愛屋及烏
私の名前は芳村 華。13歳。
芳村恒星と、芳村宵一の妹。
好きなことは、笑うこと、たべること、寝ることと家族。
嫌いなものは、気持ち悪いもの、美味しくないもの、嘘をつくこと。
特技は、今はまだ、ない。
夢は、お兄ちゃん達を守れるくらい強くなる事。
父や母や故郷、沢山のものを失った私は物欲がほとんどなくなった。
足るを知る、といえば聞こえはいいけど、お兄ちゃん達はただの諦めではないかと良く気を揉んでいる。
両親代わりのお兄ちゃん達は、同じ十代なのに「あれは大丈夫か、これは大丈夫か」と保護者の様な態度を取る。
実際保護者なんだけど。
そんな話になる度に、私はもういないパパの口癖を真似してみせる。
恒星兄ちゃん、宵一兄ちゃん、私、欲しいものはもう全部持ってるよ。
パパは、お兄ちゃん達の数少ない弱点。
父であり、先生であり、友であり、師匠。
パパから送られた言葉は皆形見の様に大事にしている。
恒星兄ちゃんが大事にしてるパパの言葉は
『恒星、上を見ろ。上を向いてる時のお前が一番輝いている。』
そう言われた日から、恒星兄ちゃんは立ち止まる事も、諦めて嘆く事もしなくなった。
底抜けに明るくて、元気で、俯く所を見た事がない。
上へ、上へ、どこまでも登ろうとする様になった。
宵一兄ちゃんも一緒。
ここ一番で弱気になると、パパの言葉をまじないみたいに呟く。
『落ち着け宵一。冷静になれば、お前はなんだってできる。』
その言葉を思い出すと震えが止まって、心が燃えて、頭が冴えるんだって。
私にも幾つか言葉を遺してくれたんだけど、私にはちょっと難しい。
『自分の大事なものは自分で守れ』とか『間違えたらすぐ直す』とか、基本的な事から『命の意味』とか『幸せの定義』とか。
手を出せば、握り返してくれたけど、特別甘やかされた記憶はない。
パパにとって、生きる事は戦う事で、育てる事は強くする事だった。
パパが私にだけ、繰り返し何度も教えてくれた事がある。
・・・ホントはお兄ちゃんはもう出来てるから、改めて言う必要はないってだけだったんだけど、私、めんどくさくて何度も聞き流しちゃって。
だからパパは何度も言う羽目になって。
『ちっぽけな勇気を大事にしなさい』
今でも思う。
ちっぽけな勇気、ってなんだろう。
恒星兄ちゃんみたいに、燃え上がる勇気には敵いっこないじゃん、て思う。
吹けば飛んじゃうようなちっぽけな勇気なんて、大事にする意味あるのかな?
ちっぽけな勇気の大事さなんて、今の私には分からない。
でも分かろうとする努力はやめないよ。
私だって、大事な人を守れるようになりたいから。




