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月のhalo(ヘイロー)〜兄ちゃんが闇堕ちしたので月の輪から勢いつけてブッとばす〜  作者: 諷吟


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第三軌道エレベーター


【ORDER REJECTED】

【命令は拒絶されました】


「なんでですの!なんでですのよ!!」


IQ160の天才。荒神を造る者。常識を変えるもの。道を開くもの。

人より先んじているという事は、一足はやく壁にぶつかるという事だ。

より強いものが壁にぶつかる時、必然的にそれは壁と呼べる代物でなければない。

即ち、より高く。より硬く。より厚く。


【ORDER REJECTED】

【命令は拒絶されました】


これで7度目。


此花 咲耶の宝石の様な瞳は、光を反射する水面へと変わっていく。

いつもの勝ち気な彼女はいない。

そこにいるのは、どこにでもいるような「壁にぶつかる17歳の少女」だった。


「この私が・・・!この私が・・・!!」



そして時は遡る。

およそ二時間とすこし前に。






恒星達は疲れ切っていた。

肉体的にも精神的にも。


それも当然の話である。


最新鋭のパワードアーマーの試運転とはいえ、害獣駆除に手を抜く事はなかった。

機械人形(ギア)の襲来にも、切れた緊張の糸を結び直し、各機全力をもって抗う事を選んだ。


その果てが数千キロに及ぶ逃避行。

追っ手は諦める事を知らず、逃げ道はないに等しい。


リニアチューブで南に1時間半。


パプワニューギニア第三軌道エレベーターである。


パワードアーマー「荒神」から降りた五人、即ち芳村(よしむら) 恒星(こうせい)、芳村(よしむら) 宵一(よいち)、石凝(いしこり) 尊(みこと)、田中(たなか) 一郎(いちろう)そして此花(このはな) 咲耶(さくや)は、壁が剥がれ、ケーブルは剥き出し、錆びた鉄板があちこちに敷かれているボロボロのポートのど真ん中で座っていた。

視線は内側に集めながら、しかしバラバラに距離をとって。



五人は次の行動を決めあぐねていた。

此花 咲耶は言う。


「荒神のデータを取り返すべきですわ!!ギアとかいうあのアンドロイドには美的センスが感じられませんでしたわ!!あの程度のセンスの者に万が一荒神の模倣(コピー)でも造られたと思うと、それだけで腑煮えくりかえりますわ!!」


とても疲れ切っている人間の勢いではなかった。

それほどに荒神を愛し、それに比例して怒りは際限無く強くなる。


「そんなこと言ったってサクヤっち。そのデータがどこにあるかわかんなくね?あーしだってサクヤっちの味方したいけどさ〜」


体育座りした膝に顎を乗せ、石凝 尊は不機嫌そうに返す。

今回の一件は彼女にとって屈辱でしかなかった。

オーバーヒートしたとはいえ一撃200体の火力。

尊は心の中で嘆いてた。「ひょっとしてあーし、千体ぐらい倒せるくね?」と。


「おっさんの知る限りではギアは諦める事を知らない。今この時もこっちに向かって飛んでるんじゃないかな。」


「ゲ。アイツら飛べんのかよ」

「マッハ1だ。」


恒星の驚きに更に衝撃の事実を重ねる。


「ここで籠城戦したってなぁ。オヤジがよく言ってたぜ、『敵は選べ、勝てないと踏んだらすぐ逃げろ』って。」

「そのくせ『やられたら必ずやり返せ』だもんな。父さん結構無茶苦茶言う人だったよ」


恒星と宵一が顔を見合わせて苦笑する。


「恒星ちゃんとヨイッチが仲良いのはマジいい事だけどさ?これからあーしたちどうすりゃいいんだろね?詰み?詰んでる感じ?」


「私の完璧な計算によれば、ギアが私達に追いつくまであと2時間と30分ですわ!」


「どうにもならなくなったら、荒神渡して降参しちゃうっていうのは?おっさんが口きいてあげるよ?聞き入れてもらえるかは・・・わかんないけど。」


田中一郎(おっさん)ならできそう、と皆思った。

だがそれは、望む道ではなかった。


つのる閉塞感。プレッシャー。リニアチューブ酔い。疲れ。絶望。


その空気を打ち破ったのは、

意外にもディディであった。


『みんな聞いて下さい。プライベートラインで呼びかけがありました。』


「マザーじゃねぇのか?降参しろー、今なら命は保証してやるーとか懐柔する気なんじゃねーだろうな。」

「きっとそうだよ兄さん、それで騙して出てきた所を殺処分するんだよね。」


「ヨイッチ考え方エグくね!?そんな考えサラっとでちゃう系男子!?」


「静粛にッ!」


咲耶の一喝。

間違いなく強者達であるこの面子を一喝で鎮める威圧は流石である。


少し沈黙があった。

ディディは口にする代わりに全員のディスプレイにコール画面を見せる。

発信者はーーー


      -MADAM-

       -マダム-


とあった。

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