第9話:藤と春と展望台
こんばんは、前話の続きです。ではでは。
「暑いよ〜!暑くて死にそ〜だよ〜」
春が屋上で騒いだ。さっき無理矢理生徒会室から引っ張ってきたのでかなりご機嫌ナナメだ。
「…暑いな」
しかし暑いのに騒がれると腹が立つものだ。
「藤ちゃんに襲われた〜、もうお嫁にいけな〜い!」
屋上でナニイッテンダコイツ!
「わかった!ジュース買ってやるから静かにしろ!」
この高校は屋上にジュースの自動販売機が置いてある、結構珍しい高校だと思う。
「ありがと藤ちゃん!あ、ペットボトルね!」
図々しい奴だ。月末は金がないのに…
「缶に決まってるだろ…」
「藤ちゃんが私の胸を…!」
「わ〜わかった!ペットボトルな!」
「ありがと藤ちゃん☆」
明日の弁当はおにぎり一個に決定だな。育ち盛りの高校生にはちょっと少ない。
ちなみに絶対に胸は触ってない。負けるな僕…。
「で、なんでここに呼んだの?もしかして…」
急に頬を赤らめる春、なんなんだろうか?
「藤ちゃん…私まだ心の準備が出来てないんだけど…?」
わけのわからない妄想に入っているようだ。
「春…?」
「藤ちゃんの気持ちは嬉しいけどやっぱり恥ずかしいよ☆」
「もしも〜し?」
完璧に妄想モードに入っている。これが妄想族か。非常に厄介だ、僕の話なんか全然聞こえてない。
「はぁ…ダメだな、ありゃ」
とりあえず放っておく。あの状態では当分戻ってこないだろ。むしろ周りが見えていない分、僕にも無害だ。今は人がいないから止める必要もない。
とりあえずベンチに座った。春はまだ妄想をしているようだ。かなりの演技力だ、女優になれるな、ほんとに。
「…藤ちゃん、私も…ってあれ?」
「終わったか?」
あれから10分経過していた。それだけ妄想の中に入れるなら志願書に特技として書けるだろう。
「私…あれ?おかしいな、熱いハグをしているはずなんだけど?」
「暑い時にハンバーガーが食いたいのか?」
「ん〜、まぁ食べたいけど…まぁいいか!」
そういって展望台に登る、この学校の一番の名物だ。
「風が気持ちいいね〜、これなら涼しいや!」
風が春の髪をなびかせる。
僕はベンチから春を見ていた。
懐かしいな、と思った。ここは初めて春と出会った場所だ。あの時も僕はベンチに座っていた。
春と僕は出会って1年くらいになるだろうか…、まだ世界がヒマでつまらないものだと思っていた頃だった…。
後編(の前編)みたいになってしまいました。まだ続きます。ちょっと昔話になりますので幕間に近いものです。ちなみに幕間と本編の差はありませんので(一応自分なりの基準はありますが)、すいません。楽しみに待っていただけたら幸いです。




