第47話 遺跡発見
「なんでエイミーだけ、その魔法にかからんのじゃろ?」
ムラマサが率直に口にした疑問。
アマンとサロスが見詰め合う。
この2人には、全てを明かすべきであると目が語っていた。
意を決したアマンは、緊張の面持ちで頷いた。
アマンとサロスの緊張した表情を見て、シトリーとムラマサも真剣な表情となる。
「このような形でお伝えすることになってしまったのは、非常に残念なのですが…」
アマンは、おそるおそる口を開いた。
目線で近くまで戻ってきたエイミーを追う。
エイミーもアマンの意図を悟り、大きく頷く。
「率直に申し上げます。実は、エイミーは生物ではありません」
アマンは、自分の言葉への2人の反応をゆっくりと確かめる。
シトリーもムラマサも、驚愕の表情をしている。
しかし、そこに拒絶の色はないとアマンは判断した。
「エイミーは、古代魔法王国の魔道師が産んだ魔力人形です。
現在は、私との契約により活動をしております。
ただし、我々の知っている魔力人形やゴーレムと違い自我を持っています。
これは製作者の魔道師が、亡くなった娘さんを模したためだと考えられます」
シトリーとムラマサは、すでに驚愕の表情をしまい、真剣にアマンの言葉に耳を傾けている。
その態度だけでも、アマンには2人に感謝の念が生まれていた。
「最初に彼女と出会ったのは、イボスの迷宮です。
彼女が1人でコカトリスと戦っているところを私たちが助太刀したのがきっかけです。
なぜ、彼女が1人でコカトリスと戦っていたかなんですが…」
この先の言葉への反応が心配になるアマン。
口の異常な渇きを感じながらも、それでも言葉を続ける。
「魔物の転移を行っているディアナという魔道師がいます。
この人がその時のエイミーの契約者でした。
魔物の転移を行う際の護衛としてエイミーを連れていたのです。
実際に魔物の転移が行われ、第1階層にいた冒険者のパーティがコカトリスに襲われました。
ディアナは転移魔法でそのまま逃げたのですが、エイミーはそれに逆らいました。
冒険者のパーティを助けに行ったのです。
残念ながら、そのパーティは全滅してしまいましたが…」
魔物転移の犯人の一味だったという部分に、シトリーとムラマサの眉間に皺が寄る。
その反応を確認しながらも、誠実に話すことを覚悟するアマン。
「エイミーはしゃべることを禁じられていたため、最初は事情がわかりませんでした。
身寄りがないようでしたので、私たちと行動を共にするようになりました。
ある日、再び迷宮でディアナと出会いました。
サラマンダーを第1階層に転移させたのです。
その場に偶然いたのが私たちでした。
そこで、はぐれたエイミーをみつけたディアナは、自分の下に戻るように命令しました。
しかし、エイミーは自らの足に剣を突き立ててまで命令に逆らいました。
命令に背くペナルティは見ていても分かるほど、辛そうなものでした。
それでもエイミーは逆らったのです」
わずかな間とはいえ、パーティとして一緒に過ごしたエイミーのことだ。
シトリーとムラマサの表情は、さもありなんという色を浮かべていた。
「エイミーと口論しているうちに、サロスがサラマンダーを倒してたことでディアナは逃走しました。
そこで、報復としてエイミーとの契約を解除しました。
魔力の供給源を失いエイミーは動かなくなりました。
そこで、私が新たな契約者として魔力の供給源となり、そのままパーティとして行動していて…
そして、お2人に出会いました」
アマンは、一気に説明した。
その顔には不安の色が浮かんでいる。
「私とサロスは、エイミーを普通に仲間だと思っています。
できれば、お2人にもそう思っていただけないでしょうか…」
アマンの言葉に逡巡することなく、2人が返事する。
「ようは、無茶する主人を見限って、決別したってことでしょ?」
シトリーがこともなく、そう言う。
「ようやったな、エイミー。それでこそ勇者の行いじゃ」
ムラマサは、なぜか嬉しそうに言う。
2人の反応に驚きながら言葉をつむぐアマン。
「あの…魔力人形であるということは理解いただけましたか?」
「?…エイミーは、エイミーでしょ?」
シトリーは、それがどうしたという感じだ。
「もう互いに背を預けあって戦える仲間じゃからな。
それに、ワシら妖精族からすれば、人間でも人形でもさほど変わらんよ」
そう言って、ムラマサは笑う。
2人の優しい表情と言葉に、アマンの胸がいっぱいになった。
それはアマンの傍まできたエイミーも同様なのであろう。
その眦に涙が浮かんでいた。
「話っていうのは、それだけかの?」
「ええ、それだけです」
ムラマサの明るい問いに、アマンが声を詰まらせながら答える。
「じゃあ、何も問題ないわね」
シトリーもさらっと言う。
「2人とも…最高だぜ!」
サロスが嬉しそうに叫ぶ。
「大げさねえ」
シトリーが微笑む。
「さあ、遺跡探しを再開するぞい」
ムラマサが優しく声をかける。
エイミーが、嬉しそうに2人に頭を下げた。
「ほれほれ、気にしなさんな。話せん事情はワシにもシトリーにもある。
そこをそっとしておいてパーティを組んでくれたのは、お主たちも同じじゃろうに」
「よし!遺跡を見つけるぞ!」
サロスが皆に声をかけると、全員が嬉しそうに頷く。
アマンも勤めて明るい声を出す。
「では、エイミーが進めて、我々が進めなくなる地点を探りましょう」
アマンたちは、全員で横一列に手をつなぎながら前に進んでいく。
ある地点まで来ると、エイミーと違う方向へそれぞれ進もうとすることに気づいた。
その現象が起きた地点をアマンが慎重に調べる。
「罠などはないようですが、やはり異質ですが結界があるようです」
なにもない空間に手をかざしながらアマンが皆に告げる。
「これから、結界を解けるか試してみます…《ディスペル(解呪)》」
アマンの手の先が七色に光る。
苦しそうな顔をしながら、さらに魔力を込めていくアマン。
七色の光が更に輝きを増していく。
一瞬、真っ白な光が輝き、皆の視界を奪う。
光が収まると、ぐったりとしたアマンが告げる。
「なんとか解呪できたようです」
その視線の先には瀟洒な屋敷が1軒、草原の中に建っていた。




