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第65話 行動理由

「なあ、まだ寝るには早いだろ?


せっかくだから2人が魔石の部屋を目指す理由をそろそろ教えてくれよ」


そんなサロスの何気なく軽い問いかけに対して、アマンは眉をしかめる。


アマンは、それとなく話題を変えようと声をあげようとした。



しかし、表情をさほど変えないでムラマサが答える。


「別に秘密にしていた訳じゃないわい。


…新しい鉱石を探しているんじゃ。


魔石の部屋は濃密な魔力で満たされていると聞く。


その部屋の石材は、かつて見たことない鉱石に変化しているんじゃないかと思っての」


「なるほどな。部屋にいる魔物を倒さないことには採掘なんてしてられないからな」


サロスがそう合いの手を入れる。


「ワシの目的は、ただそれだけじゃ」


そういうと、ムラマサは口を閉ざす。



一方で、シトリーは話すべき逡巡しているようであった。


そんなシトリーにアマンが声をかける。


「無理にお話される必要はありませんよ。


皆、なにかしら目的があって、その利害が一致しているのはわかっているのですから」


そんなアマンに、優しい微笑を返すシトリー。


「いえ。せっかくだから、私も聞いてもらうわ。


気を遣ってくれて、ありがとうね。アマン」


アマンは黙って、微笑みながら頷く。


「私の目的は…魔石の魔力。ううん、その残り香みたいなものかしら…


帝国の起こした戦争があったでしょう?


私も風の国の戦士として、それに参加したのよ。


風の国でも珍しく土の精霊王を使役できる。


その頃の私は、そんなことで大分慢心していたわ。


実際、帝国軍を土の精霊王が蹂躙していたことも、それに拍車をかけたわ。


気がついたら、私は自軍よりも遥か前線に突出してしまっていたの。


それを…それを命をかけて助けてくれたのが婚約者だったストールだったわ」


そこまで一気に話しあげると、シトリーは目を潤ませ声を詰まらせた。


それでも話すことを辞めようとはしない。



「舞い上がった馬鹿な私を助けるためにストールは命を落とした。


私は彼を蘇らせる方法を大陸中に探したわ。


長い旅の果てに、大陸の賢者が扱う炎の精霊王の力に考えが至ったの。


私も炎の精霊王を使役してみせる。相性が悪いのは分かっている。


でも、私はその相性の悪い土の精霊王だって使役してみせた。


だから、炎の精霊王と謁見するための接点を今度は探し始めたの。


結論として辿り着いたのが、精霊王を封じていた魔石よ。


もしかしたら何かの影響が残っていて、接点をもつことができるかもしれない。


そう信じて、魔石の部屋を目指したの」



「そんな大切なことを軽々しく聞いてしまって、本当にすまない…」


珍しくサロスが殊勝な顔で謝罪する。


それにシトリーが、微笑みながら答える。


「いいのよ。あなたたちは、今ではかけがえないのない仲間だと思っているのよ?


だから、逆に話す機会が出来てよかったわ」



アマンは、遥かに年上の2人が胸襟を開いて話してくれたことに感謝していた。


と同時に、このパーティーの成熟度が共にした時間を超え、遥かに高くなっていると感じていた。



「こんな大切な理由を2つも聞いてしまったのです。


明日は、是が非でも魔石の部屋を攻略しなければなりませんね、サロス」


アマンの言葉に、強く頷くサロス。


「ああ、こんな最高なパーティーは二度と組めそうにないしな!


当然明日は、絶対に攻略してみえるぜ!!」



そんな直接的な言葉を紡ぎだすサロスを皆が眩しそうに見る。


特に、直前に話したくないはずの話をした2人の目線が顕著であった。



「まずは一番左の部屋か。親父たちがそんなことを言っていたな」


「ええ。どういった意図なのか…何か意味があるのか…


さっぱりわかりませんが、父たちが私たちを陥れることはありえません。


ここは先輩の言葉に従って、その通りにいきましょう」


アマンの言葉に皆が頷く。


「私は眠る必要がありませんから、常に起きています。


皆さんは安心して、休んでください」


珍しく自発的に声を発したエイミーに、皆少し驚いた。


しかし、その心遣いに感謝して、皆笑みで返す。



「ありがとうね、エイミー。お言葉に甘えさせていただくわ」


「すまんのう。申し訳ないがワシも明日は全力を出せるようお主の言葉に甘えよう」


「エイミー、ありがとうな!何かあったらたたき起こしてくれな!」


エイミーの言葉が合図になったかのように、3人は寝袋の奥に身を横たえる。



「では、みなさん。明日は、どうかよろしくお願いします」


皆の様子を見たアマンは、会話を切り上げる。


そして、エイミーを見つめるとおもむろに口を開く。


「エイミー、私も途中までお供致します。


最後は申し訳ありませんが、よろしくお願い致します」


アマンの言葉に、嬉しさを隠せないような笑顔で応えるエイミー。


そして、おずおずと自らの寝袋をアマンの隣に寄せる。



皆が眠りに入ろうとしていることもあり、2人に会話はない。


しかし、寝袋を寄せ合い、手をつなぐ…2人には、それだけで十分だった。



こうして、避難部屋セーフティーゾーンの夜は更けていったのであった。

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