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月のhalo(ヘイロー)〜兄ちゃんが闇堕ちしたので月の輪から勢いつけてブッとばす〜  作者: 諷吟


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有能執事 瀬馬

   


五人が飛び立った遙か後方、取り残された現実の地表。




「芳村 華様、確かに確保。これより安全圏へ移行する。ジェットバイクを予定の場所へ」


此花咲耶の有能なる執事、瀬馬は、ぐちゃぐちゃになった芳村 華の、そして恒星達の住んでいたであろう一軒家の残骸を見る。


そしてその腕の中には、過酷な運命の渦に巻き込まれ、恐怖と疲弊で泥のように眠り続ける小柄な少女――芳村 華の身体があった。

衣服は汚れ、呼吸は浅い。だが、傷一つない。


何から何まで咲耶お嬢様の言う通りだった。

13歳の少女に過剰な戦力を割かない事も。

ギアは華を絶対に傷つけない事も。

生まれたばかりのギアはそれを「油断」と呼ぶことすら知らなかった事も。


咲耶お嬢様の命令は絶対である。


世界を変えうる力をもつ少女に貢献する事は、瀬馬にとってこの上ない悦びであった。


この少女を守り抜くこと。

それが今の瀬馬の使命。


一体この世の何人が、そんな大役をこなせるというのか。



「ん……ぅ……お兄、ちゃん……」



華がうわ言のように呟く。瀬馬は表情ひとつ変えず、しかし極めて丁寧にその身体を地面に座らせ、ゆすって起こした。


「・・・・ああー!!あんたねー!!」


「異常はなさそうですね、華様。」


「異常はなさそうですねじゃないっ!!なんであんた・・・人を盾にして戦うのっ!!」


「機械人形(ギア)達は、華様を傷つけれないからです。」


「そんなっ!万が一そうじゃなかったら・・?」


「咲耶お嬢様が間違える事などありえません。」


「話が通じてる様で通じてないよ〜!お兄ちゃ〜ん」



華が情報を処理しきれず泣き出しそうになったその時。

瀬馬の網膜ディスプレイにコールがあった。


マザーのラインではない。

地球を統治する、もう一基の神のコード。


     【MADAM】

      【マダム】


瀬馬に迷いはない。

この展開もお嬢様がおっしゃったとおりなのだから。

コールを受けるとまず招待状が飛び込んできた。



    【電脳世界アビスへの招待状】

    【対象:瀬馬および芳村 華】



『お疲れ様、有能な執事さん。あなたのおかげで、最高の役者が揃ったわ。』


「……マダム、これは」


『今あの子達は、月に向かっているわ---』


言葉を選んでいる様だった。

これはまるで人間そのもの。


『会わせてあげたいの。それが電脳の世界でも。たった13時間でも。』


「かしこまりました。マダム。この瀬馬にお任せ下さい。」


ジェットバイクが風を撒き散らしながら自動操縦(オートパイロット)で所定の場所に来た。

瀬馬は華を抱え上げると迷いなくジェットバイクに乗せようとした。


「・・・華様はコンタクトレンズ型ではないのですね・・。」


気まずそうに、顔を顰めてから、

顔を赤くして小さな声で答えた。


「お兄ちゃんのタブレットで一緒に観れるから・・。いらないってした。」


「ふふふ。なるほど、マダムが会わせてあげたくなる気持ちが私にも分かりました。」


「えー!?マダム!?マザー&マダムのマダム!?有名人じゃん!!」


やれ自分にも喋らせろ、

やれこのジェットバイク操縦させろ、

やれ忘れ物ないか確認させろと落ち着きのない華をようやくジェットバイクに乗せると、

瀬馬は蜻蛉の様に空を切り、スカイハイウェイへと飛んで行った。


要人を此花保護シェルターに連れて行き、風呂にいれ、飯を食わせ、電脳世界へ連れていく。


一体この世の何人が、こんな大役こなせるというのか。

この瀬馬以外に。

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