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第53話 作戦会議

第2部隊の集合場所は、ザイード砦を守る将軍の執務室であった。


その将軍自体は、第1部隊に配属されているため、留守である。


国王が参加する会議を行うため、一番良い部屋をということであろう。



執務室に集まったのは、総勢20名。


そのうち、冒険者はアマンたちを入れて10名だ。


イボスからは、『守護戦士ガーディアン』のトロイだけがいた。


他の4人の冒険者はサイラスから来たのだろう。


腰にある剣から魔力を感じるので、全員魔剣を持った前衛職と見える。


王国側は、サブノック、ハルファスの他に8名の騎士が控えていた。


こちらも全員魔剣を持った騎士たちのようだ。



「良く集まってくれた」


良く通る声で、サブノックが声をかける。


サブノックの言葉を合図に会議が始まる。



「第2部隊は、この作戦の1番の要となるのだ。


それゆえ、ここでは作戦全体の流れも掴んでおいてほしい」


ハルファスから説明が始まる。



「まず、おびき寄せた火竜だが、1番考えられる最初の攻撃は上空からのブレスである。


これに対しては、第1部隊の魔法使いたちが魔力盾マジックシールドで完全に守りきる。


この初撃をしのげるかどうかで、第1部隊の生存率が天と地ほどに差が出るのである。


ブレスをしのがれた火竜がどうでるか…


怒り狂って第1部隊に突撃してくるか、上空で再度ブレスの準備をするか…


どちらにせよ、そこに隙が生まれるのである。


そこで、私が火竜に対して《隕石召喚メテオ・ストライク》を放つ。


これで、空中戦から地上戦に持ち込むことになる。


そこを第2部隊が一気に突撃をかけるという流れである」



ハルファスの説明に、トロイが恐る恐る質問する。


「そもそもなんだが…ですが…火竜が狙った通りに来ますでしょうか?」


これにハルファスは答える。


「間違いなく来る。竜の中でも火竜は一番凶暴とされている。


その火竜の縄張りを侵すのだ。怒り狂ってやってくるだろう。


それに奴は、人間の味を知ってしまった。


過去の文献でも、人間を喰った竜はその後、人間を好んで喰うようになるとある。


さらに、今回の兵站に使った肉類の血抜きした血を全て持ち込んであるのだ。


これを草原にばら撒く。大量の血の匂いと3万余の人の匂いに釣られて間違いなくやってくるであろう」



「ということは、第1軍団は巨大な囮ということでしょうか?」


アマンが気色ばんで尋ねる。


これに対して、ハルファスは冷静に答える。


「一概に違うとは言わない。


しかし、先ほど説明した第2部隊の作戦が失敗した際、後退するための防衛線でもあるのだ。


つまり我々の失敗は、第1部隊を後退のための盾にせざるを得なくなるということでもある」



トロイもアマンも押し黙るが、続いてサロスが声を上げる。


「地上戦に持ち込めても、勝ち目はあるのだろうか?」


この問いに対しても、落ち着いてハルファスが答える。


「勝ち目はある。私自身は《隕石召喚メテオ・ストライク》の影響で後退していると思う。


しかし、ここには私と同等の魔法使いが2人いる」



そういって、ハルファスはアマンとシトリーを見つめる。


「前衛が攻撃可能な足止めを任せても構わないな?」


アマンとシトリーが逡巡の末、大きく頷く。


アマンとシトリーの様子を確認し、満足げに頷いたハルファスが続ける。


「第1部隊には攻撃という作戦行動は存在しない。


なぜなら、彼らの武器では鱗1枚、傷つけられないだろう。


それ故、魔法使いを総動員しての防衛に専念してもらうのだ」



「諸君、そう暗い顔をするな!


『古竜殺し』の称号を得られるのは、お前らだけなんだ!


こんなチャンス、生まれ変わってももうないぞ。


俺も諸君らに負けずに、その称号を勝ち取るつもりだ」


豪胆な笑顔で、そうサブノックが告げると全員の顔に士気が宿った。



英雄王と肩を並べて戦える。


そして、その先には『古竜殺し』なんていうとんでもない栄誉がある。


これで奮い立たない戦士はいない。



士気がぐんぐん部屋の中で上がる。


一方で、アマンとシトリーは役割の重さを認識し、強張った顔をしていた。


そんな2人にハルファスが声をかける。


「大丈夫である。2人の力は理解しているつもりなのだ。


できない者に任務を与える軍師はいないのである」



アマンとシトリーは、互いに見つめあい大きく頷いた。


その様子を見て、ハルファスも嬉しそうに頷く。



こうして、各部隊の作戦会議は終了した。



翌朝、作戦地点である草原に全軍が進軍を開始するのであった。

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