石凝 尊
折角、連休なので。
予定前倒しでいきます。
石凝尊はギャルである。
ただのギャルではない。黒ギャルである。
世界最後の黒ギャルかもしれない。
エラー、バグ、珍獣。
無駄を嫌う、ミニマライズしていく世界で22歳までに石凝尊が受けて来た扱いだった。
だが、石凝尊は骨の髄からギャルだった。
持ち前の「不屈」と「ハイパーポジティブ」はその嘲笑すら栄養にした。
そのサイクルは技能選択制度と完全に噛み合い、わずか4年で彼女を最強の戦士へと成長させた。
石凝尊は強さを欲した。
格闘技能の習得は最もシンプルだった。
「千の修行持って鍛とし、万の修行を持って錬とする。」
つまり一万回の修行をすれば良かったのだ。
1時間の修練を一回とみなし、一日10時間の修行をもって10回分。
これを1,000日。つまり2年9ヶ月だ。
それを彼女はやってのけた。
その頃には彼女を笑うものはいなかった。
嘲笑は畏怖へと変わった。
彼女はその畏怖を栄養にし、更に飛躍をつづける。
狙撃技術4 格闘技術5運転技術4 生産技術4 修理技術4
石凝尊は紛れもない天才であった。
そして天才の多くは退屈という怪物と戦わなくてはならない。
だが幸運にも石凝尊はその怪物と戦わずに済んだ。
新たな天才の出現である。
格闘技能の教官となった石凝尊は強面のアバターを用意した。
教官といえど主な仕事は監視である。
AIの指示に従い、修行とみなされる練習をしているか、できているか、それを見張っていれば良いのだ。
そして、ついに、ある日。
少年は現れた。
その少年はかつての自分と同じ様に一日10時間の道を選んだ。
かわいいものだ、と石凝尊は笑った。
どれほど過酷かも知らずに、と。
挫けた時の励ましの言葉すら用意していた。
1ヶ月。
少年はめげない。
遅刻や忘れ物がたまにあるがやる気がないわけではないようだ。
3ヶ月。
少年はめげない。
もうすぐ鍛の時期が終わる。初心者脱却である。
半年。
少年はめげない。
異変に気づく。
疲れ衰えるどころか日に日に動きが良くなっていく。
助言の通りに修正をするのも人一倍早い。
指導に熱が入る。
1年。
AIが異変を起こす。30分の修行で一回とカウントされるようになったのだ。
その直向きさにか、その迫力にか。何度確かめてもシステムに異常は無かった。
これが正当な評価なのだ。
1年半。
錬の修行が4分の3に届く。
およそ7000回相当の修行を一日と休む事なく。
狂人のそれだ。
なんでそんなに頑張る?
石凝尊はある日たまらず口にした。
自分の事を棚上げして。
両親が死んじゃったから、俺が家族を守らなきゃいけないんです。
なんの屈託もなく少年は言った。
なんの気負いも見せず、淡々と、それが空気を吸うのと同じくらい当たり前のことの様に。
そして少年は石凝尊の愛弟子となった。
名を芳村 恒星と言った。




