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第76話 【Day 1裏】第6回・裏サミット開催 ~議題:推しの救急搬送と「身バレ覚悟」の決断~

時は少し遡り、小暮が倒れた直後の「裏サミット(チャットルーム)」。 そこは、阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。


『admin: 緊急事態だ! 911にコールする! 位置情報は特定済みだ!』

『ミケ: 馬鹿者! 日本は119じゃ! 誰か早く呼べ!』

『リョウタ: 俺が呼ぶ! ……いや待て、俺は住所を知らない!』


画面の中で、小狐ルルはピクリとも動かない。 焦燥感だけが募る中、ドクター(如月恭介)が冷静なログを流した。


『ドクター: 落ち着け。彼のウェアラブルデバイスに侵入した。 心拍、血圧、共に生存範囲内だ。……どうやら過労による気絶の可能性が高い。 だが、放置すれば危険だ』


『フクロウ: しかし、困りましたわ……。 我々はあくまで「ネット上のリスナー」です。 どうやって救急車を呼び、部屋に入ってもらうのですか? 「配信を見ていた」では、不法侵入やプライバシー侵害で警察沙汰になりかねません』


現職の大臣であるフクロウ(剣崎塔子)が、法的な壁を指摘する。 このままでは、助けたくても助けられない。


『名無し: 私が! 私が行きます! 「知人です」って言って押し入れば……!』


『リョウタ: いや、君はリアルでは彼と面識がないだろう? 現場で警察に事情を聞かれたら詰むぞ』


エリカ(名無し)の提案も却下された。 全員が、社会的地位と「匿名性」のジレンマに歯噛みする。 その時。


『カゲ: ……私が、行きます』


沈黙を破ったのは、ロンドンにいるはずのカゲ()だった。


『カゲ: 私は……彼とリアルで面識があります。会社の同僚です。 日本の実家に連絡して、すぐに救急車と私の名前を使った代理人を向かわせます』


『admin: おお! それなら完璧だ! ……だが、カゲ。いいのか? それをすれば、君が「カゲ」であると、彼にバレることになるぞ』


その問いに、カゲの入力が止まった。 数十秒の沈黙。


『カゲ: ……正直、怖いです。 彼が、「見ている人間の一人が身近な同僚だった」と知ったら……気味悪がられないでしょうか。 ただのファンとして、陰から支えるだけでよかったのに……。 私のエゴで、彼の居場所を壊してしまうのが、何より怖い』


彼女の吐露した本音に、全員が息を呑んだ。 推しに認知されたい欲求と、推しの聖域を守りたい理性。 その葛藤は、誰よりも深かった。


『フクロウ: ……彼女、いえ、彼は。 そういうことを気にするような心の狭い方ではありませんわ。 貴方がそこまで想っていること……きっと、感謝こそすれ、嫌がるはずがありません』


『名無し: そうだよ! 正直すっごく羨ましいけど……! 今、ルルちゃんを助けられるのはカゲちゃんだけだよ! お願い、行ってあげて!』


『カゲ: ……ありがとうございます』


彼女は迷いを振り切った。


『カゲ: 救急車、手配完了しました。搬送先も確保します。 ……私も、今から日本へ飛びます』


『ミケ: うむ。頼んだぞ。 ……航空券の手配くらいなら、ワシのカードを使ってもいいぞ?』


『カゲ: ふふ、お気持ちだけ。 ……彼を失う恐怖に比べれば、身バレなんて些細なことです。行ってきます!』


カゲがログアウトする。 残された男性陣は、「女は強しだな……」と感嘆の溜息を漏らすのだった。 これが、小暮が目覚める数時間前の、命がけの連携プレーの全貌である。

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