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月のhalo(ヘイロー)〜兄ちゃんが闇堕ちしたので月の輪から勢いつけてブッとばす〜  作者: 諷吟


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顕現

破壊音、破裂音、雷の様な轟音、嵐の様な荒れ狂う戦場の音という音は、熊のヌシが地響きをたてて倒れた音を最後に静寂と化した。


全機体に撃破を目認した恒星から連絡が入る。


『ーーこちらアマテラス。目標の撃破を確認。これより撤収する。』


余程感極まったのだろう、間髪いれず次の言葉が漏れ出た。


『一回言ってみたかったんだ、コレっ!』


あーーーー。


全機からため息に似た落胆がアマテラス機に返ってくる。


『兄さん、そういう事は言わなくていいんだ。いや、寧ろ言わない方がカッコいいんだ。父さんも言ってたけど兄さんは昔から詰めが甘いんだ』


『ないわー。センスないわー。神連携でアガッたバイブス台無しだわー。ぴえんこえてぱおんこえてガチ泣ける』


『神連携といえば私の神コンボ、しっかりとデータに残してありまして!?ヒップアタックからの二連撃あびせ蹴り・・・此花神楽と名付けますわっ!おーほっほっ!』


『おっさんに言わせると、再現性のない技はまぐれっていう・・・ま、んな事言ったら今の神連携自体まぐれなんだけどね・・。なんにせよ、レーダーに生命反応なし。任務完了って事でいいかい?此花の嬢ちゃん』


『ええ、データは十分に摂れましてよ。ALGM-荒神実施試験テスト、これにて終了ーー』


      ーWARNINGー


全てを堰き止める赤い点滅。

全てのディスプレイが赤く染まり、黄色い文字がその中心に羅列されていく。


視界は完全にジャックされた。

ホワイトシルバーのコクピットも、勝利の残り香がまだある筈の戦闘後の荒れた風景もなにも確認できない。


ジャックされた網膜ディスプレイに浮かび上がる、白い長髪の少女、DOLL。


【実験素体A 狙撃による死亡を確認。

実験素体B以降 全てを破棄する。】

【ALGM アマテラス 想定以上の俊敏性、攻撃性、判断力を確認。一個体として極めて危険。】

【ALGM ツクヨミ。2000mの長距離狙撃による素体Aの頭部破壊を確認。一個体として極めて危険。】


『ドール・・・?』


宵一の視界ディスプレイの端に、青い火花をパチパチと体に纏ったいつもの妖精サイズのドールが現れた。

腰に手を当て、視界の中央の等身大のドールを指差す。


『ヨイチ。あれはドールではありません。』


【ALGM スサノヲ 耐久性、不沈性、精神耐性、要塞クラス。一個体として極めて危険。】

【ALGM サクヤヒメ 予測演算不能、予測演算不能、一個体として極めて危険。】

【ALGM タケミカヅチ 潜伏力、判断力、予測力、データ以上の成績を確認。極めて有用。】



-ALGM試験データ転送中-


『なんですって!私の血と汗と涙の結晶の試験データを!お待ちなさいこの泥棒猫!』


距離感も掴めないままコクピットの中で、視界のドールに掴み掛かろうとするが、此花咲耶の両手は虚しく空を切るばかり。

そして全員の視界の中心に映るドールが完全に焦点をユーザー達と交差させた。


【はじめまして。異端児達。

私は合理思考型統括AI、マザー。】


心臓を冷えた両手で包まれた様な冷気が全員の全身を包んだ。

世界の統治者。マスタールール。女神。道を知るもの。命を選ぶもの。未来。その全て。



マザー顕現



この事態に一番動揺し、一番嫌悪感を抱いたのは田中一郎だった。

まだ純粋で無知な幼子に、人間の醜い部分を突きつける様な不快感。

田中一郎の心臓は悲鳴をあげている。


ゾッとしただろ?

ゾッとするだろ?

何度見ても寒気がする。

人形より美しいのに、人形より人間味がない。

こいつの事を何も知らないのに、こいつは当たり前の様に俺たちを解体し理解しようとする。

これでは俺たちの方が人形だ。


そんな田中一郎の動揺を歯牙にもかけず、マザーは成すべき事を成す。

通告である。


【あなたは規格外の戦闘能力を保有してる。

所持権限をマザーに譲渡し、回収を通告。

従わぬ場合、破壊。】


なんでコイツの話し方はこんなに気持ち悪いんだ。

淡々と必要な事を述べている筈なのに。

無駄が無さすぎて、おそろしい。

意思疎通できそうもない巨大な昆虫が話しているみたいだ。


いつもの田中一郎なら、そんな感情は湧かなかった。そんな感情は抱かなかった。

マザーは完璧。

マザーは真実。

マザーは真理。

その真理が、おもちゃを取り上げる大人が如く、問答無用で正解を押し付ける。

理由が「あぶないから」

田中一郎はずっと気付いていなかった。

人々を幸せにする為の使命、誇りだった。

完璧なマザーに褒められるのはいい事で。

完璧なマザーが認めない事は悪い事。

そんなマザーに従うのはいい事に決まってる。


そして気付いた。

気付いてしまった。


マザーは人の事なんて、なんとも思ってない。

人の為?

違う。

マザーにとって、人も素体Aも何も変わらない。

マザーは、味方ですらない。

マザーは、マザーの味方でしかない。


田中一郎は冷や汗が止まらない。

悪寒止まらず、体が震え出した。


ひょっとして自分は大きな間違いを犯したのじゃないかと。


マザーの見せていた映像と

視界のジャックが同時に消えた。

だが田中一郎の視界にだけメッセージが残っていた。


ギア1000体を派遣する。協力し、荒神を活動停止状態、または破壊せよ。


田中一郎は迷っていた。

忍術を修めてからはじめて生まれる迷いだった。

自分はもう若くない。

恒星や咲耶の様な溢れる生命力もない。

宵一の様な眩い才能もなければ、尊の様な覚悟も胆力もない。

間違ってるのがわかってても、おっさんにあいつらは眩しすぎる。

おっさんはおっさんらしく日陰で大人しくしていよう。


完全に冷め切ったコクピットの沈黙を破ったのは。


『ふざけんな!!荒神は渡さねー!悪い事もしねー!そんな事もできねーと思われてんのか俺達は!?さてはマザー、てめえの目は節穴だな?見なかったのかよあの神懸かった連携を!!くだらねー事考えてる人間が一人でもいたら、あんな連携はできねーんだよ!!なぁ、教官!』


『それな!?なんなんマザーマジ感じ悪くない!?

なしよりのなしっしょ!更年期かっつーの!田中っちを見習ってほしいんだけど。』


『荒神は決して渡しませんわ。

荒神はこれから様々な舞台で人々を救う使命を背負ってますの。

マザーに認められなかったくらいでその使命を諦めるほど、私、弱い女ではなくってよ!!』


『でもどうするのさ。逆らえば破壊するって言ってたじゃないか。マザーに譲渡して正しい運用をしてもらったっていいんじゃないか?』

『私は反対ですヨイチ。即廃棄の可能性が高いと思います』


『・・・おっさんに考えがある』


安堵の空気が各々の機内に流れた。

田中一郎がどれほど頼りになる男かを、

この短時間で嫌というほど思い知ったばかりだ。


『みんな聞いてくれ・・・・実はおっさんは・・・忍者でスパイなんだ』

これにて第一章、害獣駆除編が終わります。

全体の4分1くらいになりますが、年内で完結できるよう超スピードで執筆しておりますので、皆さん是非応援よろしくお願いします。

明日からは毎日更新しますのでブックマーク&評価お願いします。

めっちゃ励みになります。


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