太陽と月
「ーーー見ろよヨイチ。月に輪ができてる。まるでヘイローだ」
宵一の乗る人型のAutomatic Life Guard Machine(ALGM)通称「荒神」が、恒星を見上げる。
獲物を見つけた狩人の様に。
左目の華がノイズに揺れる。
気を紛らわす様に恒星は月を見上げた。
土星の輪の様な月の衛星は、確かに天使の輪ヘイローに見える。
「たくさん殺した。たくさんたくさんたくさんたくさん殺した!!だって!!アレが増えたら!俺は誰も守れなくなる!!
だから殺したのに!!
なのになんで!!」
「物事には常に二面性がある」
「オヤジの小言はもううんざりだ!俺はこの世界を許さない!俺は人間を許さない!!こいつらも、月のアイツらも何も変わらない!プログラム通りにしか動けない肉の塊じゃないか!!」
芳村 恒星は叫んだ。
全てに絶望していた。
何のために。何のために。何のために。
狼を模した荒神「アマテラス」と対峙するのは装甲の薄い人型の荒神「ツクヨミ」。
操るものの名は芳村 宵一と言った。
無尽蔵に怒りを撒き散らす男、芳村 恒星の弟である。
「兄さん、もうやめよう!僕と一緒に帰ろう!」
「帰る・・・?どこに?今は戦争中だぜ?
全部忘れて生きろってのかヨイチ・・。お前だって!!」
ーーーオマエダッテ、華ノ兄貴ジャナイノカ。
「見てられないんだ!父さんだって、母さんだって・・・・・そんな兄さん見たくないよ!!」
「うるさいっ!うるさいうるさいうるさいうるさい!!」
「どこまで殺すつもりなんだ!!何人殺すつもりなんだ!!僕達が戦ったのは、犠牲を払うのは僕達で最後にする為じゃなかったのかよ!」
「この世界に守る価値なんてない!!等しく無価値なら払うべき犠牲なんてない!!だから壊す!!過ちは正す!!」
「過ちを犯してるのは兄さんだ!!僕は必ず兄さんを止めてみせる!」
荒神「ツクヨミ」はその細身な機体とは不釣り合いな巨大なスナイパーライフルを構えた。
「長距離狙撃型のツクヨミで、近距離特化のアマテラスに勝てると思うのか?この距離で?」
恒星は苛立っていた。
どうせ宵一は何もしない。どうせ宵一は我慢する。
ならオマエの分も俺がやる。
止めるな。
何故呼び止めた。
何故攻撃しなかった。
今の俺が、本当に言葉でどうにかなると思ったのか?
戦わずにどうにかするつもりだったのか?
『やられたらやりかえす』
『大事なもんを守りたいなら戦え』
『身を守る為の力は知性だ』
亡き父の言葉を思い出す。
恒星はもう自分を止めれそうもなかった。
火山どころではない。
太陽のプロミネンスが全身を灼いているようだった。




