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第56話 復旧活動

火竜討伐軍は戦場となったジルコニア草原を離れ、近隣の都市ラプラスに滞在していた。


ラプラスは、ジルコニア草原付近で唯一火竜の被害にあっていない都市である。


サブノックとハルファスは、ここをアイロニア領復興の拠点としたのである。



第3部隊が生存者を捜索するなか第1部隊の半分もこれに合流した。


発見された生存者は、ラプラスへと軍によって移送されていた。



ラプラスでは外壁の外側に簡易の避難所が作られ、避難民の受け入れを行っている。


避難民が当面の生活をできる場を優先して作ったのだ。


ラプラスの外壁周りには、避難民たちの避難所だけでなく、討伐軍も拠点を築いている。


避難民の護衛という意味もあるが、ラプラスに3万もの将兵が入りきらないためである。



一方、第1部隊の残り半分は各小隊に別れ、各地の瓦礫の撤去に当たっていた。


いずれ戻ってくる避難民のためである。


とはいえ労働力にも限界があるので、瓦礫の撤去は生存者が確認された街や村でのみ行われている。


全滅した場所はとりあえず放置し、戻るべき民のいるところの再建を優先する方針となっているのだ。



地方都市の1つにしか過ぎなかったラプラスは、避難民と討伐軍を迎え、かつてない賑わいを見せていた。


市長の館を一時的に接収し、討伐軍の本部とした。


本部となった館にある市長の執務室には、国王サブノックの仮執務室として定められた。


もともと華美なものに興味のないサブノックは、この執務室でハルファスとともに業務に当たっていた。


2人が詰める執務室には、ひっきりなしに報告や陳情が飛び込んでくる。


その激務の合間を縫いながらも、優先したのは今回の戦いと今後の分析である。



なぜ火竜が突然現れたのか、意図的な害意の下であれば今後どのような攻撃が行われるのか。


平行して、火竜の存在を秘匿していたアイロニアに対する処分も検討せねばならなかった。



そんな殺伐とした繁忙の最中にある執務室に、アマンたちは呼び出されていた。


一番優先すべき課題…


今回の原因と今後の対策について打ち合わせるためである。



まずは、アイロニア領主であるドエル公爵と避難民から聞き取りができた情報を共有する。



【ドエル公爵からの情報】


ジルコニア山脈の火口付近にある神殿には、古代魔法王国が封じた古竜エルダードラゴンがいた。


封じられていた古竜エルダードラゴンは火竜である。


火竜の宿す炎の精霊力を利用する施設があり、それが古代魔法王国の神殿遺跡である。


このことは鉄の国の元王族しかしらない秘密であった。


神殿は、近隣住民にもその存在を知られることなく管理されていた。


アイロニアでは、この遺跡の力を鍛冶に利用することで他では作りえない製品を生産していた。


大陸が統一された後も、この優位性を保つために秘密としていたことを反省している。



【避難民からの情報】


ジルコニア山脈の火口付近は危険だと昔から伝えられているため、神殿付近には地元民も近寄らなかった。


最近、火口の方向へ向かって山に入る冒険者風の者たちの姿を見た者がいる。


その冒険者風の者たちがジルコニアを去ったあと、草原から一切の獣が姿を消した。



情報の共有が終わると、アマンが口を開いた。


「我々も今回の戦いを前に話し合っていたことがあります。


なぜ、他の地域では精錬できないミスリルを鉄の国では可能にしているのかと。


しかも、その火力の源は伏せられていることをムラマサさんから確認していました。


そのことから、火力の源が古竜エルダードラゴンの火竜であることも推測していました」


「ほお、なかなか鋭いではないか」


アマンの言葉に、ハルファスが嬉しそうに頷く。



その姿に、少し照れながらもアマンが続ける。


「長年、秘密にされてきた古竜エルダードラゴンの封印を何者かが解放した。


普通であれば、そんな誰も得をしないようなことはしません。


しかし、我々は王国に災害をもたらすためだけに動いている組織を知っています」


アマンの言葉にサロスが続ける。


「魔物を転移していた奴らだ!」


「タイミング的にも、犯人は彼らで間違いないと考えています。


魔物の転移による被害を拡大できず、他の手段をとったのではないかと」



アマンの言葉に、大きく頷くハルファス。


「うむ。私も全く同じことを考えていたのだよ。


これ以上、くだらぬ真似をされないうちに叩かねばなるまい」


ハルファスの言葉にサロスが応える。


「だが、そいつらの居場所がわからん」


「ジェイドさんに一味の情報を集めてもらうよう頼んではあるのですが…」


アマンの言葉に苦渋の顔を見せるサブノック。


「居場所さえつかめれば、俺自ら首を斬り落としにいってやるものを」


そんなサブノックをハルファスがたしなめる。


「君はもう国王なのだ。少し自重したまえ。


ジェイドが動いてくれているならば、いずれ居所も知れよう。


それまでは、この地方の復興に力を注ぐしかあるまい。


お前たちも手伝ってくれるな?」


ハルファスの言葉に、アマンたちは大きく頷くのであった。

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