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第57話 親心

火竜を討伐してから3ヶ月が経過した。


討伐軍は王都守備隊5千兵のみを残し、火竜討伐後に解散。


残った将兵たちはラプラスを拠点として、周辺の町や村の復興に尽力していた。



冒険者たちも討伐軍と共に解散していた。


しかし、アマンたち一行はラプラスに未だ残り、復興のために汗を流していた。


アイロニア領がムラマサの故郷ということもある。


それに加え、サブノックとハルファスも残る中、イボスに戻るのが憚れたからである。



国王サブノックに加え、大陸の賢者と呼ばれるハルファスも残ることで復興組の士気は高い。


そんな喧騒溢れるラプラスにある国王の仮の執務室。


珍しく暗い顔をしたハルファスに、サブノックが声をかけていた。



「どうしたハルファス?何か不安でもあるのか?」


「心配をかけさせてしまったようだな…申し訳ない」


「何を水臭い。どうしたんだ、言ってみろよ」


少し逡巡した後、ハルファスが口を開く。



「私が気絶した後の戦闘における報告書を読んだ」


「それがどうかしたのか?」


「アマンに関する記述を読んだのだが、これは本当のことか…?」


「それはそうさ。実際に、とんでもない働きをしたのだからな」


「だとしたら…不安でならないのだよ…」


「何がだ?父を超えられる心配でもしているのか?」


そう笑いながら語るサブノック。


それに苦笑を浮かべながら答えるハルファス。


「そんな喜ばしいことを嘆いたりなどしないのだよ」


「じゃあ、何が問題だと言うんだ?」


「強すぎる…」


「それの何がマズイんだ?」


「極大呪文を立て続けに何発も放って魔力の枯渇すら見せない…


そんな人間がまともと言えるだろうか?何かとんでもないものを引き換えにしているのでは…」



そこまで聞くと、サブノックの顔にも陰りが見える。


「確かに、そう言われてみれば…」


「己の生命を引き換えにするだけならば、まだ良い…父としては失格の言葉だが…


しかし、このような膨大な魔力を得る対価とは…


それこそ大陸を滅ぼすような対価ではないのかと心配でならないのだよ」


そう言うハルファスの顔は、青白くさえなっている。


そんなハルファスを見つめながら、しばし瞑目するサブノック。



しばらくして、意を決したような表情でサブノックが言う。


「俺は息子たちを信じる」


「サブノック…」


「俺たち父親が信じてやらなくて、誰があいつらを信じてやると言うんだ。


アマンだって、俺は息子同然に思っているし、そう思って成長を見守ってきた。


俺は、あいつらが国民を害するような人間でないと信じている」


サブノックの力強い言葉を聞き、何かに打たれたような顔をするハルファス。


そして、しばらくうつむきながら考え込む。



しばしの沈黙の後、弱弱しくも微笑を浮かべ親友を見つめるハルファス。


「ありがとう、サブノック…君の言う通りだ!」


晴れ渡るような笑顔で、ハルファスへ頷くサブノック。



と、そこへ執務室の扉がノックされる。


入室を許可すると、近衛兵の1人が執務室に訪れた。


「失礼致します。ハルファス様、ジェイドという者より書状が届いております」


差し出された書状を受け取ると、近衛兵は退室する。



ハルファスは、早速ジェイドからの書状に目を落とす。


最後まで読み終えると、しばらく瞑目した後、外にいる近衛兵に声をかけた。


「サロス殿下とアマン、それに王都守備隊長を呼んでくれ」



一刻の後、執務室に呼び出された3人が訪れる。


「急な呼び出しで、すまない。


盗賊ギルドからの報告が来たので、その対応を協議したいのだよ」


ハルファスの言葉に、アマンは例の組織を真っ先に頭へ浮かべた。


「父上、それは例の組織のことでしょうか?」


「うむ。盗賊ギルドが全力を挙げて大陸中の情報をかき集めてくれた。


それによると、サイラス近くの森林地帯に拠点を設け、そこへ多くの者が集っているようなのだ」



ハルファスの言葉に、アマンが応える。


「ということは、分散していた勢力を1つにまとめているということでしょうか?」


「おそらくそうでなのである。迷宮からの魔物の転移も火竜を解き放ったことも失敗した。


いよいよ自分たちが武装蜂起して混乱を起こそうとしているのではないだろうか」



「ということは、逆に一網打尽にするチャンスということだな!」


話を聞いていたサロスが吼える。


「そういうことにもなるのだよ。そこで、君たちに討伐をお願いしたい」


ハルファスの言葉をサブノックが続ける。


「敵の勢力はおよそ300。魔法使いや僧侶の姿もあるようだ。


現在、この街にいる王都守備隊から1000名を率いて討伐に当たって欲しい」


守備隊長はすぐに頷いたが、アマンは1つの問いかけをした。



「ただの冒険者である私たちも帯同してよいのでしょうか?」


「現在、アイロニア領の復興は佳境に来ている。


俺とハルファスが討伐に向かってもよいのだが…


それよりもここで指揮を執ったほうが復興に国が力を上げていることを示せる。


逆に言うと、下手にここを動けないと言うことだ」


渋面を作って、サブノックが答える。



ハルファスが、その先を続ける。


「お前たちには申し訳なのだが、冒険者としての参加ではなくなる。


大規模な討伐になるからには、できれば王国の旗印が必要だと思うのだよ。


そこで、サロス殿下には第3王子の立場として指揮を執ってもらいたい。


アマンたちは、それを補佐する近衛の立場として参加してもらいたいのだよ」


「しかし、俺は…」


サロスが言いよどむ。



「サロス。出奔しているお前に頼むのは俺も気が引ける。


だが、兄たちは領地からすぐには離れられない。


それに、お前は他の兄弟よりも戦の才能がある。


この局面では、お前に頼むしかないんだ」


サブノックが厳かに告げる。



サロスとしても、これまで出奔を追求もされず、自由にさせてもらったことを感謝している。


それに王族として育った以上、それに伴う責任も感じている。


そこまで考えたところで、自分が旗印になることは決意した。


「わかりました。俺が旗印になりましょう。


ただ、アマンたちを巻き込むのは勘弁してもらえませんか?」


サロスの言葉に、アマンが微笑みながら応える。


「その心配はありませんよ。君が立つのであれば、私は付いて行きます」


「まあ、行きがかり上、しょうがないわよね」


シトリーの言葉に、ムラマサも頷く。


「そうなるじゃろうなあ」


エイミーも笑顔で頷いている。


パーティのメンバーの顔を見渡し、サロスは嬉しいような悲しいような顔をする。


「みんな、すまない。恩に着る。俺に力を貸してくれ!」



そんなパーティの姿をハルファスとサブノックが嬉しそうな顔で見つめていた。

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