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第52話 ザイード砦

ザイード砦は、かつての大戦の時のような喧騒に包まれていた。


王国軍は、各領地から5千そしてザイードに常駐している兵を合わせて、総勢3万の兵となっている。


また、イボスから約200名、サイラスから約300名が強制依頼に応じて参集している。



3万を超える兵が戦前の緊張と高揚感で、砦内の喧騒は凄まじかった。


所属の違う若い兵士たち同士の小競り合いまで起こっていた。



冒険者も含め、召集された者が集まったところで、皆が砦の中庭に集められた。


これからの作戦の指示があるのだろうと、緊迫した静寂が中庭に訪れていた。


しばらくすると、バルコニーに1人の男が立つ。


全身を鎧に包み、アーティファクトと思われる剣を携えている。


強力なアーティファクトなのか、皆の視線が一瞬剣に奪われる。


戦闘に慣れている者ほど、それは顕著であった。


危険な物を察知する能力に長けているのかもしれない。



帯剣に目を奪われていたが、それも一瞬のこと。


中庭にいた全員がバルコニーに立つ男に気づき、ざわめき始める。


次第に、その声は大きくなり、歓声となる。


「陛下!」


「国王陛下!」


「英雄王!」


「英雄王、万歳!!」


なぜか、万歳まで起こる状況となってしまった。



そんな混沌とした状況に、国王サブノックの声が隅々にまで響き渡る。


「皆の者、此度の召集に応じてくれて、誠に感謝する。


ここにいるのは、我が国の中でも最も武勇に優れた勇者たちだ。


皆の面構えを見て、より一層安堵したぞ」


そう言って、笑うサブノック。


聴衆のボルテージも上がる。



「さて、今回の任務だが…アイロニア領に火竜が現れ、街や村を焼き払い、罪もない領民を苦しめている。


我々、武に生きる者たちは、このような時のために生かされていると思え。


戦う力なき民のために、我々が戦うのだ!」


聴衆から、賛同の歓声があがる。



「だか、今回の討伐対象である火竜は古竜エルダードラゴンである可能性が高い。


いや、古竜エルダードラゴンだと思って、望んでもらいたい」


噂にはなっていたが、国王の口から古竜エルダードラゴンの言葉が出ると、一同が沈黙する。



「我が国の勇者たちよ。恐れるなかれ!


古竜エルダードラゴンといえども、我らの力で倒せぬことはない!


勝つための策を我が右腕たる大陸の賢者から献策されておる。


恐れは弱さを生む。


もう1度、言おう。我々は勝てる!」


水を打ったように静まり返っていた者たちが、サブノックの激で再び雄たけびを上げる。



しばらくその様子を満足そうに見ていたサブノックが、再度口を開く。


「流石は、我が国が誇る勇者たちだ!


俺も戦場に立つ!俺にもっていかれないように、しっかりと武功を立ててくれよ!」


そう言って、サブノックはニヤリと笑う。


「詳しい作戦は、このあと大陸の賢者より伝える。


では、皆の者、我が国を犯す愚かな魔物に鉄槌をくだそうぞ!」


サブノックの演説に、聴衆のボルテージは最高潮まで高まっている。


大歓声と国王を称える声が鳴り止まない。



「立派な王になったものだな」


バルコニーにいたハルファスが、戻ってきたサブノックにそう告げる。


「柄ではないがな」


そういって、サブノックが苦笑いする。


「まあ、私も柄にもないことをするのだ。お互い我慢すべきところだろう」


そう言って、ハルファスがバルコニーへと向かう。



ローブ姿のハルファスが出てきたことにより、聴衆からまた歓声が上がる。


「大賢者様!」


「大陸の賢者!」


ハルファスは、手で静まるように促す。


聴衆が静かになったところで、今回の作戦を伝え始める。



「今回の作戦においては、部隊を大きく3つに分ける。


それぞれ仕事は違うが、どれも重要な戦いだ。心してくれたまえ」



一旦、間を置くハルファス。


「今回の戦場は、アイロニア領内で火竜が縄張りとし始めている草原とする。


そこへ第1部隊として、王国軍の皆に陣をひいてもらう。


加えて、冒険者の中から魔力盾マジックシールドを使える者も第1部隊とし帯同してもらう。


第1部隊は、戦の前面に立つことになる。


そこで、宮廷魔道師と冒険者の魔法使いを第1部隊全体に均等に割り振る。


火竜のブレスによる殲滅を防ぐことが第一の狙いなのである」



言葉を続けるハルファス。


「次に第2部隊だが、これは少数精鋭とする。


第1部隊が足止めをしている間に接近し、直接的な攻撃を仕掛ける役割を担う。


この部隊には、王国騎士団からアーティファクトを装備している者が配属となる。


冒険者の諸君の中にも、アーティファクトを装備している前衛職の者は、第2部隊として帯同してもらうのだ。


一番、危険な任務となる。一旦、編成後に再度面接を行い、向かない者がいれば第1部隊とするつもりだ」



言葉を一旦止め、冒険者たちのいる辺りを見つめるハルファス。


「第3部隊は、残った冒険者諸君に担ってもらう。


君たちの役割は、これまでに蹂躙された近隣の町や村の偵察とできれば生存者の保護である。


戦いに来たのにという君たちの気持ちも十分理解している。


しかし、第3部隊がなければ、救える命も救えないのである。


第1部隊・第2部隊同様、重要な任務である。誇りをもって着任して欲しい」



ここまで発言すると、ハルファスは中庭を見渡す。


特に異議のある者はいないようで、士気の高さも伺えた。


満足そうに頷くと、最後の言葉を述べる。


「詳しい作戦は、各部隊長から逐次情報を伝達させる。


以上である。皆、よろしく頼むのである!」



最後に将官がバルコニーに立ち、それぞれの部隊の集合場所と解散を告げる。



国からの指示伝達が終わると、サロスがアマンに尋ねる。


「お前、これを見越してアーティファクト探しをしてたのか?」


「概ね、そうなります」


「はぁ、親父さんに似てきたねぇ…将来は大軍師様か?」


茶化すようにサロスが言う。


「まあ、あと我々のパーティがバラケないということも考えました」


「ん?確かに、ワシらはお前さんのおかげでアーティファクトの武器を持っておるが…


肝心のお前さんはアーティファクトがないのではないか?」


ムラマサがアマンに問う。


「ご心配なく。この首飾りも立派なアーティファクトですので」


アマンの言葉にシトリーが驚く。


「そうだったの?武器や防具には見えないけど…何かの特殊効果があるのかしら?」


「まあ、そんなところです」


「何はともあれ、全員一緒に動けるというのはいいな」


サロスが笑顔で言うと、エイミーも笑顔で頷く。


「さあ、第2部隊の集合場所に向かいましょうか」


アマンの言葉に、サロスも応じる。


「早く行かないと、親父にどやされそうだしな」


一同が、サロスの冗談に笑いながら、集合場所へと歩を進めるのであった。

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