第12話:藤と春と一時のチャンス。
お久しぶりです。長いですが読んでくれれば幸いです。
5月初旬、俗に言うGW…の2日目だ。
高校も会社も昨日から休みでみんな元気に遊んでるのだろう、実際に両親は紙に一言「下呂温泉に行ってきます!」と書き残していなくなっていた、たぶん一昨日の夜に出掛けたんだろう。両親が仲がいいことは良いことだ。
そんな両親の息子である僕は自分の部屋でクーラーをガンガンきかせて熱いコーヒーを飲みつつ、本を読みながらテレビを観ている。何か矛盾しているようだが実は違う、これは美しい公式によって成り立っている行動なのだ。何故なら…
「クーラーつけながら温かい飲み物は邪道だよ?」
何故か部屋の中で日傘をさしている春。
「人がせっかく公式の説明をしようとしたのに…って何故お前がここにいる?」
「藤ちゃんどうせ暇してると思ったから遊びに来ましたぁ!」
テッカテカの太陽のような笑顔で言った。
「暇じゃないから帰って下さい。」
何故か敬語で答えてしまった。
「ゴールデンウィークに家でゴロ寝しながら本読んでるヒッキーが暇じゃないならなんて言うの☆」
「ヒッキーじゃないです。帰って下さい、警察呼びますよ?」
「いいもん、そうしたら無理矢理部屋に連れ込まれたって言うもん!証拠に日傘が部屋にあるって言うもん!」
コイツ計算済みか。
「で何のようだ?」
「どっか行こうかなって!1人じゃ寂しいし、藤ちゃんどうせ暇してると思ったから☆」
「それで不法侵入か。」
「やだなぁ!ちゃんとインターホン押したよ!?」
「勘違いするなよ、インターホン押したからって入っていい訳じゃな…」
「ノド乾いちゃった!藤ちゃんジュースちょうだい!」
またコイツ人の話を聞いてない!
「お前人の話を聞いて…」
「ジュースちょうだい!ジュースちょうだい!ちょうだい!ちょうだい!ちょうだ〜い♪」
毎回、コイツいい加減に…。
「ちょっと待ってろ、キンキンに冷えた青汁持ってきてやるから」
立ち上がりながら言う僕。
「なんで青汁なのっ!」
「英語で書けばブルージュースになるじゃん」
「青汁はいらないって言ってるのっ!」
「贅沢言うなよ、これが一番健康的なんだぞ、意外と高いしな。」
「……藤ちゃんのバカッ!もう知らないっ!!」
そう言ってベットに乗り、壁を向いて丸くなってしまった、ちょっと言い過ぎたか、というか俺のベット…。
「わかったよ、なんか持ってくるから待ってろ」
と言って一階に降りた、途中「…やったぁ作戦大成功!」と聞こえたような気がしたが気のせいだろう。
キッチンに行き、冷蔵庫を覗いてみてもあるのは麦茶と野菜ジュースと青汁、是非野菜ジュースを持っていきたいところだが何をしでかすかわからない以上麦茶が無難だろう。
そんなことを考えていたら思いのほか時間がたっていることに気がついた。麦茶とお茶菓子を持ってさっさと部屋に戻る。
「持ってきた…ぞ?」
そこにはさっきまで騒いでいた女の子が静かに横になっていた、つか…寝てるし。
「どうやったら他人の家で寝れるんだ、それも数分で…。幼稚園児かよ?」
とイヤミを言いながら麦茶とお茶菓子を勉強机に置き、イスに座る。
「…ムニャムニャ…うる…さい…藤ちゃ…」
「聞こえてるのか?…ったく、無防備な奴…って!」
今更ながら気付く、今この家には僕と春しかおらず、しかも春は今ベットで寝ている。これは…チャンスなのか!?いやチャンスってなんだ!?相手は寝てるんだぞ、犯罪だ!いやいや健全な男子高校生なら…いやいやいやダメだダメだ!しかししかししかし…。
自問自答を繰り返している時も春はスゥスゥと寝息をたてている。
白いロングワンピを着ている春は眠り姫のようだ。
「…ん」
と言いながら向こう側を向いていた春が寝返りをうって仰向けになる。さっきまで顔が見えなかったが今は気持ちよさそうな寝顔が見える。
「…。」
イカンイカン、何を考えているんだ僕は!
「よ、よし…とりあえず勉強を…」
必死に煩悩を理性で抑え込む…が、
「…ん、藤……」
…………負けた。
男の理性はあってないようなものだと初めてわかった。
僕はゆっくりと…少しずつベットに近付く。
…ベットの前…
…僕は春を覗き込む、もうあと少しで当たるくらいまで近付く。
…おかしい、強制終了イベントが起こらない。普通、親が帰ってくるか、春が起きるなりの何かイベントが起こるはずなのだが…。
再度顔を覗き込む。
まずい、このままだと本当に…。
「…やめた。」
覗いていた顔を上げ、イスに戻る。
「まだ何にも…始まってもないのに寝ている間になんて…なぁ小春さん?」
と春に向かって話す、当然返事はないが。
「ったく!このチキン野郎!」
ガバッとクローゼットが開き、タンクトップの男が罵倒しながら出て来た。
「ゴールはもうすぐだったのに、それも初ゴール!お前それでも男かよっ、この軟弱者めっ!」
「…?」
いきなり胸ぐらを掴まれて言いたい放題言っている。
「おい、聞いてるのか!?このチキンやろ…ぐふぉぉぁ!?」
右フックがきれいに決まる。
「何をしているんだ秋雨?いやなぜ居るんだ?しかもクローゼットなんかに?どうやって入った?言わないと殴るぞ?」
「もう殴ってるし、痛ぇよ!なにしやがる!?」
「それはこっちのセリフだよ?」
と言いながらもう一発ジョー(アゴ)に右フックを決めた。
「ぐふぁッ…マジ切れかよっ…ぼ、暴力反対はんた〜い!」
あんな場面覗かれたら誰だって怒る。
「もう一度言う、なぜ居るんだ?どうやって入ったんだ?」
「俺は今日春にお前の家で生徒会のミーティングをするから来いって言われたんだよ!そんでお前が一階でなんかやってるときに普通に玄関から入ったんだよ!」
「不法侵入するな。」
と今度は左フックでテンプル(こめかみ)を打ち抜く。
「…ブラック藤の力…恐るべし…ガハッ……。」
とりあえず動かなくなったので良しとしよう。
間髪入れずにガチャっとドアが開く。
「お茶菓子の追加です、どうぞ」
礼儀正しく紅葉が入ってくる。
「…どうも」
この家の防犯対策はどうなっているんだ?玄関のカギはしめてあるはずだよな?
「…さて、ミーティングしますか」
何事もなかったのように始める紅葉、伊達に会長やっているわけじゃない。この状態を放っておくのはどうかと思うが。
とりあえず喉が乾いたので自分で持ってきた麦茶を飲む。
「ああ…そうだ。」
思い出したようにつぶやく紅葉。
「どうした?」
「相手が寝てる間にキスぐらいは…いいんじゃないか?」
「ブハッ!…ゴホッゴホッゴホッ…!お前もかっ!」
麦茶を吹き出してしまった(動かない秋雨に向かって)
「うわっ汚いな、忍耐が足りないんじゃない?」
「ゴホッ、うるさいっ」
小声で反論した。
「あ、あそこで我慢したから忍耐はあるよね?」
「だぁ〜!も〜!うるさいっ、言うな!」
恥ずかしくなって声を荒げた。
「ん…ムニャ…だ…から…うる…さ…い…藤ちゃ…ん…」
ベットでは眠り姫が何事もないかのように静かに寝ていた…。
まるまる1週間かかってしまいました、次からはもうちょっと短めにしてちょこちょこ更新できたらと思います。




