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第61話 漆黒

サリードの暴風の魔法で吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた前衛の3人。


相当な衝撃だったのか、3人ともうめき声を上げ、動けない様子である。



魔力盾マックシールドで暴風を防いだアマンが反撃する。


サリードの回りをぐるりと土の槍が取り囲むと暴風の魔法でそれを発射する。


しかし、今度はサリードの展開した魔力盾マックシールドがこれを防ぐ。



「なかなか面白い魔法を使うものだな。こんな感じか?」


サリードが、そう呟く。


すると先ほどとは反対を向いた土の槍がサリードの回りに出現する。



咄嗟にアマンは、エイミーの下へ飛び込みながら魔力盾マックシールドを展開する。


刹那、サリードから暴風の魔法によって土の槍が発射される。


アマンとエイミーは難を逃れたが、サディアスとムラマサは腹部に傷を負ってしまった。


2人とも咄嗟に急所は外して被弾しているというのは流石だが、傷は浅くない。



入り口付近で精霊を使役していたシトリーは、間一髪、部屋の外へと逃れていた。


使役している水の精霊を今度はサディアスとムラマサの治癒に当たらせる。



これによりわずかばかりだが傷が回復したサディアスとムラマサ。


2人は、アマンの魔法戦の邪魔にならぬよう入り口方向へ足を引きずりながら移動する。



「ほう。思ったよりも使い勝手がいいな」


そう呟くと、再度サリードは土の槍を発射した。


アマンは再び魔力盾マックシールドで、これを防ぐ。



サディアスとムラマサは、なんとかシトリーと一緒に部屋の外へ転がり出ることに成功した。


そのままシトリーは、部屋の外で2人を治癒に専念することにした。


2人も廊下の壁に寄りかかり、これを是としている。


狭い空間での魔法戦に、彼らは足手まといだと分かっていたからである。



アマンは土の槍を発射しながら、エイミーを傍らに抱き寄せた。


サリードに防がれるのを承知で、体勢を立て直すための時間をかせぐ。



「なんだ、もう品切れか?」


先ほどと変わらず、特に感情もなくそう呟く。


そこへアマンが火球を打ち込む。


青白く燃え上がる炎がサリードへと迫るが、これも魔力盾マックシールドに阻まれる。



反撃に備えて、エイミーをより強く抱き寄せるアマン。


その様子を見て、不思議そうにサリードが呟く。


魔力人形マジックドールなど必死に守ってどうするというのだ?


所詮、玩具に過ぎないだろう?まあ、いいか。


どうやらお気に入りのようだから、まずはその玩具から壊すとしよう」



サリードの手元に小さな火球が浮かぶ。


青白いというよりも、白色に近い火球である。


それを無数浮かべている。



無数の白炎を見て、アマンはエイミーを庇いながらでは防ぎ切れないと悟った。


エイミーに魔力盾マックシールドを展開し、部屋の外へ投げ飛ばそうとする…


が、それを悟ったエイミーに抱きつかれ、計画は失敗する。



「何をして遊んでいるのだ?」


淡々としたサリードの言葉とともに、白炎が放たれようとした…


…その時、アマンの中の何かが壊れた。



無意識のうちにアーティファクトの魔力を引き出し、火球を放つアマン。


その炎は…いつもの青白い色ではなく…漆黒の闇をたたえていた。



落ち着いて魔力盾マックシールドで火球を防いだサリード。


そのサリードに初めて感情のこもった表情が浮かぶ。


「これは…魔界の炎!?」



アマンが放った黒炎は、サリードの創った魔力盾マックシールドを焦がし続ける。


「間違いない!これは魔界の炎ではないか!」


自身の状況を忘れたかのように、喜色を表すサリード。


なおも黒炎は、魔力盾マックシールドを焦がし続ける。



「素晴らしい!実に素晴らしい!!


この黒炎は全てを焼き尽くすだろう…


この魔力盾マックシールドも、私の身体も、この砦も…


そして、この世界も…全て!!」


うっとりと語るサリードであったが、黒炎は魔力盾マックシールドを溶かしつつあった。



それでも構わず、魅入られたように黒炎を見つめ続けるサリード。


逃げる気配もない。



「あはははははははは!見ろ!この素晴らしき炎を!


私が召喚できなかったものとこんな形で出会えるとは!


素晴らしい!実に素晴らしい!


お前が私の代わりに、この煉獄の炎をもって全てを滅ぼしてくれるのだな!


くれぐれも頼んだぞ…名も知らぬ魔道師よ…」


魔力盾マックシールドが焼失し、自らの身を焼かれながらも陶酔した様子で語りかけるサリード。



そして、そのまま身体は燃え上がり、その痕跡がなくなるまで焼き尽くされた。


サリードだったものがなくなると、魔力の供給を止めるアマン。



だが、アマンの様子がおかしい。


その目は赤く染まり、鬼のような形相を崩してはいなかった。



そんな中、シトリーが叫ぶ。


「ダメ!この炎はもう抑えきれない!」


「急いで退避するぞ!」


シトリーとサディアスが叫ぶ。



ムラマサとサディアスが肩を貸し合い走り出す中、その場に立ち尽くすアマン。


「何してるのアマン!エイミー、アマンを引きずってでも逃げて!」


そう言って、シトリーも走り出す。



アマンは、いつしか怒り狂っていた。


愛しきものを奪うことなど…絶対に許せない…


その怒りを抑えきれず、再び漆黒の炎を呼び出そうとしていた。


シトリーたちの声など、全く聞こえていない。



しかし、そんなアマンにエイミーの声が届く。


「アマン様!もういいのです!もう終わったのです!」



その声が呪いを解いたように、アマンの目や表情が常のものへと変わっていく。


「エイミー?」


「ここは危のうございます。アマン様、一緒に逃げてくださいませ」


エイミーの嘆願に、呆然とした表情のまま頷くアマン。



パーティ全員が砦の外になんとか逃げ出すと同時に、轟々と燃え上がる砦が焼け落ちていった。

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