに気付いている様子のアリシアが言葉を詰まらせる。そんなアリシアに、気を遣わせまいとドノヴァンは一度(うなず)いてからアリシアが詰まらせた言葉を引き継ぐ。


「そう、お嬢さんが察している通り、ラーパは獣族の子供なんじゃよ」


「いやいや、獣族って亜人戦争の時にほとんどの同族を引き連れて帰ったって聞いた覚えがあるんだが?」


 そこで、アレルが自身の聞いた話との食い違いを指摘するも、ドノヴァンは瞑目(めいもく)しつつ首を左右に振り、アレルに身体を寄せるアリシアは顔を下に向けてしまう。


「それは、あくまで純血種だけの話じゃよ。まあ、気分の悪い話は割愛(かつあい)するが、奴隷(どれい)として(しいた)げられていた者の中にはヒト族との子供を産んだ者もいた。そうした、混血の獣族に関してはこちらの大陸に残された者も少なくないんじゃよ」


 それを聞いたアレルは、ドノヴァンが話さなかった部分を想像して軽い怒りの様な感情を覚える。

 奴隷(どれい)使役(しえき)する者とは、大抵は身分の高い者がほとんどだ。つまり、獣族の他にも奴隷(どれい)使役(しえき)していてもおかしくはない。そこから考えられるのは、獣族とヒト族の奴隷(どれい)同士を見世物にしたのか、もしくは自らで(もてあそ)んだのかどちらかが混血の生まれた理由だろう。

 そう考えるアレルは、そんな話アリシアでは知っていても話す事に躊躇(ためら)いを感じるだろうと、アリシアが自身に話さなかった理由を悟る。


「ただ、そんな状況でも救いだったのは、混血が大分(だいぶ)ヒト族に近い姿だった事じゃろうな。じゃから、中には本気で混血を愛するヒト族もいての、そういう者達から生まれたのがラーパじゃ。混血とヒト族の両親、つまり(わし)と同じ四分の一だけ獣族の血が入っとるから他人とは思えんでな······それで、丁度ラーパを見つけた頃に同じく帝国人のガキを拾ったベンノに相談したりして、ラーパを引き取る事を決めたんじゃよ」


 帝国人のガキ──ミゲルを拾った宿の主人とは、そんな(つな)がりもあったのかとアレルは思う。しかし、話の中で一つだけ疑問が浮かんだのだが、それをドノヴァンへ(たず)ねるのは流石(さすが)に気が引けるなとアレルは感じる。

 すると、そこへ肩に止まる瑠璃がアレルのそんな気配を感じたのか声を掛けてくる。


 ──主様、どうかされましたか?


(あっ、いや······今の話、ドノヴァンはよく見た目だけで血の濃さまで判ったなと思ってさ)


 アレルは、話し掛けてくれた瑠璃に精神感知で(こた)える。


 ──それに関してなら、ルリがお答え出来ますよ。主様と出会う前のルリは、他の大陸等にも行っていたので獣族と呼ばれる方達も見掛けた事があるんです。その際に、混血と呼ばれる方達も目にしたのですが、純血との違いがハッキリと見た目に表れているんです。


(そうなのか?)


 ──はい、そちらの方が言われた純血種という獣族の方達は、そうですね······主様に解りやすく言うのであれば、二足歩行の獣といった容姿をされています。これが、ヒト族との混血となるとヒトの身体の一部に獣の要素が表れている感じで、見た目が身体の一部に毛皮を被ったヒト族という感じになります。そして、その特徴が表れるのが丁度身体全体の半分だったはずなので、その血が四分の一ならば獣の特徴もその程度しか表れていないのだと思います。


(そうか······ありがとな、瑠璃)


 ──いえいえ。


 そんな瑠璃の説明から、アレルは先程この場に姿を見せたラーパの容姿を思い出す。

 言われてみれば、ラーパは確かに雪(うさぎ)の様な印象を抱く容姿をしていたが、多少アルビノ傾向があるだけと言われれば納得出来る範囲ではあるとアレルは思った。ただ、その見た目から混血の親は(うさぎ)系の獣族の血を引いていたんだろうなと考えてしまうのであった。



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