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第75話 【Day 1】同接7人の配信者ですが、病院のベッドで目覚めたら「彼女(?)」が両親に挨拶していた

本日から走り切るまで1日2更新予定です!

「……ん、ぅ……」


小暮こぐれ ゆずるが目を開けると、そこは知らない天井だった。 消毒液の匂い。電子音。 ぼやけた視界に、見慣れた顔が飛び込んできた。


「譲! 気がついた!?」

「あ、あなた! 譲が目を覚ましたわよ!」


「……母さん? 父さん……?」


そこは病院の個室だった。 小暮が身を起こそうとすると、全身に鉛のような重さを感じて呻いた。


「ダメよ! あんた、過労で倒れて運ばれたのよ! お医者様からは、最低でも一週間の入院が必要だって……もう、どれだけ無理してたの!」


母親が涙目でまくし立てる。 記憶が蘇る。御子柴会長とのプレゼン、帰宅、配信、乾杯……そして、プツンと切れた意識。


(そっか……僕、配信中に倒れちゃったのか……)


「……ごめん、心配かけて」

「本当によ! ……でも、不幸中の幸いだったわ。 譲の彼女さんが、すぐに救急車を手配して、この病院まで手回ししてくれたんだから」


「……は? かのじょ?」


小暮は呆気にとられた。 自分に彼女などいない。何かの間違いでは?


「失礼します。……お目覚めになられましたか?」


病室のドアが開き、一人の女性が入ってきた。 上質なブラウスに身を包んだ、凛とした美貌の女性。 彼女は小暮と目が合うと、ホッとしたように微笑み、それから両親に向かって深々と頭を下げた。


「お父様、お母様。ご心配をおかけしました。 譲さんの意識が戻られて、本当に良かったです」


「い、いえいえ! こちらこそ、何から何まで……! こんなにお綺麗でしっかりした方が、まさか譲の恋人だなんて……」


両親は恐縮しきりだ。 小暮だけが「えっ? えっ?」と状況についていけていない。 その女性は―― 影山かげやま しおりだった。


   ◇


その後、栞は甲斐甲斐しく小暮の世話をし、両親を駅まで見送って戻ってきた。 病室には、二人きりの静寂が流れる。


「……あの、影山さん」

「……はい」


「どうして、ここに? それに、両親に『彼女』だなんて……」


小暮が困惑して尋ねると、栞はベッドの脇に座り、少し気恥ずかしそうに俯いた。


「……すみません。そうでも言わないと、貴方の家族として搬送の手続きに関われませんでしたから」 「搬送って……影山さんが?」

「はい。……だって、見ていましたから」


彼女は、小暮の目を真っ直ぐに見つめた。


「配信中、貴方が倒れるところを……ずっと」


「……え?」


「……『カゲ』です。小暮さん」


小暮の思考が停止した。 カゲさん。 いつも一番にコメントをくれる、あの古参リスナーのカゲさん? それが、会社の「高嶺の花」である影山栞?


「え、ええええっ!? じゃ、じゃあ、あの半額弁当の時も、ロンドンに行く時も、ずっと……!?」


「ふふ。はい。ずっと貴方のファンでしたの」


小暮の顔が、ゆでダコのように真っ赤になった。 恥ずかしい。自分の地味な配信も、弱音も、全て彼女に見られていたなんて。 しかし、それ以上に――。


「……ありがとう。助けてくれて」


「いいえ。……生きていてくださって、本当によかったです」


栞の目じりに、涙が浮かんでいた。 彼女の献身に、小暮の胸が温かくなる。 すると、栞は涙を拭い、少し悪戯っぽく微笑んだ。


「それにしても小暮さん。 幸か不幸か、これで私たち、()()()()()()()()()()してしまいましたわね?」


「~~っ!?」


小暮は布団を頭まで被って悶絶した。 そんな彼を見て、栞は久しぶりに声を上げて笑った。


その後、小暮はスマホを取り出した。 心配しているリスナーたちに、報告をしなければ。


『みんな、ごめんね! 昨日はお祝いのお酒が回りすぎて、椅子から落ちてそのまま朝まで寝ちゃってました! 僕は元気だから心配しないでねっ!』


それは、カゲと二人で考えた、優しい嘘の報告だった。

毎日0時に1更新を目指して頑張っています。


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