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第60話 交戦

サリード軍に本陣へ迫られながらも、左翼の部隊へと指示を出すサロス。


左翼の部隊を反転させ、本陣へ迫る敵の横腹を突く形をとる。



歩兵中心であったことが幸いし、部隊の反転はすばやく行われた。


しかし、左翼部隊が応戦する前に、敵軍の先頭集団が本陣に届く。


向かってきた敵兵を先頭に立って斬り伏せながら、サロスが味方を鼓舞する。


「まだ敵兵は、少ない!ここで叩き潰すぞ!俺に続け!」



鶴翼かくよくの底となっていた本陣が最前線になったものの、味方の士気は高い。


総大将であるサロスに続いて将兵たちが、敵兵たちをなんとか食い止める。


その間に左翼部隊が敵軍に接触。


本陣へと向かう敵軍の横から急襲し分断する。


この結果、本陣を襲う敵軍は極少数となり、余裕をもって討ち取ることができるようになった。



さらに、川の向こうでも歓声が上がる。


討伐軍の別働部隊が到着したのである。


まだ渡河していない敵軍の背後を完全に取り、川に向かって次々と撃破していく。



討伐軍の左翼部隊は、そのまま横陣の構えをとり、本陣の盾となる。


相対する敵軍は、渡河し右翼部隊を突破できた少数の兵のみ。


一撃必殺の敵軍の作戦は、この時点で失敗に終わったといえる。



本陣後方の敵兵を左翼部隊が掃討すると同時に、右翼部隊も渡河しきった敵兵を掃討。


川の向こう側の敵兵も別働部隊が掃討しつつある。


残された敵兵は、どんどん川の中へと押し込まれていく。


本陣から放たれる魔法と矢が、川に取り残された敵兵を削っていく。


そこへ向こう岸を制圧した別働部隊が襲い掛かり、川に残された敵兵も殲滅。



一時は総大将まで敵の刃が迫ったが、半刻もしないうちに敵軍を全滅することに成功した。


勝鬨を上げる討伐軍を鼓舞しながら、サロスはアマンたちの戦況に思いを馳せていた。




一方、アマンたちは戦線が開かれる明け方前に敵の砦に辿り着いていた。


アマンが索敵を慎重に行ったが、全軍討って出たようで砦に人影はない。


更に慎重に砦内に侵入するアマンたち一行。


無人の砦の中を迅速にくまなく探す。


サリードとディアナは、開戦したのち、戦況次第ではすぐに逃走を図る恐れがあるからである。


そのため、アマンは開戦前に砦の中の戦いを済ませておくつもりである。



砦の最深部と思われるところまで来ると、アマンはわずかな灯りを遠くに見つけた。


砦の一番高いところに位置していることから、おそらく窓から戦場を観察しているのであろう。


近づいてみると、そこは執務室を思わせるような部屋であった。


灯りは開け放たれた扉から漏れていた。



アマンは、そこにサリードとディアナがいると確信していた。


相手は2名。


しかし、自身も少数で立ち向かううえ、相手は両者ともに高位の魔道師である。


しかも両者ともに転移魔法の使い手。


転移魔法を使用される前に、素早い決着が求められているとアマンは考えていた。



扉の近くまで進み、中に人の気配を感じるアマン。


扉および付近に罠がないことを確かめる。


確認が終わるとアマンは振り向き、後ろに続く仲間たちにその旨の合図を送る。


全員の了解のサインを確認したアマンは、目の前の部屋へ飛び込む。


パーティ全員がアマンに続いて部屋へと飛び込んでくる。



部屋に入ると、やはりそこは執務室のような造りとなっていた。


窓際に立ち、アマンたちの入室を落ち着いた様子で眺める2人の姿があった。


あまりにも冷静な姿に、アマンは尋ねずにはいられなかった。


「あなたが、サリード…サリード・ドライ・エンパイアですね?」


優雅な所作でアマンに向き直ると、彼は厳かに口を開いた。


「いかにも。私が、サリード・ドライ・エンパイアである」


しかし、サリードの表情からは何も感じ取れない。


一方で傍らに立つディアナは鬼の形相で詰問する。


「お前たち!誰の御前にいるのかわかっているの?


この無礼、命をもって償ってもらうわよ!」



言い終わるが早いか、巨大な火球がアマンを襲う。


魔力盾マックシールドを展開し、これを防ぎながらアマンは考えた。


火の魔法を放つということは、この砦に居残るつもりはないなと。


そう考えが至ったアマンは、仲間に告げる。


「彼らはここに居残るつもりはありません。


逃がさないように気をつけてください」



そんなアマンの言葉にディアナが激高して答える。


「逃げる?あなたたちごときに逃げるわけないじゃない!」


そう言って、再び巨大な火球を放つ。


アマンが魔力盾マックシールドで、これを防いでいる間に3人がディアナに迫る。


ムラマサ、サディアス、エイミーである。


シトリーは水の精霊ウンディーネを召喚し、炎の延焼を防いでいる。



3人の振るう武器を防ぐべく、今度はディアナが魔力盾マックシールドを展開する。


しかし、魔力を付与されたアーティファクトである武器が魔力盾マックシールドを易々と切り裂く。


ディアナの驚愕は、長くは続かなかった。


肉薄したエイミーが表情を変えずに曲剣サーベルを横に振るう。


少し遅れて、ディアナの首が驚愕の表情をたたえたまま床へと落ちていく。



ディアナの殺害を見ていたサリードであったが、その様子に変化はない。


「ほお、お前は確かディアナに与えた玩具であったな。


自らの玩具に殺されるとは、とんだ見込み違いだったようだ」


それだけ呟くと、腕を無造作に振るった。


室内を暴風が蹂躙し、近くにいた3人がそれぞれ壁に叩きつけられた。

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