第4話:春と藤と住宅街
おはようございます。
歩くスピードが遅い2人なんでゆっくりと見守ってください。
4月下旬の朝9時半。待ち合わせ場所から15分程歩いたとこの閑静な住宅街にいる。
天気は晴れ、春の陽気と少し冷たさが残る風は心地良い気分にさせてくれる。
春との買い物を終えたら高校行こうとしていた僕は未だに制服を着ている。こんなにいい天気なのに制服を着てきたのがバカらしい。
とりあえず…
「腕が重い」
左腕に鉄アレイがくっついてる、いや締めあげられているに近い、気分的に。
「どうしたの?」
まるで何もしていないかのように聞いてくる春。
「腕を絡むな、腕を」
「なんで?」
「なんでもだ。」
「え〜なんでよ?」
「…。」
「あ〜、もしかして!」
ニヤニヤしながらこちらを見ている。
「やだぁ恥ずかしいの?藤ちゃんってばお子ちゃまなんだから〜」
クククとバカにした笑い方をしながお〜子ちゃま!お〜子ちゃま!と連呼し続ける春。
「いやぁ、ただ10キロ鉄アレイ×6が左腕に逆関節を決めていて腕が折れそうなだけなんだ、ハハハハハハハハハ…」
負けっぱなしは性に合わない。基本的には負けず嫌いなのだ。
「そうなんだ、アハハハハハハ…じゃ・あ・しょ・う・が・な・い・よ・ねぇ〜!!!」
ミチミチミチミチィィィッ!!
「ギャアアアアアァッ!!」
住宅街に関わらず奇声を発してしまう。
美しいまでに決まる関節技、簡単に言うと痴漢を捕まえる時に後ろ手にされてしまうアレだ。今はそれを少し人間の可動領域を越えてるだけだ。そんな解説を言えてしまうくらいうまく決まっている。
「誰が鉄アレイ×6よっ!そんなに重いわけないじゃないっ!!」
「はいっ、すいませんっ!言い過ぎました!鉄アレイ×5でした!」
「まだ重〜い!!」
更にミチミチと鳴る僕の関節、しかしあと少し可動領域から外れた動きをすればショッピングから確実に病院行きに変更だ。学校サボっている状態でそれだけは避けたい。
「はっ、はるっ!やめろ…それ以上は…今日中止になるぞっ!」
春が聞こえない状態になっていないことを祈りながら必死に言った。
「えっ、あっ、ごっごめん!藤ちゃん大丈夫!?」
パッと腕を放した。関節はギリギリのところで生き延びたようだ。
「なんとかな…お前は早く力加減というものを覚えた方がいいぞ、そのうち誰かの腕が無くなる可能性があるからな」
ほとんどの確率で僕なのは間違いないだろうけど…。
「き、気をつけます…ゴメンね、藤ちゃん。」
「…ああ。」
こういうときに上目遣いで言うのは卑怯だ。痛む腕のことなんて吹っ飛ぶくらいの攻撃力を持っている。何かが見えそうで目のやり場に困ってしまう。ええぃ、気にしたら負けだ。
僕らは再び歩き出した。
「…」
「……」
「…」
「……」
「…ほれ」
と腕を少しだけ差し出す。
「藤ちゃん?」
「いらないのか?」
「いるっ!!」
春の声が静けさを取り戻した住宅街にこだまする…。
本当に嬉しそうに笑う奴だ。
そろそろ目的地につきます。
皆さんは住宅街では静かにしましょう。
では失礼します。




