第45話 前略
宿屋に戻り、食堂で夕食をとっているアマンたち。
ムラマサは、いまだに「熱かったぞい」とつぶやいている。
第5階層での苦戦に、全員が疲労していた。
「第5階層は、さすがに甘くないな」
サロスが、そうつぶやく。
「まあ、こんな短期間で第5階層に挑戦できるとは思ってなかったわ」
珍しくシトリーがフォローするような言葉をつぶやく。
パーティを組んでから初めての苦戦。
当然、食事中の会話も弾まなかった。
だが、心が折れた様子を見せる者は、誰1人いない。
それぞれが今後の課題を心の中で反芻しているようだ。
食事が終わると、それぞれの部屋へと向かった。
アマンとサロスの2人部屋、エイミーとシトリーも2人部屋。
ムラマサだけは、鍛冶屋に借りている部屋へと帰る。
いつも通りだ。
アマンが自室に入ると、そこには何故か執事がいた。
「お帰りなさいませ、坊ちゃま」
「ルクバート!」
部屋にいたのは、アマンの父が使い魔としているルクバートであった。
「お元気そうで何よりです、坊ちゃま」
「突然で驚きましたよ。何かありましたか?」
「ご主人様よりお手紙をお預かりしてまいりました」
「手紙ですか…珍しいですね」
ルクバートから手紙を受け取ると、自分のベッドへと座るアマン。
サロスは自分のベッドで寝る準備を始めている。
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『前略
此度の盗賊討伐の任、ご苦労であった。
報告の手紙も早速送ってくれて、助かった。
お前たちが皆、無事帰還したと書いてあったので安堵している。
さて、お前の手紙にもあったディアナという魔道師の件だ。
あれから、イボス迷宮およびサイラス迷宮について、逐次報告を受けている。
しかし、現在は魔物の転移による事件は起きていないようである。
お前の手紙にもあったように、エイミーの存在が状況を変えているはずである。
砦の存在をこちらに知られている以上、居場所を変えた可能性もあるだろう。
しかし、そうであれば砦自体、もぬけの空であってもおかしくはない。
したがって、この線はないだろう。
特筆すべきは、魔物を転移させていないことだ。
エイミーの存在が明らかになって、相手方は魔物の転移を諦めたのだと思うのだ。
実際、1体づつ転移させるのは効率も悪く、冒険者ギルドにも警戒されている。
また、迷宮外への転移には成功していないようでもある。
だが、何がしかの方法で王国に危害を加えること自体は諦めておるまい。
砦については、落とされることはないと考えていたのではないだろうか。
現在の情報だけで、王国が軍を動かすことは難しい。
仮に軍が動いても、少々のことなら耐えうる戦力が常駐していたと推測している。
冒険者ギルドが少数精鋭で攻め落としたのは計算外であったであろう。
ディアナという魔道師は、相手方の幹部であると考えられる。
かの者は、魔物の転移に変わる次の手を準備しているのではないだろうか。
そのため、砦を離れ別行動に移っているのではなかろうか。
そう思えてならない。
大量の魔物を国中に解き放つ。
それと同等、もしくはそれ以上の危険な試みを行っていると考えられる。
くれぐれも用心して過ごしてくれたまえ。
草々
ハルファス・ソーサリス
我が愛しき息子アマンへ』
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アマンは、手紙を読み終えると大きくため息をついた。
『大量の魔物を国中に解き放つと同等、もしくはそれ以上の危険』
自分たちの手に負えない相手なのかもしれない…
そう思い、ため息をついた。
「親父さんは、なんだって?」
手紙を読み終えたアマンにサロスが声をかける。
「ディアナという魔道師についてです。
父上は、魔物の転移を諦めて次の手を打っているのではないかと考えているようです」
「次の一手ね」
「その一手は、『大量の魔物を国中に解き放つと同等、もしくはそれ以上の危険』だろうと」
アマンの言葉に、サロスも押し黙る。
「父上の手紙には書いていませんが、ある程度の予想はつけているのではないでしょうか?」
アマンがルクバートへ問う。
「そのようでございますな」
ルクバートが端的に答える。
「私たちももっと力を付けるべきでしょうね…」
アマンのつぶやきにルクバートが答える。
「ご主人様も同じ事をおっしゃっていました。それでこれをお持ちしろと」
何冊かの古文書が、アマンに手渡される。
「これは?」
「古代魔法文明時代の遺跡に関するものだそうです」
「アーティファクトもしくは知られざる魔法…」
「もしかしたら見つかるやもしれませんな」
古文書を見つめるアマン。
「私が仰せつかったのは、以上でございます。
坊ちゃま、くれぐれも無理はなされませぬよう」
「ありがとう、ルクバート。父上にもよろしく伝えてください」
「かしこまりました」
そう言うと、ルクバートは鷹の姿に変わり、開け放たれた窓から飛び立っていった。




